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卒業生インタビュー[music_21]中村 淳二さん 4/4

4.欲しいものは技術と音楽性

interviewer_music現在は,N響で活躍されていますが,今後やってみたいことはありますか。

中村 自分としては,やはりオーケストラを主軸に置きたいですね。そこは絶対におろそかにできません。N響に入ってまだ2年ほどですが,素晴らしい指揮者と凄い仲間たちと一緒に音楽を作り出せることがとても楽しいです。

 それに,自分がまだオーケストラの中でちゃんと吹けているとは思っていませんから,とにかく技術と音楽性が欲しいです。それこそ,N響では首席奏者の方々の横で吹いていますが,全然そのレベルに追いつけてないんです。N響の皆さんは,ものすごい高いレベルをキープされていて,そのことは自分にとってとても刺激的ですし,自分ももっと上手くならなきゃいけないと思います。それは学生の頃から変わりません。妻に誕生日に何が欲しいと聞かれたら「技術と音楽性」と答えているんですが,ずっと言い続けているので,最近は毎年恒例のネタみたいになってきました(笑)。

interviewer_music技術というのは例えばどんなものでしょうか。

中村 指がちゃんと回るとか,ダイナミクスの差をきっちりつけられるとかですね。適度な音質や音圧,音程で吹けるというのは全て技術です。ですから自分で表現したいと思うものをアウトプットできるだけの技術を持っていないことには,こちらが表現しようと思ったものは聴衆には伝わらないですよね。やっぱり自分の中ではもっともっと表現したいことはあるから,それを表現するための技術が欲しいんです。そういう意味では,東京の学生はとても技術が高いんですよね。だから楽譜としての完成度は高い。ただ,そこに表現したいことが伴わない人も見受けられます。その点,京芸生は逆で音楽性は高いけれど,技術が伴っていない人が多いような感じがします。その辺りは西と東の差はあるのかもしれませんね。

interviewer_musicそれはプロとして活動されてみて感じたことですか。

中村 最近のことです。これまでは東京の学生を全然知りませんでしたから。今の自分より東京の学生の方がはるかに技術があるように感じます。音楽の世界は年々,演奏家の年齢と技術レベルの向上は反比例の関係にあるように思います。ですから,若いが故に表現力が伴っていなくて,技術を持て余しているという状態もたまにありますね。私の場合はその真逆で,いつまでも技術を欲しています。


N響フルートパートとヨーロッパツアーにて

interviewer_music技術を高めるために,どのような練習をされていますか。

中村 プロになってからは,毎日の基礎練習を怠らずにやっています。プロになってみて気付くことはすごく多いです。ベートーヴェンやブラームスをちゃんと吹くためには何が必要かといえば,ちゃんと音階を吹けることと,むらなく音階が並ぶこと。これは本当に難しいです。それから,音が真っ直ぐ伸びるとか,いかにきれいな音が出るかとかありますが,オーケストラに入って2年目ぐらいの頃に,そうした基礎的なことの重要性に気付きました。

interviewer_musicご自身がレッスンを行う側になってみて,何か気をつけていることはありますか。

中村 指導する子それぞれに合ったことをするようにしています。受け身な子に対しては細かく指示を出すし,そうではない子には特に何も言いません。自分で考えることは大事だと思います。

interviewer_musicお子さんと過ごされる時間は気分転換になりますか。

中村 気分転換半分,思いどおりにいかない育児にイライラ半分といったところでしょうか(笑)。でも子どもは可愛いです。知らない間に,仕事のストレスは解消されているんでしょうね。

interviewer_music在学生と受験生にメッセージをお願いします。

中村 在学生の皆さんは,自分のやりたいことをしっかり見定めることが大切です。オーケストラに入るのは難しいと思われていますが,絶対に入れないという事はありません。でも,まずは志さないことには入れません。やりたいことがあるのであれば,それに対して自分からアプローチしていく姿勢は忘れないでください。

 それから学生時代に学んだことの意味は,随分と時間が経ってから気付くことが多いです。授業もそうだし,レッスンもそう。学んだことを頭のどこかに保存しておけば,後々とてもありがたみがあります。

 受験生の皆さんにお伝えしたいことは,京都芸大は学生のレベルが高い大学だということです。関西では格段に上のレベルだと思います。フルートに関していえば他にも上手い大学もありますが,それでもアンサンブル能力でいえば京都芸大の方がはるかに上です。木管五重奏をやろうと思って急ごしらえで編成を組んだとしても,ある程度の水準の演奏に仕上がるというのは京都芸大ぐらいではないでしょうか。アンサンブルやオーケストラをしたいと考えている人にとっては,色々な可能性が開ける場だと思いますから夢を持って入ってきて欲しいです。もちろん夢や目標は時々で変わることもあるでしょうから,方向転換することがあってもよいと思います。それよりも,目標を何も持たずに歩みを続けるのはもったいないことです。10年先ぐらいの長期的な展望を持ちながら先に進んでみるのがよいと思います。

インタビュー後記

 面と向かって中村さんにお話を伺ったのは今回が初めてでしたが,一つ一つの言葉から強い意志を感じました。何のために京都芸大に入ったのか。自分で選んだその道に覚悟はあるか。夢を持って,その夢を叶えるためにすべきことをしているか。色々なことを知れば知る程,自信が無くなったり,諦めようかと思う気持ちが生まれてしまいがちですが,自分自信と今一度向き合うためのキーワードを沢山いただいたような気がします。

 また,レッスンや授業で習ったことは,リアルタイムではいまいち理解出来なくても,時間が経って気付くことが多くあるとのお話は,私自身も,学部生から院生に進む中で色々と実感したことがあったので,とても共感しました。何事も無駄はなく,心の片隅に保存しておくことが重要だと思いました。

誕生日プレゼントは「音楽性」と「技術」が欲しい,と仰られたエピソードからも,とても気さくでチャーミングなお人柄がうかがえました。中村さんの後に続けるよう,フエ部屋の後輩として私も頑張りたいと思います。

大村優希惠(音楽研究科修士課程器楽専攻(管・打楽)1回生*取材当時

 中村さんにインタビューをして,一貫して感じていたことは,「目標に向かって真っ直ぐに取り組む」ということです。このように文字にしてしまうと簡単なことのように感じてしまいますが,よそ見することなく続けることの大変さを,現在ひしひしと感じている私には,自分を見つめ直す良い機会にもなりました。

大学に入学するときからオーケストラ奏者になる,という夢を掲げて京都芸大で学ばれた中村さん。20代のうちに名フィル,N響に入団することができたのも,自身の夢に向かって,一心に目の前の課題をこなしていったからなのだろうな,ということが伝わってきました。

また,私は普段から,音楽家としてオーケストラ奏者以外にも食べていく方法は他にないのだろうか,他にも社会貢献となる仕事はないのだろうかと考えていました。それは今も考えています。ですが,今回お話を聴かせていただいて,なりたい自分になるために,夢に向かって一心不乱に頑張れるよう,より目標をはっきりさせていきたいなと思いました。そして,それを実現するための努力をもっとがむしゃらにしていこうと思います。

鎌田邦裕(音楽研究科修士課程器楽専攻(管・打楽)1回生*取材当時

(取材日:2016年10月12日・本学音楽研究棟にて)

Contents

  1. ヴァイオリンからフルートへ
  2. 大学は一つのことを究める場所
  3. 晴れてオーケストラ奏者に
  4. 欲しいものは技術と音楽性

Profile:中村 淳二【なかむら・じゅんじ】フルート・ピッコロ奏者

1986年京都府生まれ。2009年京都市立芸術大学音楽学部音楽科管・打楽専攻卒業。卒業時に音楽学部賞,京都音楽協会賞を受賞。卒業後は関西のオーケストラを中心に客演奏者として研鑽を積み,2010年に名古屋フィルハーモニー交響楽団に入団,2014年にNHK交響楽団に移籍し,現在同団フルート・ピッコロ奏者。第15回松方音楽賞受賞。第17回びわ湖国際フルートコンクール第3位。第12回フルートコンヴェンションコンクールピッコロ部門入選。