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卒業生インタビュー[art_14]森田りえ子さん 1/4

1. 岩絵の具の美しさに感動

interviewer小さいときから絵を描くのが好きでしたか。

森田 好きでしたね。親によると,おとなしくしていると思ったら,たいてい絵を描いていたそうです。小学校の時も美術の時間が一番好きでした。でも当時は,美術全般に興味があって,時に彫刻のような,ものづくりのほうが自分の世界にぐっと入っていけるので好きでした。

interviewer京都芸大を受けると決めたのはいつですか。

森田 高3の初め頃かな。高校は進学校の普通科で,その頃から京都の雰囲気が好きで,京都の大学に進学したいと考えていました。ただ,美術は好きでしたが,好きなだけでは京都芸大には受からないだろうと思っていて,京都教育大を受けるつもりでいました。教育大の入試科目にデッサンがあったので,大阪の美術研究所の夏期講習に行ってデッサンの勉強をしていたんですね。そこの先生に「きみ,デッサン上手だから京都芸大を受けてみたら。」と言われたんですよ。それで,前期日程で京都芸大を,後期日程で教育大を受けてみようと思いました。そうしたら芸大に受かったので,すごく嬉しかったですね。

interviewer京都芸大の受験で手応えはありましたか。

森田 いいえ,確実に落ちたと思っていました。当時,倍率がすごく高くて,研究所の「主(ぬし)」のような浪人生たちも大勢いたので,勝ち目はないと思っていました。なので,合格発表会場にとぼとぼと歩いて見に行ったら,一緒に受験した友達が会場から出てきて「りえ,受かってたよ!」と言われ,まっしぐらに走って自分の目で確かめ,大喜びしました。

 運がよかったんだと思います。デッサンには少し自信があり,研鑽も重ねてはいました。その頃ずっと「ケント紙」でデッサンしていたのですが,受験前にたまたま母が水仙の花を買ってきてくれて「描いてみたら。」と勧められたので,何気なく家にあった「画用紙」に描きました。そうしたら,受験のデッサンはラッパ水仙を画用紙に描くという課題でした。母に大感謝です!

interviewer入学した時から日本画専攻に進むつもりでしたか。

森田 日本画専攻に進むことを決めたのは,最初の半年間のガイダンス実技(現在の総合基礎実技に当たる)の期間です。入学したての頃は,高校の美術の教科書に載っている有名な日本画家を知っているくらいで,現存の作家はほとんど知りませんでした。ガイダンスの間に,先輩の教室を巡ったり,画材屋さんに行ったりして,何が自分に合っているか考えあぐねていた頃,岩絵の具と出会いました。その美しさに感動して「こんな煌びやかな材料で絵を描いてみたい。これにチャレンジしよう。」という安易なきっかけから始まりました。

interviewer当時,先生に言われて印象に残っていることはありますか。

森田 日本画専攻に進んで最初の課題は鶏でした。自分なりに描いて,石本正先生(現名誉教授)に見ていただいたら,「きみ,伊藤若冲の作品を見たことがあるか。」と言われて,すぐに図書館に向かいました。若冲の鶏の作品群を見たとき,影響というより衝撃を憶えました。「見てきました。すごく生命力にあふれていて,観察眼の鋭さに感激しました。」と報告しに行ったことを憶えています。

interviewer学生の時のエピソードについて教えてください。

森田 私が学生の頃は東山の旧校舎で,西京の今のキャンパスに移転する直前でしたので,建物はボロボロでした。特に,私が入学する数年前に校舎が火事に見舞われ,日本画大学院の学生はプレハブの仮設住宅みたいなところで描いていました。当時10人ぐらいいたかな。画室はとても狭かったので,ちょっと学校に行かなかったら,すぐに自分の描けるスペースがなくなっていました。それに,当時は冷房もありませんでしたから,夏休みに絵を描きに行ったら,すごく暑いんですよ。我慢できずに,みんなでホースで屋根に水をかけて,暑さをしのいでいました。それぐらいしないと,絵の上に汗がぼとぼと垂れてしまって大変でした。そんな現状の中,みんな文句も言わず,機嫌よく描いていました。

 それからもうひとつ,大学院時代のエピソードがあります。1回生の学生が,課題でアジの干物を描いていて,その干物を置いたまま帰ったことがあったんです。それを見つけた私の同級生の男子たちが,焼いて食べてしまったんですよ。その翌日気づいた学生が「課題の干物を食べられました。まったく同じものはもう2度と手に入りません。こんなことが許されるのでしょうか?」と泣きながら先生に訴えたんです。そうしたら先生が制作室に怒鳴り込んできて,干物を平らげた学生たちはこっぴどく怒られたそうです。私は事件の日にたまたまいなかったのですが,いれば絶対にいっしょに食べたと思います(笑)。今思うと,野趣あふれる学生時代でした。

インタビュアー:木田菜摘,出口義子(いずれも修士課程絵画専攻(日本画)1回生*)*取材当時の学年

(取材日:2014年12月15日・個展会場(大丸ミュージアム京都)にて)

Contents

  1. 岩絵の具の美しさに感動
  2. 写生への目覚め
  3. 個展がモチベーション
  4. 京都の魅力に触れること【2015年7月22日公開予定】

Profile:森田りえ子【Rieko MORITA】日本画家

兵庫県神戸市生まれ。1980年京都市立芸術大学日本画専攻科修了

2000年京都市芸術新人賞,2011年京都府文化功労賞受賞。2013年から京都市立芸術大学客員教授。

四季を彩る花々や,京都の伝統文化を受け継ぐ舞妓達,エキゾティックな女性像等卓越した描写力で表現する日本画家。現在の日本画壇において,次代の日本画を託される画家として注目されている。