interview:

京都市立芸大で撮影した写真を投稿し続ける謎のTwitterアカウント、KCUA_light(@light_kcua)
沓掛2023プロジェクトが始まるよりずっと以前から活動しているアカウントから突如連絡が・・・!

今回は覆面インタビューとしてKCUA_lightの中の人に接触し、校内を歩きながらこれまでの活動や京芸で撮る写真の魅力についてうかがった。

2021年4月
聞き手=阪本結(沓掛2023プロジェクト運営)
ゲスト・写真=KCUA_light

KCUA_lightについて

−今日はよろしくおねがいします。早速ですが、Twitterアカウントについてお聞かせいただけますか?

Twitterの「KCUA_light」(@light_kcua)というアカウント名にて、京芸構内の写真を毎日6枚ずつ投稿しております。
2017年の4月から続けており、現在投稿分だけで5千枚弱、未整理・未投稿分を合わせると約7千枚はあります。匿名で行なっている為、自分がやっていると知っているのはごく数人です。

−このようなアカウントを始められたきっかけは?

アカウントを作成したのは深夜テンションでした笑
ただ、そもそもの「京芸の写真を撮り始めたきっかけ」は、自分の学年の総基礎展名が「キリトリ展」でした。
「課題という枠で切り取られる中で見えてくる私たちの個性」的な意味だったと記憶しています。キリトリ展と繰り返し口にする中で得た、「写真の四角フレームで日常を切り取ると、ちょっといつもと違うように見える」というフワッとした気付きから撮り始めました。
アカウントのプロフィールにある「京芸内のキリトリ」の言葉も、写真に四角い枠を付けているのも「キリトリ」を意識しての故です。

−なぜ今回、沓掛2023プロジェクトにご連絡くださったのですか?

これまで五芸祭京都大会のパンフレットページ背景やGoogle classroomのヘッダーなどに写真を提供させていただく中で、写真が「日常を彩る」という役割を持つと学びました。また、頂く感想の中で、こうした写真が「人の視野を広げる」事も知りました。
今回のアーカイブ企画(沓掛2023)では新たに、写真が「生活の記憶」と成り得る事、またこうした記憶はその場所で関わった人々によって重ねられ共有されるものだという事を教えていただきました。
自分のアカウントは個人でやっているものなので全然何かにまとめようという気もないですし、特に「京芸の今の姿を記録に残そう」っていうテーマがあったわけでもなかったので、こんな企画あるんだ!って、うれしいっていうか、すごいってなと思って。

−とても光栄です!
それでは、ここからは実際に学内を歩いて、普段撮影されている様子を見せていただきながらお話を伺っていこうと思います。

校内撮影スタート

歩きながら喋りながら撮りながらっていうかんじですか?

−そうですね、今日はすでにどこか撮られましたか?

彫刻棟の裏をぐるっとまわって、アトリエ棟の裏をちょっと歩いて音楽棟に行こうかなっていうくらいで。

−じゃあ音楽棟行きましょうか。
道すがら、公開になっているプロフィールお聞きしていいですか?

ほとんど公開してないんですけど、美術科で、4年前からこの活動は続けています。
・・・くらいですね。

−なるほど、性別もわからず

そうですね。

−専攻も?

学年の人数が少ないので 笑
そのへんは何も言わず。

−で、ほぼ毎日6枚ずつ投稿されていると。
時間は決まってるんですか?

そうですね。朝と夕方らへんです。

−2回なんですね、朝3枚、夕方3枚みたいなかんじですか?

そうですね。画像なので一気にあげる枚数が多すぎるとうるさいかなと思って。それで3枚くらいにとどめておいて、朝と、だいぶ時間あけて夕方に、という感じで決めています。

食堂 前

結構、自分の見ている視点よりもちょっとこう高くしたりとか、こう、、(腕を限界まで頭上に伸ばして撮る↓)

−全然(カメラの画面)見てへん

もう(腕伸ばしたら画面)見れないんで笑
視点変えたり、しゃがんだりしたら「こんな景色あるんだ」みたいな感じでわかることが多くて。

−(1回の投稿につき)3枚ってだいぶ限定されますけど、何十枚も撮った中で「その時点でのベスト」みたいな選び方なんですか?

細く長く、あわよくばキャンパスの移転まではアカウントをやっていきたいなと思っているので「選びぬかれた3枚」っていうより、とりあえず変じゃなかったらいいかなくらいで撮った中から。

−じゃあ今日撮ったものから選ぶわけでもないということですか?

そうですね。最近撮ったものでなんとなくパっと良いのないなぁと思ったら、まだ出してない昔撮ったやつから漁って。これいい感じっていうのがあったらそれ出して、みたいな感じで。今と昔でちょっと写真の傾向も若干違ったりするんで。

−InstagramじゃなくてTwitterっていうのは何か理由があるんですか?

 Twitter のほうが京芸の様子がわかるかなっていうか。やっぱり結構学生がみんなやっていて。で、写真以外のいろんな情報とか文字として色々まわってくるじゃないですか。だからその中で京芸の様子もよくわかるし。
だんだん「このアカウントみたら京芸のことなんとなくわかる」っていうアカウントになってきそうな感じがあったので 笑
情報量はやっぱTwitterが大きいです。

講堂 外

春ですねなんかこういうの嬉しくなります。今日も桜の写真をいっぱい撮りました。

−今しかないっていうかんじですね。
やっぱりそういう「今しかない感」も大事ですかね?

そうですね「今しかない感」と「京芸でしかない感」っていうのは結構大事にしているところがあって。植物だったら違うところでも生えることができるじゃないですか。でも例えばちょっと壁の模様が入るとか、桜を撮ってるんだけど、ちょっと一部に染織棟の校舎が映っているとか、それだけで一気に京芸だけの写真になって。「いいかな」っていうのがあって。

こうちょびっと何かが見えているっていうのが好きだったり。歩いていくうちに、こういう(山が)ちょっこと見えてるみたいな。

−たしかにめっちゃ可愛い
KCUA_lightさんの写真って、人が映らないですよねそれは何か理由があるんですか?

やっぱり、誰か正体不明の人が自分の活動しているエリアを写真にパシャパシャ撮ってっていう感じになるじゃないですか。だから極力、不信感与えることとかしたくないっていうのがあって、人は写り込まないようにしてます。なんか自分写ってたら怖いじゃないですか。「いつの間に撮られてんの」みたいな。だからそういうのは嫌だなと。
でも1回だけ、用務員のおじさんが遠くに小さく写り込んだことがあって。それもどうしようか迷ったんですけど、まわりが秋で紅葉している黄色い風景で、その中にそのおじさんの水色のズボンが凄いきれいに映えてて。「おじさんごめん」って思いながら。
後ろ姿だし、いいかなっていうので、一回だけありました。

−そんなイレギュラーな写真も

そうですね 笑
でも、基本はやらないようにしてます。人が写ってる方が、学生が色々活動している場所っていう感じでいいのはいいんですけど。

−芸祭の写真とか、そういうイベント的なものはあまり撮らないってことですか?

いや、それも撮ります。けど、人は映らないように。

−すげえ

めっちゃ難しいんですけど 笑

音楽棟 外、体育館 横

あっ!猫ちゃん!おおーー!!

隠れられちゃいました。
一枚撮れたんですけど、遠かったですね。あの子ちょっと人見知りなんですよ。茶色い子の方がすんごい擦り寄ってきて。

−懐っこい子とかいるんですね。

いますねー。今日は、今はもういないのかな。

特にこの時間が好きで。ちょっと日が柔らかくなってきてちょっと斜めになるので。影とかも。好きだったりします。
あっ(猫)
眠そう。めっちゃ眠そう 笑

−人間でも眠い時間ですもんね

確かに。ちょうどお昼終わって。

−太陽が一番あったかい。

そうですね。

こんなことしてるから不審者だろうなと思いながら・・・

−たしかに、特に一人やったら相当・・・笑
学校来たら、とりあえず散歩ってかんじですか?

特にいい天気とかだったらちょっとウズウズして散歩したくなりますね。授業があったりするとないですけど。
専攻入ってから特によく校内ふらつくようになって。休憩もかねて。

−確かに気分転換になりそう。

なりますね。以前、画塾の先生に聞いた話が結構印象に残っていて、こういうオレンジ色と影の青っぽい色。
オレンジと青とか、黄色と青っていう組み合わせが結構個人的にすごい好きなのと、画塾の先生に「黄色と青は恋人色だ」って教わって。

−おしゃれな話!さっきの紅葉と用務員さん服の話もそうですね。

あはは!ああそうですね、そういえば。
結構そういうの見ると惹かれちゃうというか。撮っちゃい気味です。

グラウンド

あ、こっち行ってもいいですか?
普段グラウンド広いからあまりうろつけなくて。

−沓掛2023のプロジェクト、グラウンド撮って投稿してくれた人あんまりいないんですよ。

あ、そうなんですか。じゃあ。
ああいうの(脱ぎ捨てられたスニーカー)とかも、人がいた感じで撮りたくなるんですけど、微妙に個人のものかなーって思って撮れないんですよね。

−結構制限あるなかでやられてるんですね。

そうですね。勝手に自分に制限を設けてやってて。

個人の物は撮らないとか、個人の制作スペースは撮らないとか。アトリエ棟はいろんな専攻が入っているので、アトリエ棟の中まではセーフだけどその中の制作室1、2の中までは撮らないとか。

−プライバシーに配慮してる。

いやーに思われたら嫌だから。

−ほんまに個人が写真撮ってるだけですもんね

そうなんですよ。
だからむしろ、こういうふうにアーカイブの企画としてあると、撮ってるのもちょっと正当化されるじゃないですか。

−やってることほぼ同じですけどね

いやいや、「公度(おおやけど)」が違います!

−でもそういう意味で、公(おおやけ)感あるプロジェクトと、個人のアカウントっていう両方のやり方があって補い合えるものもあるかもしれないですね。

ああそうですねー。個人的に音楽棟の中とか行ってみたい気持ちがすごいんですけど、やっぱでも学部違うし。なんか「入っちゃだめな空気」ってあるじゃないですか。

−わかります。本当はそんなことないんですけど、なんとなく、ね。

だからこういうアーカイブ企画だったら音楽学部の人たちが自分の中をとってあげられるじゃないですか。
見れるじゃないですか。うれしいなーって思って!

−本当ですよね。音楽棟の写真を充実させたいんですよね。

ですよね。そういう理由で音楽棟の中は撮れないから。撮れてもこういう外とかだけなんです。それでも音楽学部の人たちも結構フォローしてくれてて、嬉しいなって思いつつ「中は撮れないんですごめんなさい」って思いつつ。笑

−もうそれでアレですよね、美術学部っていうのもバレるし

そうなんですよ笑
だから美術学部っていうのは絶対バレてると思います。

−大学入る前からこういう、写真撮ったりとかしてたんですか?

撮るのは結構、今から思えば好きだったみたいで。
小4の時にめちゃくちゃおねだりしてチェキを買ってもらってそれで撮ったりしていて。中1の時にお小遣いとお年玉はたいて、ちっちゃいカメラは買ってたんですけど、そのカメラ持って町内ウロウロして。川原歩いたりしてて。でもなんとなくそれは中学で一旦落ち着いて、高校に入ってから写真とか全然してなくって。

−Twitterの投稿も1年生のときはやってなかったんですよね?

そうですね。

−4年前の4月30日に何があった?

あはは笑
それは、たまたま、かなー

−あ、そうか、アカウント作ったのが4月30日ってだけで

そうですね、京芸の写真はだいぶ前から撮ってて。
本当に深夜のテンションでアカウントつくって笑
恥ずかしい話ですね。

中央棟 外、グラウンドから正門方向へ

影とかも好きで、よく撮ったりしてます。

−ホットプレイスとかあるんですか?「ここ行ったら何かある」っていう

つちのいえと、中央棟の屋上。

−だいぶ限られてる 笑
そこは、結構チャンスあったら行きたいなって感じですか?

そうですね。中央棟の屋上、すごい見晴らしもきれいで。

−YouTube動画の撮影で深谷先生と行きましたよ。

あ、行きましたか!
金属のパイプが通ってるんですよ。夕方とかになると、あれに空のオレンジ色とか青色とかめちゃくちゃ映るんですよ。

で、映るだけじゃなくってパイプの継ぎ目とかがすごい線が入ってたり、ちょっと古くてペキペキになったりとか凹んでたりするんですけど、そこでいい感じに色が歪んでたり、反射で色が変わってたりとか。すごいキレイなんで。特に今、すごい空が綺麗だなって時になったら、だーって行って!

−「あそこに映ってるかもしれん!」みたいな 笑

パイプをひたすら撮りまくるっていう変な人になっています。

−怪しいですね 笑

だいぶキョロキョロしながら。

−これ記事にしちゃったら空綺麗な時に探しに来る人いるかもしれないですね

確かにマズそう 笑
中央棟の屋上、喫煙する人くらいしか出てこないので。

正門から大学会館方向へ

−(アカウント開設して)もう季節が4周したということになるんですかね?

そっか、そうですね、だいぶまわりましたね。

−まだ撮れそうですか?

まだ撮れます。

−おおー

そろそろ撮ってる感じとか、だいぶかぶってるとは思うんですけど、個人的にはいつでも新鮮な気持ち「わーきれい!」って感じで撮っているつもりで。

−それがいいですよね。

建物の直線とかと植物の組み合わせも好きです。

−京芸の校舎込みの風景。

ちょっとそこは意識をします。
やっぱり季節でもちがうし、光とか時間帯によっても全然違うから。
同じ場所にいてたとしても1日の中で何枚か、同じところ切り取るにしても。影がおもいっきり変わったり、光の色が変わったら植物とか建物とかの色もちょっと変わってくるんで。それだけで何枚かは取れるかなっていうところもあるんで。あまり尽きないなって思いながら。

−芸祭のイメージ?に写真が使われたんでしたっけ?

芸祭のアイコン。
「個人のお店のアイコンに写真使わせてもっていいですか」って連絡が来て。なんか皆さんすごい丁寧に「1枚おいくらですか」とか。五芸祭のパンフレットとかでも背景写真に使ってもらったんですけど、それもなんか「1枚○○円で考えております」とか最初の時点で言ってくれるんですけど、そもそもこれで何かお金を取ろうっていう気もなくて、皆が使っている京芸を勝手に撮って、みんなの京芸やし撮ってる写真もみんなのものかなっていう勝手な考えがあって、お金は全部とらないように。

−じゃあそのときもお金はもらわず?

もらわず。仕事としてやっていくとか、そういうことになってくる場合はお金はやっぱりとらないと他の写真家の人とかの事もあるから色々あるんでしょうけど、これは趣味の範囲でやってるだけだし。「そんなそんな」っていう感じっていうのが強いです。

大学会館 外

最近、こういうアーカイブ企画で「京芸の写真を残すっていう意味があるんだなあ」っていうのが分かって。
それからちょっとこう、引き(の構図)というか。

−あはは、めっちゃ嬉しい!

ちょっと 笑
今まで結構ピンポイントで、すごい狭い範囲で見てっていうことが多かったんですけど「そういえば全体ってあんまり撮ってなかったな」って。そういう目で見ると、広い目で見ても結構京芸っておもしろい形で。

−おもしろいですよね。特に大学会館の形とか。

そうなんですよ!
めちゃ好きなんです。こことかも。

大学会館も行っていいですかね。

大学会館

とりあえず撮ってみる精神の塊でやってるんで、非常に枚数が増えるんですけど。

−そういうことになりますね。
フォトショで加工しているんですか?

その辺が全部結構適当で。スマホでできる Lightroomと、LINEカメラと、PicsArtっていうアプリの3つぐらいでなんとなく使い分けつつ。

−基本的にパソコンに入れたりはせず全部携帯のなかで?

そうですね。これがあまり負担になると自分の専門のほうが・・あくまで「趣味の範囲で」だから。加工とか、そういうのも帰りの移動時間の中でだけにしてたり、家に帰ってから編集とかしないようにっていう感じです。やっぱりスマホで全部済ませられるほうが楽だなって。あとパソコンが苦手なので、それもあって。

−基本的に加工しない写真はないかんじですか?

加工すると花の色とかって案外出なかったり、そのままのほうが綺麗だなと思うこともあるんで。そういう時は加工しないで上げることも結構あります。
昔は加工はなんとなくいけないような気がしてて 笑
ですけど最近はもうバシバシ加工します。

−ありがとうございました。
芸資研から音楽棟、グラウンド、中央棟、大学会館とぐるっとまわってみました。
影や色の組み合わせ、そして京芸の建物と自然を愛でるKCUA_lightさんの視点が印象的でした。
お散歩を終えてみていかがでしたか?

人と一緒に撮影散歩するのは初めてだったので、新鮮かつ大胆に動けました。色々とお話出来てとても嬉しかったです。

色んな事を教えてもらった大学に、このような公の場で恩返しが出来る事をとても嬉しく思います。これから少しずつ投稿させていただきますので、どうぞ宜しくお願い致します。

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