大学概要

  1. 京都市立芸術大学
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卒業生インタビュー[art_08] 高嶺格さん 1/4

1. 京都芸大の学生は,何か違う。

interviewer芸術の道に進まれたきっかけは何ですか。

高嶺 僕が幼い頃,母親が近所の油絵教室に通っていた影響で,絵を描くということは身近なことでした。その頃から,絵を描いたり,ものを作ったりするのがすごく好きでしたね。僕は3人兄弟の末っ子で,僕以外は芸術系ではない総合大学に進学しました。大人になってから聞いた話なんですけど,僕が高校に入るときに「せっかく絵を描いたり,ものを作ったりすることが好きなんだから,そういった方向に進ませてあげられたらいいな。」と母親は思っていたみたいです。

 僕は高校1年生の頃,数学が苦手で,試験で競争させられることがすごく嫌だと感じていました。そんなときに美術系大学の存在を知り,「美大なら,競争は無いんじゃないか。」という安直な発想で,美大に興味を持ちました。でもそれからいろいろ考える中で,絵を描くのも好きだし,親からも反対されなかったということで,真剣に進路を決めました。ただその中で,受験が大変でしたね。競争させられることが嫌で美大を目指したのに,そこに入るために結局競争があったという。「もう早く競争から解放されたい。浪人なんか絶対したくない。」と思ってなんとか頑張りました。

interviewerなぜ京都芸大を目指されたのですか。

高嶺 高校生の時,地元の鹿児島で美大を受けようと思っている学生を対象に,一週間くらいの夏期講習があったんです。参加者は,100人くらいいたと思いますね。県のあちこちから集まってきて,大人数でデッサンとかするんですよ。その講習の講師として来られていた方の中に,当時,京都芸大の学生さんだった,藤浩志さん・泊博雅さん・小山田徹さん(現彫刻専攻准教授)という3人がいて,その3人がなんとも言えない,ちょっと異色な雰囲気だったんですね。歳は若いのにすごく貫録というか独特の雰囲気のある人達で,「京都芸大の学生は何か違う。」と肌で感じたのを覚えています。それで,京都芸大に興味を持ち,「この大学,おもしろそう。」と思って選びました。もし,その3人がもっと普通の人だったとしたら,京都芸大は気になっていなかったかもしれないですね。

interviewer大学に入られてからはどうでしたか。

高嶺 大学に入ったばかりのときは,作品を作っているときも,完成形に向かうまでにどのようなプロセスを経ていけばいいのかが分かりませんでした。うまく言葉にはできないけど,違和感があったんです。そのせいで,自分は,なかなか前に進めないことがよくあったので,「みんなは何でこんなちゃかちゃかとスムーズに制作できるのかな。」と思っていました。例えば,「陶器を作るときのプロセスと,漆工のプロセスって違うんだな。」と感じて,どうしたらいいのか分からなくて。漆は,最初のつけ位置があって,そこから積み重ねていくので,アクシデントが生まれる余地があまりない。一方,陶器は,「焼いてみてどうなるか。」というスリリングな感じがあります。いろいろやっていく中で,僕は後者の方が好きだと気付きました。プロセス自体がフレキシブルである方が良くて,その瞬間に思ったこと,「今はこうしたいからこうするんだ。」という風に,途中でどんどん作品が変わっていきました。それでも,当時の先生は何も言わず,見守ってくれました。そういったことにすごく寛容だったと思います。ありがたかったですね。



インスタレーション「Fukushima Esperanto」

アジア・パシフィック・トリエンナーレ(オーストラリア/ブリスベン)にて発表(2012年)

interviewer制作プロセスの途中で,これがいい,こっちの方向でいこう,と変わっていくのですか。

高嶺 そうですね。例えば,建築家は,頭の中で想像したり計算したりしながら図面を描いて,最初に完成予想図が出来上がるじゃないですか。そういうスケッチが最初に描けるか描けないかということだと思うんですよね。僕はそれが得意ではなかったんです。心がうつろいやすいというか。全てにおいて,「今がすべてじゃない。」と思っています。「これで本当に正しかったのかどうか」というのは,その時々のちょっとした印象で,結構変わるかもしれないという思いがあって,最初に考えたものを否定できる可能性を残すようにしています。積み重ねてきたものを,「やっぱり違う」と,“がっしゃん”とひっくり返すように「全部元に戻せる自由さ」を最後まで持っていたいんですよね。ただ,そのときの感情だけでころころ変えていると,中途半端なものになってしまう恐れがあるので,そうならないためにも広くアンテナを張っておくということは心掛けています。

インタビュアー:美術研究科修士課程 日本画専攻 2回生 杉田 泉,松平莉奈

(取材日:2012年10月21日)
(取材場所:京都芸術センター)

Contents

  1. 京都芸大の学生は,何か違う。
  2. 学生時代の思い出
  3. ダムタイプとの出会い
  4. 「いい先生」とは

Profile:高嶺 格【たかみね・ただす】

アーティスト

1968年鹿児島県生まれ。1991年京都市立芸術大学工芸科漆工専攻卒業。

大学在学時からダムタイプによるパフォーマンスに参加するなど,パフォーマンス,ビデオ,インスタレーションなど多様な表現を行っている。

アメリカ帝国主義,身体障害者の性,在日外国人などの社会問題を扱った作品などで知られ,日本のみならず海外でも高く評価されている。

2003年,ヴェニス・ビエンナーレに参加。2011年から2012年にかけて日本国内3つの公立美術館で個展「とおくてよくみえない」を開催した。

著書に『在日の恋人』(河出書房新社,2008年)がある。