小中連携事業の取組〈まとめ〉
本学の小中連携事業は,平成14(2002)年より始まりました。
京都市内の小・中学校を中心に教員・学生が赴き,鑑賞教育や図画工作のワークショップを積極的に行っています。
ここでは近年を中心に,その取組内容について紹介します。
1.「創造・発見・感動! 小学生へのメッセージ」
この連携の取り組みでは,学生が大学の授業の課題として実習のプログラムを企画し,それを小学校の協力のもと,指導することを実践するものです。
実施したワークショップ一覧
H23(2011)| みんなで繋がろう 竹族
H24(2012)| つくってあそぼう ポンポンスイスイ ▶︎
H25(2013)| みんなで遊ぼう!コロコロタウン ▶︎
H26(2014)| 走れ!ぼくの・わたしのモンスター『マイモン』▶︎
H27(2015)| あおぞらジェット 〜自分だけのフライングオブジェをつくろう!
H28(2016)| お祭りの主役は君だ! 〜自分だけの「うちわ」をつくろう!
H29(2017)| あの日もこの日も 紐で楽しむ『君のナワ』
H31(2019)| ぺこたんコロコロ お弁当セットを作ろう
*H30(2018)年 は台風のため中止
2.小中学校での水墨画指導
平成20(2009)年より開始したこの取り組みは,日本画研究室の教員,学部生や大学院生が専門家(ゲストティーチャー)としてその指導にあたります。
日本画で用いられる水墨画の技法のさまざまな表現や,墨の濃度を巧みに利用した暈しや滲みの表現ができることなどを体験することで,児童の皆さんが,絵画表現への関心や画材の扱いの工夫などに心を傾ける機会を与える内容となっています。
長年にわたり継続してきたことで指導内容やノウハウが構築され図工や美術の授業のみならず,その他の連携事業としてもワークショッププログラムとして活かされるようになりました。
H21(2009)〜| 京都市立石田小学校 *2011年まで実施
H23(2011)〜| 京都市立境谷小学校(水墨画ワークショップ「白と黒とであざやかに」など)
H24(2012)| 京都市立大枝中学校(美術部),京都市中学校美術クラブ,京都市中学校教員夏期研修
H25(2013)| 京都市立洛央小学校伝統文化クラブ
3.作家との対話鑑賞
本学の学生や卒業生がゲスト・アーティストとして自らの作品を直に見てもらい,作品について生徒の皆さんと対話しながら鑑賞を行うという取組です。生徒の皆さんは間近に作品の実物を鑑賞したり,それを制作した本人に直接質問や意見をぶつけたりできる学習の場となり,若きアーティストたちにとっては,中学生の率直な感想や意見に自らの制作に対する姿勢や思いを振り返る機会となっており,相互的に刺激のある意義深い時間となっています。
- H24(2012)〜| 京都市立衣笠中学校 *2016年まで
- H26(2018)〜| 京都市立上京中学校
4.レジデンスの取組
境谷小レジデンス
京都市立境谷小学校では,余裕教室を活用した滞在制作「境谷小レジデンス」を平成23(2011)年から開始しました。
本学の卒業生や大学院生などがレジデンスでの制作活動を行っています。
左:2014年,川田知史さんの取組の様子 ▶︎
右:2014年,沢水彩香さんの取組の様子(カヌー進水式)▶︎
渉成レジデンス
京都市立下京渉成小学校では,平成27(2015)年から「渉成レジデンス」として活動を開始しています。
本学の卒業生が制作活動を行っています。
制作の様子を日常的に見ることが出来,作家とコミュニケーションを取ったり出来る環境は,児童の皆さんや小学校の先生にとっては,より身近に創作を感じ,興味を持つ機会となり,制作者にとっても,制作中の様子を小学校の皆さんに見てもらうことで得る発見や刺激は,創作のモチベーションに繋がることでしょう。
▲ レジデンスの制作室(クラスルーム)
レジデンスでの取組いろいろ|
子供たちと制作する 「サイアノタイプ」
小学校からの依頼で,レジデンスの作家が図工の授業で指導に携わり,4年生のクラスの児童の皆さんと一緒に取り組んだ課題です。
サイアノタイプ[cyanotype]
「青写真」「日光写真」ともいう,鉄塩の化学反応を利用した写真・複写技法。光の明暗が青色の濃淡として映る。
「詩の看板」の展示
小学校の掲示板に,月替わりで季節に合った詩を選び,絵と一緒に展示しています。
作品展の開催
境谷小学校,下京渉成小学校では,レジデンスで制作した作家の作品やワークショップ等で指導に携わって作成したものを含む児童の皆さんの作品などを見ていただくため,年度末に作品展を開催しています。
境谷小学校作品展|
左から:令和元年度作品展,令和3年度作品展
下京渉成小学校作品展|
左から:令和3年度作品展の様子,平成30年度作品展(作品鑑賞会の様子)
5.その他
水墨画にチャレンジ!
日本画の研究と教育の成果を社会資源と捉え,実技講座や教育現場での交流事業,学生の社会参加等の活動に取り組んでいる日本画研究室の取組の一環として,京都市立下京雅小学校(下京区)の5年生と伝統文化部の児童の皆さんに,日本画研究室教員と日本画専攻の学部生・大学院生が講師となって「水墨画」を描く体験学習を実施しました。
本事業は「京都市下京区区民が主役のまちづくりサポート事業」の助成事業として,平成29(2017)年から令和元(2019)年までの3年間行われました。
これまで小中学校で継続して実施し培われてきた水墨画指導のプログラムは,他の連携事業としても実施されています。
実施の様子 2017年①▶︎ 2017年②▶︎ 2018年▶︎ 2019年▶︎
学生がファシリテーターとなるワークショップ
京都市立上京中学校での新たな取組として,学生がファシリテーター(進行役)となって実施するワークショップを,平成30(2018)年から京都芸術教育コンソーシアム(Art-e Kyoto)の取組のひとつとして実施しました。教員免許取得のための演習授業のひとつとして取り組むので,学生たちは指導プログラムを考案し実践します。中学校美術科の授業を通して指導の心得を学ぶという機会が出来ました。
祥栄の森再生プロジェクト
令和2年度の京都芸術教育研究事業(京都芸術教育コンソーシアム主催)として,京都市立祥栄小学校で,校内に公園のデザインと施工をするという取組をしました。
本学美術学部の学部生が,看板やオブジェなど作成物の下準備や,児童の皆さんの制作指導や補助で携わりました。
本プロジェクトに関連する取組として,
前年の令和元(2019)年度には「公園のデザイン」についてを,
本学デザイン科1回生の授業として取り組みました。▶︎
「キッズゲルニカ」作品の制作指導
平成30(2018)年,連携の取組をしている京都市立境谷小学校から,「キッズ・ゲルニカ」での大型絵画制作について指導助言の依頼を受け,境谷小レジデンスの活動作家や卒業生が指導にあたりました。
キッズゲルニカ京都プロジェクト 「街ミュージアム」
2018年,京都市とパリ市の友情盟約締結(姉妹都市提携)60周年を迎えたことを記念し,キッズゲルニカの絵画活動を行ないました。両都市を中心に世界のキッズゲルニカを集めた「平和の壁画」の展覧会を実施し,パリでのプロジェクトと連携しながら京都の学校・コミュニティから街をミュージアムにすることによって,多くの方々に平和のメッセージを届ける事業となりました。
|参考資料|
「つなぐ・つながる」 横田学 京都市立芸術大学退任記念 京都市立境谷小学校「境谷レジデンス」・京都市立下京渉成小学校「渉成レジデンス」など,小・中学校との連携研究の実践記録
(2002〜2019年度の取組について)