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リサーチャー招聘プロジェクト2018/招聘者のレポートvol.1青木 彬

キャリアデザインセンターでは、2015年から、京都市立芸術大学作品展の会期に合わせ、「リサーチャー招聘プロジェクト」を行っています。

《招聘者のレポートvol.1 青木 彬》

京都市立芸術大学の在学生や卒業生のアーティスト活動を支援するために、国内外の美術関係者を招聘し、卒業制作展の観覧やスタジオヴィジットを行う「京都市立芸術大学リサーチャー招聘プロジェクト」は、今回で4年目を迎えるプログラムである。作品の講評だけでなく、府外の関係者とのネットワークを構築するという点で、リサーチャーにとっても新しいアーティストや作品との出会いが期待できるプログラムだと感じた。

2018年の卒業制作展は、再整備工事中のため例年開催されている京都市美術館での展示はなく、大学内にまとめて展示されていた。当然ながら展示場所の兼ね合いもあり、予定とは異なる展示方法となった作品も見受けられたが、全体を通して鑑賞しやすい展示だったと言える。

卒業制作では筆者が主に活動する東京の美術大学とは異なる傾向も感じられた。例えば工芸科の技術力の高さはそのひとつだろうし、彫刻専攻の作品は映像なども積極的に用いたインスタレーションやパフォーマンスなど、素材の選択やアプローチが自由なものが多かったのも特徴だ。

ユニークな試みとしては、卒業制作展と同時に有志の在学生による展覧会が学内のいくつかの場所で開催されていたことだ。一見すると卒業制作と混同してしまうが、中には目を惹く作品もあり、今後の展開を期待させる。

過去のレポートにもあるように、これまでは作品のプレゼンやスタジオヴィジットでの準備不足が指摘されることもあったようだが、本プログラムも4年目を迎え、訪問先のアーティストの説明も上達してきたと聞く。しかし、タイトなスケジュールの中でも効果的に作品をプレゼンテーションすることに関してはもっと多くの工夫が必要かもしれない。例えばプレゼンテーションの切り口も、何か具体的な項目や作品に絞り込むことで、短い時間でもフィードバックを深めることはできるだろう。

訪問した卒業生のスタジオは蔵や工場跡、町家など様々な場所が活用されていた。なかには同大学のネットワークを通じて世代交代をしながら維持されている共同スタジオもあり、卒業後も充実した制作環境を確保できることは地域性のあるメリットのひとつだと思う。

本プロジェクトを通じてリサーチャー同士でコミュニケーションも行えたことも収穫である。それぞれの普段の活動場所から離れ、作品の鑑賞だけでなくリラックスした雰囲気の中でディスカッションができたことは良い経験となった。

スケジュールの都合上、十分に話ができなかったアーティストがいたことは残念ではあるが、今回の交流がそれぞれの活動にとって新しい気づきへのきっかけになっていれば幸いである。

個人的には今後一緒に活動したいと思えるアーティストとの出会いもあったので、彼らとは継続してコミュニケーションを図っていこうと思っている。

そしてリサーチャーとアーティストが大学の枠をも超えたつながりに発展する機会を創出するためにも、今後のプロジェクトの継続と発展を願っている。

《青木彬 キュレーター》
 1989年東京都生まれ。首都大学東京インダストリアルアートコース卒業。
プロジェクトスクール@3331第1期修了。公共劇場勤務を経て現職。
「黄金町バザール2017」(2017, 横浜市)アシスタントキュレーター。

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