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交換留学に関する講演会(講師:RCA交換留学1期生 ヤノベケンジさん)-3

3 オリジナリティ

 自分の内面を見つめる機会となったきっかけの一つをお話します。

 ナショナルギャラリーという美術館があって、そこへ通っていた時に、ゴッホのひまわりの絵がかかっていたんですね。

 僕自身は美術の文脈や美術が好きで大学に入ったわけではないのですが、学校では美術の歴史を学びました。もちろん印象派というのはいかに素晴らしいかということを学ぶわけなんですけど、それまでは、自分としては、印象派の絵画を特にいいなと思ったことはなかったんですよ。

 それよりもはるかに自分の良いと思うものは違うというのがあったんですけど、本物のゴッホのペインティングのタッチを見た瞬間、やっぱりものすごくこう、今までとは違う感覚に襲われて、本物を見ることは、教科書や印刷された本やあるいは情報の中で見るよりも、もっとその人の心に届くんじゃないかと思いました。

 そう思った時に、隣を見ると、小学校の子供達が学校の先生に引率されて授業を受けていました。「この絵を見てどう思いますか」と、歴史的なことを全く抜きにして作品を見て感じさせるという授業をしていた。

 その様子を見た時に、あっこれは駄目だなと思ったんですよ。つまり僕達は、現代美術では特に、西洋美術の文脈の中から、自分たちの立ち位置を見つけ出す傾向があったんですけど、このヨーロッパ絵画を見たり、あるいは宗教観の違う美術を見る目を、僕たちはある意味、教育としてすり込まれている。良しとされているものの複製を見て評価をしている。これでは、本物を見ているヨーロッパの人とは根本的に違う、競争しても負けるんじゃないかと思ったんですね。

 その時に、じゃあ、自分たちが勝てる美意識って一体何かなと。

 それを考えた時に、僕は自分が幼少の頃から美的感覚を呼び覚まされたサブカルチャーですよね。漫画とかアニメとか。そういうものの中にも美の本質みたいなものが潜んでいるんじゃないか。そういうものをあからさまに表に出していってもいいんじゃないかっていうことに気付くんですよ。

 その意識の変化っていうのが、僕にとってはものすごく大きくて、この作品を作ったのも若干その片鱗はあって、一見SF映画に出てきそうなキャラクターに見えたりはするんですけど、その感覚、意識の改革みたいなものを得ることができました。

 やっぱり自分達を育てたサブカルチャーの中から、引用といったらおかしいんですけど、その奥にある美の核、本質みたいなものを引っ張り出せば、自分達が幼少の頃から鍛えられた美意識をちゃんと美術の中に落とし込むことができるんじゃないかっていうことに気づいたんですね。

 89年のことで、この時代のことは知らないと思うんですけど、村上隆も奈良美智もまだいないという状況の中で、サブカルチャーみたいなものがハイアートになり得ないという常識の中に、そういう概念みたいなものを僕はRCAの滞在時に、自分のオリジナリティあるいは日本のオリジナリティとは何かということを発見するに至ったんですね。