大学概要

  1. 京都市立芸術大学
  2. 大学概要
  3. 卒業生インタビュー
  4. 卒業生インタビュー[art_10]三瀬夏之介さん 1/4

卒業生インタビュー[art_10]三瀬夏之介さん 1/4

1. 幼少~京都芸大時代

interviewerどういう幼少期を過ごされましたか。

三瀬 幼稚園,小学生と,もちろん絵を描くことが大好きな子供だったんですが,僕はいつも絵の全体を見れず,画面の端から描いていって完成させる,ずいぶんバランスの悪い絵でした。自分でも他の人の絵とは少し違うなと感じていて,すごく嫌だったんですが,ある時の写生大会で五重塔を描いた時に,図工の先生が「三瀬くんの絵を見て。おもしろいでしょ!」と,みんなに見せたんです。ちょっとおかしいと思っていた自分の絵が初めて人から注目されて,恥ずかしくも嬉しい気持ちになったことを覚えています。

 学校の授業はいつもインプットばかりで,周りと厳しい競争ばかりさせられている。唯一競争がなく自分を出せるアウトプットの場というのは図工,美術の時間くらいしかありませんでした。そういった場所で,先生が自分の作品を褒めてくれたことが,その後の道を決めるとても大きなきっかけになりました。

interviewer本格的に美術の方面に進みたいと思ったのはいつ頃ですか。

三瀬 中学生の時に,芸術系の高校に進学したかったのですが,将来像を描き切れず,親や中学校の先生の勧めもあって普通科の高校に進学しました。高校でも絵を描くことが楽しくて,美術室に籠って好きな油絵を描いていました。進路は,「やっぱり生活の中心に美術を置きたい」と考えて,親と高校の先生を説得して美大への進学を決断しました。

interviewer京都芸大では,どんな学生生活を送っていましたか。

三瀬 沓掛のキャンパスは少人数のためみんな顔見知りで,田舎ののんびりとした雰囲気があり,変に焦ることもなく,じっくりと制作に取り組めて良かったです。全国から美術部の部長みたいな強者が集まっていて,学生生活は楽しかったですね。

 各科に分かれる前に1回生全員が受講する総合基礎実技では,1つの分野だけではなく,いろんなことが勉強できました。もともとゴッホが好きで油絵を学びたかったのですが,総合基礎実技では,漆塗りのオブジェを作ったり,経験のほとんどない彫刻や映像の課題に共同制作など様々な課題に取り組みました。他の大学では縦割りで,まずはそのジャンルの基礎教育を学ぶところが,京都芸大の場合は,最初にジャンルや慣れた技法を取っ払ってしまうので,そこでまず自分を相対化することができました。それらを通じて,科を超えて仲良くなれた友人たちは大事な存在でした。

 入学当初は,油画専攻に進もうと考えていたんですけど,当時はバブルが崩壊した後で,「この先,日本はどうなっていくんだろう」と学生生活の中で日本に対する意識が芽生え,日本画を学ぶと日本が何かわかるのかなと思い,日本画専攻を選択しました。

interviewer当時の日本画専攻のことを教えてください。

三瀬 日本画専攻が,どんなコンセプトを持って教育研究されていたのか,当時の僕は俯瞰できていなかったですけど,人物を描くにしても,地面を描くにしても,本画制作前の写生をかなり重視していて,しっかりと物事に寄り添いながらイメージを育てるという基礎を叩き込まれました。当時は保守的な教育に反発もありましたが,今振り返ると,教えてもらったことが体に染みついていると感じます。

京都市立芸術大学構内 アトリエ棟ピロティーでの制作風景

 僕は日本画専攻でありながら,立体作品なんかも作っていたので,日本画専攻の同級生が丁寧に描いている隣で,粉塵を飛ばしたり,音を出して制作することに引け目を感じて,アトリエ棟のピロティを野外アトリエにしていました。

 そこは,寒いし暑いし,いろいろ大変なところはありましたが,面白い場所でした。というのも,工芸や彫刻,壁画など,日本画以外の専攻の先生達の通り道で,日本画としてではなく,アート一般として「あなたはなぜ作っているんだ」とすごくきちんとした批評を受けることができたのです。

青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)での展示風景

 















 

​撮影:山本糾 © Natsunosuke MISE courtesy imura art gallery

インタビュアー:河合正太郎(日本画専攻2回生)
(取材日:2014年1月29日)※イムラアートギャラリー(京都)にて

Contents

  1. 幼少~京都芸大時代
  2. 東北画は可能か?
  3. 震災により突き付けられた問い
  4. 将来のための3つの視点

Profile:三瀬夏之介【みせ・なつのすけ】 Natsunosuke MISE 日本画家

1973年奈良生まれ。1999年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(日本画)修了。

既存の日本画の枠にとらわれない,多様なモチーフや素材,時にはコラージュを施した作品の圧倒的な表現力が高い評価を得ており,多くの展覧会等で受賞している。2002年 第2回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展(豊橋市美術博物館/愛知) 星野眞吾賞受賞/2004年 第2回東山魁夷記念 日経日本画大賞展(ニューオータニ美術館/東京)入選/2006年 五島記念文化財団 美術新人賞受賞/2009年 京都市芸術新人賞受賞/2009年 第16回VOCA展2009 VOCA賞受賞/2012年 第5回東山魁夷記念 日経日本画大賞展(上野の森美術館/東京)選考委員特別賞受賞/2014年 第32回京都府文化賞奨励賞受賞。東北の芸術大学等で後進の育成にも力を注いでいる。