大学概要

  1. 京都市立芸術大学
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  3. 卒業生インタビュー
  4. 卒業生インタビュー[art_21]八木光惠さん 1/4

卒業生インタビュー[art_21]八木光惠さん 1/4

1. 進路を決めた福本潮子さんの助言

interviewer元々,美術系の大学への進学を考えていらしたのでしょうか。

八木 私の育った環境が影響しているかもしれません。父は美術が好きな人でしたし,兄も絵を描いていました。その兄が,後に具体美術協会の最年少会員として活躍される今井祝雄(いまいのりお)さんと親しくなり,よく訪ねていらして,私が小学生の頃から隣の部屋で兄と今井さんが二人(当時はどちらも十代)でアートの話をしていたことを憶えています。このようにアートは私にとって子どもの頃からとても身近な存在だったんです。ですから私が美術系の大学への進学を考えたことは,さほど変わった選択ではなかったと思います。

 そんな私の願いに対して父は反対しませんでしたが,母からは難色を示されました。説得するに当たっては,挑戦してダメだったら美術系の大学に進むのは諦めて一般大学に行くので,とにかく一回だけ受けさせて欲しいと懇願し,それで認めてもらいました。初志貫徹するには一発合格しか道はなく,受けたのは京都芸大だけ。受験するからには当然合格するという覚悟というか思い込みで頑張りました。

interviewer高校も美術系の学校だったのでしょうか。

八木 いいえ,高校は美術科ではなく普通科でした。周りの同級生で美術系大学を志望する人たちの多くは,選択科目(美術系は美術・工芸の2択)で美術を選択し,部活は美術部に所属するというのが一般的でしたが,私はそうはせずに選択科目では工芸を選び,部活はワンゲルに入っていました。好きだった美術を選択しなかったのは,授業を担当されていた先生がいわゆる洋画家然とした方で,そのアカデミックな雰囲気に気後れしてしまったせいもありますが,デザインが学べるところやモノ作りができるところから工芸を選択しました。

interviewer京都芸大を目指されたのは何故でしょうか。

八木 高校時代に,コンテンポラリーの染色家として世界を舞台に活躍されている福本潮子(ふくもとしほこ)さんに家庭教師をしていただいていて,進学先のことについて話が及んだ時に,「あんた,行くなら京都芸大やで」と仰っていただいたんですよ(笑)。福本さんは,もうエネルギーの塊のような方で,当時京都美大の西洋画専攻科に在籍されていました。そんな方から「あなたはここ」と言われたら,何となくそうなのかなという心持ちになっていきました。

interviewer大学ではどちらの専攻で学ばれたのでしょうか。

八木 染織専攻に在籍していました。でも,実を言うと大学に入学するまで染織専攻で何をするか分かっていなかったんです。元々の私の興味はデザインの分野にあったので,そちらに進もうと考えていたところに,「デザインよりも染織やで!」薦めていただいたんです。福本さんは私の大雑把な性格を理解した上で染織を薦めてくださっているのかなと思い,飛び込んでみたのですが,蓋を開けてみると私とは真逆の緻密な方ばかりで,そんな中で私は浮いていました(笑)。

 私が大学進学を目指したのは昭和40年代半ばで,京都芸大では大学改革が進められていた時期です。美術学部で現在まで続いている「総合基礎実技」の授業の原型である「共通ガイダンス」は,この時の改革に伴い導入されたもので,私はちょうど共通ガイダンス一期生となります。授業は主に若手の先生方が担当されていましたが,ベテランの先生も頻繁に顔を出して指導してくださいました。入学したばかりで何にも出来ない私たちに一流の先生方が指導してくださるというのはとても有り難いことで,私にとっては宝物のような時間でした。

interviewer当時の共通ガイダンスの授業ではどんなことをされていたんですか。

八木 新入生は専攻の区別なしに4つのクラスに分かれ,授業は各分野の先生が交代で受け持ち,比較的短時間で形になるようなテーマが与えられました。

 漆工の先生が担当された回では,発泡スチロールを好きな形にくり抜き,紗張りや塗装の工程を学んだり,日本画の先生が担当されたデッサン指導の時には,薄紙の上に置かれた大きな柑橘類を描くというお題が与えられた記憶があります。繊細な薄紙や瑞々しい柑橘類の表現に戸惑いどう描いてよいか分からなくてしばらく思案していると,先生が私の側にいらして,「こうして描き始めたらええねんで」と手取り足取り教えてくださり,結果として先生からは「描けるやん」と言っていただき,私自身も「ちゃんと描けるんだ」と感じた記憶があります。

 専攻の垣根を越えて,各分野の先生から直接の指導を受けエッセンスを感じ取る機会を得たことは,今思うと素晴らしい時間でした。

インタビュアー:
山田毅(大学院美術研究科修士課程 彫刻専攻2回生*)
平田万葉(大学院美術研究科修士課程 工芸専攻(陶磁器)2回生*)
*取材当時の学年

(取材日:2016年12月2日・アートコートギャラリーにて)

Contents

  1. 進路を決めた福本潮子さんの助言
  2. 大学時代の思い出【2017年12月13日公開予定】
  3. 野村仁さんとの出会い~真の意味での作家とは~【2017年12月20日公開予定】
  4. 美術館にアートを贈る【2017年12月27日公開予定】

Profile:八木 光惠【Mitsue YAGI】アートコートギャラリー代表

大阪市生まれ。京都市立芸術大学工芸科染織専攻卒業。アートコートギャラリー代表として活躍する他,「美術館にアートを贈る会(※)」理事などを務める。

(※)美術館にアートを贈る会…2004年に八木氏等が発起人となり設立。メンバーが選定した美術作品を所蔵者として相応しい美術館を見つけ,受入れを交渉し,協力者を募って皆で寄贈する取組を展開。2017年4月時点で5つ目のプロジェクトを実施中。