リサーチャー招聘プロジェクト2018/招聘者のレポートvol.3 西田 雅希

キャリアデザインセンターでは、2015年から、京都市立芸術大学作品展の会期に合わせ、「リサーチャー招聘プロジェクト」を行っています。

《招聘者のレポートvol.3 西田 雅希》

冬の雨の日に、京都駅に降り立った。関西圏外の美術関係者を招聘し、京都市立芸大の作品展と気鋭の卒業生のスタジオを巡る、同学キャリアデザインセンター主催のツアーに参加するためである。今年で4回目を迎えるそうで、毎年地道にこのような活動が続けられていることにまず感銘を受けた。

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一日目は、京都市立芸大の「作品展」を見る。市芸大では卒業展ではなく、学部一年目から毎年参加する作品展の形をとっていると知り、へえと驚いた。 同時に有志展というのも並行してあり、こちらへの参加で卒業展示に替えられる伝統を持つ学科もあるらしい。継続的な、また複数の形態を前提に発表の機会が考えられていることは面白いと思った。二日目は、 個人から共同まで、サイズもカラーも様々な若手のスタジオを訪問した 。

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作品展とスタジオ訪問で感じた、京都の多くの作家に共通するひとつの態度として、自分の専門と、それに特有の素材と技術とを自分の表現活動の軸に据え(油画、染色塗料と繊維、漆、など)、その立ち位置から現代美術の文脈でどのような表現活動をしてゆくかを探求していることがある。突然変異的な作家はもちろんいるのだが、多くの場合において物質性と手と専門性へのこだわりは顕著で、これは興味深い傾向であると感じた。この、 素材と手に対するある種独特の感情・感覚と、現代美術の「お作法」となるコンセプトベースの思考の交点が増えてくると、そこに京都の作家ならではの何か面白いもの・表現形態が生まれるのではという気がする。そういった萌芽も今回の訪問で散見されたので、今後を楽しみに注視したい。

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夕食は森林食堂、宿泊はクマグスクと、市芸出身者たちの営む場所で卒業生の制作以外の活動にも触れることができた。まさに市芸フルコースで歓待してもらった形になる。作家活動をしながら、あるいはその経験の延長線上で食堂を、宿を営む。京都の作家たちと話すにつけ、他地域に比べてこうした「あわせ技」がしやすい環境があるように感じていたが、その現場を体感させてもらえたことは有意義であった。

作品が生まれてくるにはどのような環境と文脈がそこにあるのかを知ることは、必ずしも必要ではないが、それが理解に役立つことも往々にしてある。次世代の作家たちとの出会いに加え、その点においても今回の訪問は京都圏の美術の理解を深める一助となった。

 

《西田雅希 キュレーター/ライター》
慶應義塾大学文学部卒業、ロンドン大学UCL美術史学修士課程修了。
2007年に渡英後、公と民の様々な角度から教育、アーティストマネ
ジメントと展覧会企画に携わる。
あいちトリエンナーレ2016を経て日本に拠点を移し、現在フリーラ
ンスでキュレーションと執筆、翻訳を手がける。