複製とデジタル化

映画フィルムの複製を「デュープ」と呼ぶことが多い。近年,デジタル技術が向上したため,デジタル化(デジタル・デュープ)の流れが強くなっている。確かに,フィルムは,低温低湿環境で保存しなくてはならずコストもかかり,繰り返し上映すればフィルムに傷がつくといった面がある。しかし,デジタルも規格の変動が激しいことに加え,フィルムとは色の幅,素子の構造が違うため,完全に再現をすることはできない。また,DVDなどのSD規格は著しくフィルムより解像度が低い。一方,フィルムは保存環境さえ保つことができれば,100年単位での保存が可能と言われている。そのため,オリジナル・フィルム*はマスターとして,低温低湿で長期保存した上で,その時々の最も高画質なデータフォーマットでデジタル化を行い,デジタル・デュープを行うことが適切である。また,作品によってはフィルムであることに重要な意味がある場合は,フィルムでの上映が必要不可欠となる。しかし,マスターを再生して傷つけるわけにはいかないので,フィルム・デュープを作成する。また,オリジナル・フィルムがアセテート・フィルムであった場合には,バックアップとしてポリエスター・フィルムでデュープを作成した方が良い。

ここまで複製の必要性を説明してきたが,デジタルデータのコピーとは違い,フィルムからデュープを作成する場合には,オリジナルと全く同じになるとは限らない点に注意したい。保存媒体ごとに,その特性が異なるため,色彩やコントラストが変化してしまう場合がある。そのため,オリジナルとデュープができる限り近い状態になっているか確認する必要がある。

 

*作家から送られてきたフィルムが,上映用のデュープである場合がある。その場合も,所有している最もオリジナルに近いものとして便宜上オリジナルに含めている。

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