奥行きの感覚アーカイブ

プロジェクトリーダー:中ハシ克シゲ(美術学部教授)
藤原隆男、重松あゆみ(美術学部教授)
深谷訓子、小島徳朗、礪波恵昭(美術学部准教授)
藤田一郎(大阪大学教授)、富田直秀(京都大学教授)、岩城見一(元京都国立近代美術館館長)

本研究プロジェクトが対象とするのは,絵画や彫刻をはじめとするさまざまな芸術作品に看取される「奥行の感覚」である。ある種の作品を前にしたとき,確かに感得されるように思われるこの「奥行の感覚」は,従来,ともすると,三次元の錯視を生み出す視覚的トリックや,人間の生理的諸条件など,限定的な観点からのみ論じられてきた。
しかし「奥行の感覚」の背後には,視覚にとどまらない共通感覚や,我々が作品から複雑な仕方で読み解いている多様な情報や質が存在する。こうしてみたとき,美術作品は,そうした情報や質が蓄えられたアーカイブとしての側面を持っているともいえないだろうか。アーカイブ資料から特定の情報が読み取られていくのと同様に,われわれはそうしたいわばアーカイブとしての作品から,「奥行の感覚」を看取することができているのである。ただしこの読み解き,読みほぐしの手続きは複雑で,なかば自動的,無意識的に行なわれるものであり,このプロセスについて共通の理解が得られているとは言い難い。本プロジェクトでは,そうした「奥行の感覚」を包括的に論じ,理解していくための多様な項を検討・整理し,「奥行の感覚」の客観化(可能な限りにおいての)を目指すものである。
具体的な考察の手順として,本プロジェクトでは,実作品や現象の分析からはじまるサイクルを重視している。ここでは,プロジェクト参加者が「奥行の感覚」を強く感じさせる現象や作品を吟味・検討し,その感覚の由来を考察し,仮説・推論に基づいて実技課題を考案し,実際に制作することによって検証を行なうとともに,その成果物や考察の結果を記録に残す。こうしたサイクルを連続して回していきながら,最終的に本研究が目指すのは,美術における諸ジャンルの再配置への試案の提出であり,新たな分類法の提起という点で,アーカイブ研究への新たな視座をもたらすことである。また同時に,こうした一連の過程において,作品の成立過程にかならず存在する,こうした複雑で多層的なプロセスは,どのようにすれば最も効果的にアーカイブ的な情報として蓄えうるかという点についても考察する。
テーマ演習を中心的な場として行なってきた2015年度の実践は,色面やテクスチャーなどと奥行の感覚の関連を探る試みのほか,記憶という項について,自画像や他人のイメージの記憶をもとに,奥行の感覚との関連を考察した。また大阪大学の藤田一郎教授に,認知脳科学の立場からレクチャーを行なっていただいた。これらの成果は,2014年度のものと併せて,京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)における成果報告展で発表した。2016年度は,これらの成果を発展させ,あらためてセザンヌやブールデルの作品を出発点に,平面作品と立体作品のそれぞれにおける領域固有の奥行の感覚について考察を進める。その成果は活動報告として取りまとめるほか,2,3年度分の成果が出揃った時点で,再び展覧会形式での発表を行なう予定である。(深谷訓子)
奥行きの感覚アーカイブ1 奥行きの感覚アーカイブ2
・2015年度 奥行の感覚展 展示風景

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