リサーチャー招聘プロジェクト2017/招聘者のレポートvol.2

キャリアデザインセンターでは、2015年から、京都市立芸術大学作品展の会期に合わせ、「リサーチャー招聘プロジェクト」を行っています。

《招聘者のレポートvol.2》

正路佐知子/学芸員(福岡市美術館)

 

京都市美術館と京都市立芸術大学で開催される作品展では4回生や修了生だけでなく1回生から全員に出品が義務づけられている、今回そのことを知り驚いたが、展示機会が在学中に複数回ある意義も感じた。学生が自身の活動を点ではなく線として捉え、作品をどう見せるか考える機会にもなるからだ。作品展の印象としては圧倒的に京都市立芸術大学での展示に軍配が上がる。空間を広くとったインスタレーション、あるいは複数の作品を個展形式で見せる学内展示は、学生自ら展示場所を志願し、ふるいにかけられ実現したものだと伺い、納得した。とくに、パフォーマンスを介したインスタレーションや映像作品が印象に残った。キャリアデザインセンター一推しの卒業生紹介ともいえる、作家(たち)のスタジオ訪問は2日間で7か所におよび、今後の展開が気になるアーティストにも出会うことができた。

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身体はひとつしかないし、得られる情報も自由になる時間にも限度があるため、美術関係者といっても見られる展覧会は限られる。加えて地方で活動をしていて痛感するのは距離の問題。遠いから、という理由で足を運べない(来てもらえない)ことはよくあることだ。地方で活動するアーティストは外に向けたプレゼンテーションがうまくできない、経験を積む機会すらないといった問題も実は根深い。

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関西圏外の美術関係者を招聘し、学生や若手アーティストの作品と出会う機会を創出する趣旨の本プロジェクトに参加し、地方で活動するひとりとして舌を巻いた。学生や若手アーティストにとっては、自身の活動が美術関係者の目に触れる機会となり、プレゼンテーションの場を与えられることになる。制作に力を注ぐのは大前提として、自身の作品や活動をどのように外に示していくか、つまり展示とプレゼンテーションの能力を鍛え、経験値を上げる機会となる。外の美術関係者との接触は関西圏外での発表の場を得る機会にもつながる可能性を持っている。本プロジェクトは長い目で見て、大きな成果を生むものと思う。このような手厚い支援は、簡単には真似できることではないが、それでも学生支援、アーティスト支援のかたちとして見習うべき点が多数あると感じた。

 

正路佐知子/学芸員(福岡市美術館)
お茶の水女子大学大学院博士後期課程単位取得退学。
川崎市市民ミュージアム勤務を経て2007年秋より現職。
近年の主な企画展は「想像しなおしIn Search of Critical Imagination」(2014年、福岡市美術館)、
「歴史する!Doing history!」(2016年、福岡市美術館)。