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津崎実

  • 役職:教授
  • 専攻:音楽学専攻
  • 専門:音響心理学,音楽心理学

コメント

早いもので2022年度は私が京都市立芸術大学で教鞭を執る最終年度となってしまいました。2004年にこの大学に着任したときには、自分のような人間が芸術家を目指す人や、音楽学を学びたいと思う人を指導できるかについて正直のところ確信を持っておりませんでした。芸術志向の人はなんらかの意味で音楽に神秘性を感じていたいわけで、自然科学的な方法論を用いる実験心理学的な手法でその神秘のベールを剥ぐことに対する心理的な抵抗は少なからずあるのではないかと思っていました。実際には科学的なアプローチは神秘のベールを引っぺがすためにやるものではあります。自然科学者の発想の根源はむしろ神秘的に見える現象に対する畏敬があり,純粋な好奇心としてその成り立ちを見てみたいというものがあります。そして多くの新発見は新たな神秘や不思議を見いだすことにつながっています。

この大学で勤務するようになって,改めてmusicという言葉を英英辞典で引いてみました。そこにはmusic の定義として”the art or science of combining vocal or instrumental sounds (or both) to produce beauty of form, harmony, and expression of emotion”と書かれていました。冒頭のartまでは多くの方が納得するとは思います。

その一方でその次にはscienceという言葉が来ていることに私自身もその時には驚きました。日本国内では「音楽を科学するなどと言う不遜な行為は音楽を冒涜するものだ」というような発言を私自身が若い頃に面と向かって言われた記憶すらあるわけです。でもこのmusicの定義は自分自身も西洋の音楽観の中ではmusicianの端くれなのだと認識するきっかけをくれました。

そして日本に比較して,音響や聴覚に対する研究者が欧米圏には多く存在し,その多くの人がこよなく音楽を愛している実態があることも胃の腑に落ちた気になりました。おそらく,本学に進学する人には数学や物理学は苦手というタイプの人もおられるでしょう。その人たちにとっては私が講義する内容はできれば避けて通りたいものかもしれません。しかし,音楽を愛する気持ちがあれば,「そんなの関係ねぇ」とはならないと思います。そして,少しでもそれに食らいつく姿勢を取ることが,playerやsingerの域からmusicianへと至る道を切り開いてくれることになると思います。

略歴

1980 東京大学文学部第IV類(行動学)卒業
1982 東京大学大学院人文科学研究科心理学専門課程修士課程修了
1982-85 新潟大学人文学部助手として勤務
1985-88 東京大学文学部心理学研究室助手
1988-04 (株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 研究員
2004-11 京都市立芸術大学音楽学部 准教授
2011- 京都市立芸術大学音楽学部 教授

最終学歴及び学位称号

東京大学大学院人文科学研究科心理学専門課程修士課程修了
文学修士

業績・研究発表

演奏実績・活動等

ATR人間情報通信研究所在籍中の1995年から1996年には英国ケンブリッジのMRC応用心理学ユニットの客員研究員として滞在。大学時代より一貫して聴覚に関する研究を手がけている。これまでに関連した研究は、周波数変化音の知覚、音楽的音程知覚、音声のプロタイプ知覚、持続時間短縮現象、音声・音響刺激の時間構造知覚、時間ジッター検出、位相スペクトルによる音色弁別、音声合成における聴覚モデル応用、口唇画像が聴覚音声知覚に与える影響、聴覚モデルを使用したイベント検出,音響信号に基づく寸法知覚などがある。所属学会は、日本音響学会、日本心理学会、アメリカ音響学会、日本音楽知覚認知学会、日本基礎心理学会である。

最近の出版〔いずれも書籍中の章執筆担当〕