2015年度 ENSAD[森 美哉子]

氏名 森 美哉子
学年 修士課程 2回生
専攻等 構想設計
留学先 国立高等装飾美術学校(École nationale supérieur des Arts Décoratifs)/フランス
留学先専攻 Arts Espaces(4年次クラス)
留学期間 2015年8月〜2016年1月
留学行動記録
8月5日 日本出国 〜パリ到着,アパートに入居
8月26〜28日 ピレネー地方に旅行
8月30日~9月19日 語学学校
9月20日~9月23日 ロンドンに旅行
9月22~25日 登録準備等のため登校
9月28日

新学期開始,留学生向け学内案内ツアー等参加

10月8日 専攻の第一課題提出/講評
11月15日 旅行(フランス・ストラスブール)
11月26日 専攻授業でアングレーム国際漫画祭の公募への作品提出/講評
9月29日 Studio及び美術史の授業内容についてオリエンテーション
9月30日

授業開始,専攻オリエンテーション

フランス語のクラスのレベル分けテスト

10月8日 新入生・留学生歓迎会
12月19日~1月3日 クリスマス休暇
12月21日~26日 ロンドン旅行
1月4日~1月8日 最終週のため各授業で作品を提出
1月10日 フランス出国

一週間の授業スケジュール
  • 月:人体デッサン,フランス語
  • Arts Espacesの授業
  • Arts Espacesの授業フランス語
  • イラスト
  • 写真
渡航からオリエンテーションまで

学期のはじめに授業内容について説明があり,これを聞いてどれを履修するか決めます。同じ内容のプリントが学校内に掲示されているのであとでゆっくり読んで決めることができます。

また,初めに2週間,試しに授業を受けてみることができる期間があります。京芸のような履修登録はなく,取りたい授業に出席して名簿に名前を書くことで履修をすることができます。

授業や制作について

ENSADには専攻(secteur)の実技,studioと呼ばれる,専攻に関係なく興味のある技術を学べる実技,美術史の三種類の授業があります。一週間のうち,専攻の授業が2回あります。それぞれ担当の教授も課題の内容も違い,一つの授業ではテーマを与えられてそれに沿って制作し,もう一つの授業では自由に制作をしました。学校の敷地がそれほど広くないこともあり,「自分がずっと使っていいスペース」というものはありません。授業の時間内は与えられた教室を使うことができるのですが,それが終わったら家に持って帰って続きをやることになります。

自分の専門ではない技術を使いたい場合は,他専攻の先生に教えてもらうこともできますし,他専攻の教室や設備もある程度は使わせてもらえるようです。ただ,制作スペースが不足しがちなので,その専攻に所属している学生で場所や機械が埋まってしまっている場合は使用を断られることもありました。

Studioは2つまで取ることができます。今年はPeinture:絵画,Dessin:デッサンやクロッキーやイラスト,Sculpture:彫刻,Photo:写真,Video:映像,Serigraphie:シルクスクリーン,Gravure:版画,Art mural:壁画,Images&son:画像や映像と音の関係について…などがありました。私は写真とイラスト,人物デッサンのスタジオを履修しました。

専攻で2つ,Studioでも2つの課題が出ているので合計4つの違った分野の課題を同時に進行することになり,なかなか忙しかったです。美術史は,フランス語での講義が留学生にとっては難しいため履修する必要はなく,私も受講しませんでした。また,ENSADで出された課題ではなく,私自身のプロジェクトのためにフォトスタジオを使って写真撮影をしました。スタジオは,写真の先生がいるカウンターで用紙に名前を書いて予約することができます。照明などの機材も自由に使えます。

この撮影のために,ENSADの学生ではない方に来て手伝っていただいたのですが,テロが起きてから警備が強化されているため,事前に学校の受付で学外の人を校舎内に入れるための簡単な書類を書き,先生のサインをもらって提出しなければなりませんでした。学期は2月中旬までなのですが,京芸の決まりで1月中旬には必ず帰国しなければならないので,途中までしか参加できなかったことと,1月下旬にあるPorte Ouverteと呼ばれるオープンキャンパス兼学生全員が参加する作品展を見ることができなかったのが心残りでした。ですが,一部の授業では自分の作品を残していってPorte Ouverteで展示してもらうことができました。

学校の設備はとても充実しています。私も自分が普段使っている部屋以外は詳しくないのですが,絵画や彫刻の制作室のほかに,学生がパフォーマンスなどを行うときに使える舞台,暗室,写真用のスタジオ,映像用のスタジオ,アニメーション用のスタジオ,映像の編集室,版画,木工,樹脂やシリコン,織などのアトリエがあります。

それぞれのアトリエに専門技術を持った先生が常駐しているので,必要なときにはアドバイスをもらえます。特別な材料が必要な場合は自分で買わなければいけないこともあるのですが,紙,写真のフィルム,樹脂,シリコン,木材,布や糸など,ベーシックな消耗品は学校が無料で支給してくれることが多いです。写真やビデオの機材も,先生のサインをもらえば借りることができます。

そのほかに,bibliotheque(図書館)とmatheliothequeがあります。matheliothequeは世界中から集められたさまざまな素材のサンプルが保存され

ている資料室です。布,特殊な布,皮,木,石,金属,樹脂などを見ることができ,大変興味深かったです。

現地での生活・語学について

今年の冬は異例の暖冬らしく,最低気温が5℃前後,最高気温が12,3℃の日が多く,冬物のコートを着ていれば十分快適に過ごせました。11月ごろから日照時間がぐっと短くなり,天気も曇りがちになります。留学生活の中で,最も困ったことの一つが移民局の手続きでした。フランスに滞在する留学生に発行されるビザは2種類あります。

  • 6ヶ月以内の短期滞在者に発行される”sejour temporaire”
  • 普通の学生ビザである”etudiant”

この二つです。sejour temporaireのビザを持っている場合,移民局に行く必要はありません。私の滞在期間は5ヶ月半ほどだったのですが,なぜか一年間のetudiantビザを発行され,移民局に行ってビザを正式に有効にするための手続きをしなければならなくなってしまいました。(はっきりした理由はわからないのですが,不測の事態が起こったりして帰国日が延長されると滞在が6ヶ月を超えてしまう可能性があるから?と予想しています。もしくはビザ申請の際に選ぶ欄があったのかもしれないのですが,その時は意識していなかったので覚えていません…。)経緯を細かく書くと長くなるので省きますが,移民局の対応に困った思いをしました。フランスに行かれる方はできるだけsejour  temporaireのビザを取得された方がいいかもしれません。

夏休み中に一度と冬休みに入ってからもう一度,ロンドンに旅行しました。パリとロンドンは飛行機やユーロスターという高速鉄道で,片道2時間ほどで行き来できます。どちらもできるだけ早く予約したほうが安くなります。

ロンドンのウエストエンドと呼ばれる地域はニューヨークのブロードウェイと並ぶ演劇・ミュージカルの中心地なのですが,私は最近舞台に興味を持っているため,本場の舞台を鑑賞することができてとても楽しく有意義な時間を過ごすことができました。

留学を終えての感想

私はもともと英語が堪能なわけでもなく,フランス語も今年に入ってから勉強し始めたため,語学において後悔した面が多々ありました。毎週,授業に出席して先生にその週の成果を見せて説明するにあたって,事前に簡単に文章を作成していたのですが,話が予想していなかった方向に進むと言いたいことがうまく言えず先生を困らせてしまったまま終わってしまい,ディベート中心の授業では他の学生が何について話しているのかまったく理解できず,何をしていいか分からなくて途方に暮れてしまうこともありました。自分の準備不足が原因ではあるのですが,そのために留学期間の中頃にしばらく落ち込んでしまい,制作がほとんど進まなかった時期などもありました。当たり前のことではありますが,留学を考えている方は少しでも早くから語学の準備をされることをおすすめします…!

ですが,もちろん素晴らしい経験もたくさん得ることができました。ENSADは,デザイン系の専攻がほとんどを占めていることもあり,京芸とは授業の制度をはじめ環境も雰囲気も大きく違います。新しい環境のなかで作品を制作できたことはとても有益な体験でしたし,特に留学前から必ず制作したいと思っていた,「フランス人でマンガやアニメが好きな女性と一緒に日本のマンガ・アニメのようなシーンを演じて写真を撮る」というプロジェクトを実現できたことは嬉しいことでした。

パリやロンドンの美術館を,時間をかけてたくさん訪問して古代から現代に至るまで世界中の美術作品を鑑賞できたこと,舞台やパフォーマンスを観ることができたことも,自分にとって大きな糧になりました。また,これまで海外の人との関わりが少なかった私にとって,ヨーロッパ,中東,アジア,北南米など世界中から来ている学生と触れ合えたことは,とても実りある経験でした。

テロが起こったため,世界情勢についてのニュースを目にしたり,話題に上ることが多くなったりしたことを契機に,自分が世界の状況についてあまりにも無知だったことに気づかされたことも大切な変化だったと感じています。