レザルティスミーティング 作品展訪問 アンケート調査結果

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2019年2月8日(金)に「レザルティスミーティング京都」参加者による、京都市立芸術大学作品展の訪問が行なわれました。

「レザルティスミーティング」とは、オランダ・アムステルダムに本部を置く、世界最大のアーティスト・イン・レジデンスのネットワーク組織「Res Artis」が、毎年世界各国の都市で開催している国際会議です。世界各国のレジデンス関係者が集い、様々なセッションを実施します。今年は京都市が開催都市となり、京都芸術センターを主な会場とし、2月6日(水)から8日(金)の日程で開催されました。
そしてこのミーティング最終日の2月8日(金)にプログラムの一環として、参加者による作品展訪問が行なわれました。午前と午後で2チームに分かれ、約60名ずつがそれぞれ約1時間半の間に学内の展示を見て回りました。

芸術活動のキャリア構築のために、海外でのレジデンス経験を積み重ねるアーティストは多く、本学学生の中にも海外レジデンスへの興味を抱く人は少なくありません。したがって今回の作品展訪問は、学生たちにとって将来滞在することになるかもしれないレジデンス施設の担当者に直接話を聞くことのできる機会であったといえます。
では今回訪れたレジデンス関係者に、本学の学生たちの作品は、どのように映ったのでしょうか。また、本学の学生の作品は、多くの海外レジデンスで受け入れられるものといえるのでしょうか。

この点を調査するため、キャリアデザインセンターではこの日、ミーティング参加者へのアンケート調査を行ないました。
実施概要と調査結果を、以下にまとめます。

実施概要

〈調査対象〉
レザルティスミーティング2019京都 参加者

〈調査日〉
2019年2月8日(金)

〈調査者〉
京都市立芸術大学キャリアデザインセンター(担当:松井/美術アドバイザー)

訪問者数:ミーティング参加者 98名 スタッフ関係者22名
回収数: 44
回収率: 44.9%(ミーティング参加者のみ)

※アンケート分析方法
日英二言語を併記したアンケート用紙を配付し、すべて記述式で回答いただいた。
英語で回答されたものは、国際交流室とキャリアデザインセンターが共同で日本語に翻訳し、日本語で分析を行なった。

回答者の国籍/職業

表1
 国別では、日本の回答者が最多となった。地域別では、ヨーロッパ・ロシアが19、日本を含めたアジアが18と、同程度の最多であった。また回答者の国数は22カ国、アジアヨーロッパ以外にもアメリカ、オーストラリア、中東が参加していたことがわかった。なお今回のアンケート回答数はツアー参加者数に比べてかなり少なかった。そのため、実際はここで調査した以上に多くの国の参加者が来場していた可能性がある。このように、本ツアー受け入れにより、世界中の様々な国からの来場者に、作品展を鑑賞いただけたといえる。
 回答者の職業については、レジデンス施設内の職と、レジデンス施設の業務を請け負うフリーランスなどの立場をすべて「レジデンス施設職員・関係者」にまとめた。またレジデンス施設を擁する美術館、大学の職員の場合も、これに分類した。レジデンス関係以外では、キュレーターやリサーチャーなど、レジデンス施設に属さない複数の専門職の方も参加していたようである。全体としてレジデンスを中心に、美術や芸術に関係する職業の方がほとんどであった。多様な美術関係者が参加していたことが伺える。

回答者の専門領域

表4
 レジデンス施設の専門領域の分類は、制作系、非制作系、そのどちらも含める領域の三つとし、色分けを行なった。その回答の中でもっとも多かったのは、「全て・多分野」であった。またその他でも、専門領域を複数回答いただいた場合が多かった。これらのことから、多くのレジデンスでは、一つの領域に限らず、複数の領域にわたる専門の滞在者を受け入れていることがわかる。またそれらのすべてが制作系の分野を扱っており、リサーチのみの施設はなかった。そのため、今回回答したレジデンス施設関係者の全員が、アーティストの作品制作に詳しい美術関係の専門家であったといえる。
 レジデンス以外の専門領域では、回答者自身がアーティストや執筆といった制作系の専門家である例も見られ、本学の学生たちと近い立場の方も参加していたことがわかる。それ以外には、教育系の学生、美術の研究者なども参加していたようである。彼らについては、レザルティスミーティングへの参加自体が、レジデンスに関連した研究調査等を目的としていたと考えられる。

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Q1. 御所属のレジデンス(またはあなたのご存知のレジデンスプログラム)と、関連性の高い作品はございましたか?どのような作品が、どういったプログラムと関連するのか、お聞かせください。

表2
 回答いただいたレジデンス施設のほとんどが、学生の作品に関連するという結果となった。ただしレジデンス施設関係者32名に対して「あり/なし」の回答合計が20となった理由は、質問内容と異なる、学生作品や作品展訪問についての感想を述べたものがあったためである。唯一パフォーマンスアートを専門とする施設は、関連性がないと回答した。今回彫刻棟や大学会館では、パフォーマンスアートに関連する作品も展示されたが、その回答者が観覧した棟はアトリエ棟であり、演劇やダンスに関する作品がほとんど見られなかったためと思われる。
 また、こうした関連性について、積極的な意見も併せて回答いただくものが複数あった。それらは「主な回答」としてまとめた。特に多かったのが、「レジデンスに招きたい」「適した環境がある」といった内容であった。これらの複数の施設において、将来的に本学学生たちがレジデンスに参加できる状況であることがわかる。他には、特に歴史的な事物に言及した作品を挙げて、海外レジデンスにおける展開可能性について述べた回答が2件あった。いずれもレジデンス施設関係者の意見である。レジデンスにおいて異なる社会で滞在制作を行なう上では、そこの歴史や社会情勢について調査し、展開する可能性のある作品は、特に国際的なレジデンスに適していると考えられる。回答数が少なかったため本アンケート結果だけでは明言できないものの、海外レジデンスの意義について、レジデンス関係者の考えを窺い知ることのできる回答であった。

Q2. 学生たちと話をする機会はありましたか。(はい or いいえ)
その話の中で、具体的なプロジェクトにつながるきっかけや、その他印象的なことなどがあれば、差し支えのない範囲でお書きください。

表3
 44件中30件が、学生たちと話をしたと回答した。アンケート回収数が少ないため全体の割合は不明であるが、少なくとも回答者の大半が学生と交流できたことがわかる。事前準備の段階で、自らツアー参加者との交流を希望した学生も数名おり、学生たちも積極的に準備をしてきたが、この結果を見る限り、こうした学生たちの準備に対して一定の成果があったことがわかる。
 またこの質問に対して述べられた具体例で、複数回答のあったものは、「主な回答」にまとめた。特に多かったのは、個人の作品に対する感想であった。そこでは主に作品や制作に対する姿勢について感じたことや、評価できる点などについて述べられていた。他にも、連絡先を交換したというケースも見られ、将来レジデンスに繋がるきっかけとなるようなケースも見られた。今回の訪問ツアー受け入れにおいては、学外の美術関係者との対話の機会を創出し、今後の具体的なプロジェクトへ繋がるきっかけを得ることを大きな目標に掲げていたが、これらについて一定の達成が得られたといえそうである。
 またネガティブなものでは、学生たちとあまり話ができなかったという回答が2件あった。具体的には、学生たちが「静かだった」、そして「もっと時間が欲しかった」という内容であった。前者については、英語力が充分でなかったためではないかと思われる。後者については同様の回答がQ3にも複数あった。

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Q3. その他印象に残ったことなど、ご自由にご記入ください。

表5
 自由記述のため、同内容の回答が複数あったものについて、上表の通りまとめた。最も多かったのは、学生作品と制作に対する高評価であった。様々な地域の複数名の方から特筆いただいており、概ね評価が高かったといえそうである。
 またそれに次いで「もっと時間が欲しかった」という意見も多く見られた。この背景として、鑑賞時間が1時間30分程度しかとれなかったことが挙げられる。キャンパスを会場とする作品展は、京都市美術館の休館以前に比べて格段にボリュームが増えており、通常の鑑賞でさえ見て回るのにかなりの時間を要する。今回は訪問者の見て回る棟を任意で選んでもらい、限定した範囲で実施したが、それでさえ時間が不足していたようである。長く滞在いただくほど良いとは限らないが、学生作品を深く知りたいと思っていただいている方には、少しでも長く滞在いただく必要があるだろう。今後こうした外部の訪問を受け入れる際には、充分な時間をとって実施するよう心がけたい。
 またそれ以外に、学生の個人名を挙げて評価したケースが3件あった。そのうち1件と、学生の個人名のない回答1件で、英語の学習を薦める意見があった。今回の訪問では、学生が英語を話せるか話せないか、そして英語でのプレゼンテーションを用意していたかいなかったかでで、訪問者とのコミュニケーションに大きな差が出たようである。学生の多くは英訳の準備をしていなかったため、アンケート上で、学生作品の理解が十分に得られなかったという意見が散見される結果となった。海外での芸術活動を目指す学生にとっての、英語力の必要性について、改めて認識させられる機会であった。

〈その他の回答〉

Q1

・(版画・日本画専攻の学生7名に対して)私たちは彼らと、アーティストインレジデンスのフォーマットで一緒に仕事をするか、彼らの作品の展覧会をしたいです。
(ロシア/美術館ディレクター)

・修復に関して日本美術品の保存修復を学べるようなレジデンスを企画したいと思っています。
(日本/レジデンス・ギャラリー)

・陶磁器の作品は私のレジデンス施設のプログラムと関連がありました。なぜなら私たちのレジデンスには、ローカルなコミュニティとともに活動するアーティストたちが沢山参加しているからです。
(イタリア/レジデンスディレクター)

Q2

・非常に関連性の高い作品を作る学生を紹介してもらうことができました。
(イタリア/レジデンスディレクター)

・陶芸の学生さんの作品を、イタリアのAIRの方が大変気に入られました。(メッセージが強く訴えられ、技術も確か)
(日本/研究者)

・テキスタイル、織りの作品は印象深かったです。実験的な性質を持ったほとんどの作品は私たちのレジデンスとも関連性があります。
(アメリカ合衆国/アーティスト・アートアドミニストレーター)

・彫刻とパフォーマンスの境界にある作品が気に入りました。
(ポーランド/レジデンスマネージャー)

・日本の若者文化に少しだけ見通しを得ました。役立ちそうです。
(オーストラリア/ライター・小説家)

・特定の誰かということではないですが、彼らは自身のキャリアに対して独自のプランを持っているように見えました。
(韓国/レジデンス マネージャー)

・学生たちが卒業後に、フィンランドで制作してみたいテーマを見つけたら、私たちのレジデンスにぜひ参加して欲しいです。
(フィンランド/プロジェクトマネージャー)

Q3

・見学時間が短く、流し見しかできなかったので、機会があれば再訪したいです。
(日本/学芸員)

・いくつか面白い作品を見ました。しかし名前が漢字で書いてあったので読めませんでした。
(韓国/レジデンスマネージャー)

・陶磁器とテキスタイルの専攻が、本当に印象に残っています。特にレイヤーやもろさ、透過性への意欲が良かったです。クラフトと現代的な表現が交差していて、興味深かったです。
(スウェーデン/オペレーショナルマネージャー)

・(具体的な学生2名)の作品は、非常に良くできていました。ぜひ彼らに英語を学ぶことを薦めてください。そして学生に海外へ出ていくようはげましてください。
(イタリア/レジデンスディレクター)

・テキスタイル、粘土、ラッカーと彫刻の一部を見ました。いくつかの作品はとても面白かったです。特に自然×物質(生の素材)の使い方に興味をひかれました。      (フランス/レジデンスディレクター)

・作品が多くて、かなり駆け足でした。科によって大分作品の性格が異なると思いました。陶芸の作品が力強いと感じました。海外の美大との交流が進むと互いに刺激になるとも感じました。
(日本/研究者)

・他の領域と結びついた彫刻のプログラムが気に入りました。作品により多様な側面を与えていました。
(フィリピン/インディペンデントキュレーター)

・ウェブサイトにレビューを書きます。
(オーストラリア/コンサルタント)

・陶磁器専攻は私の関心のある領域なので、たくさんの時間をすごしました。私は最近信楽の陶芸の森でレジデンスを行なった陶芸作家です。なので、学生達の作品やスタジオを見られたことはとてもすばらしい体験でした。作品の展示に空間全体を使っているのがすごくよかったです。
(オーストラリア/セラミックアーティスト)