リサーチャー招聘プロジェクト2016/招聘者のレポートvol.1

キャリアデザインセンターでは、2015年から、京都市立芸術大学作品展の会期に合わせ、「リサーチャー招聘プロジェクト」を行っています。

《招聘者のレポートvol.1》 

柴田都枝/ギャラリー勤務 (SCAI THE BATHHOUSE)

数年日本を離れており、久しぶりの京都でもあったので、京都の新しい現在進行形のアートシーンを拝見できる今回のプロジェクトは、私にとっても非常に有意義な機会となりました。

まだ始まって2回目とのことですが、キュレーターやギャラリストなどアートにまつわる様々な業種の方を日本だけでなく海外からも招聘するというのは、作品を見てもらう学生だけでなく、卒業生、また大学にとっても幅広いネットワークの構築にも新たな試みとなる様に思います。

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初日の始まりは、在学中の学生の展示を京都市美術館で拝見しましたが、卒業年次生だけでなく在学中の学生も一緒になって展示をするという形は他の大学ではあまり見ない形態で、まだ技術的な事を習得する為に制作された様な作品達からそこから数年学んでディベロップしていった作品まで幅広い作品を拝見する事ができました。特にさすが京都ということもあり、日常的に素晴らしい工芸品が身の回りにあるせいか、工芸や日本画のクオリティは他の大学とは一線を画すように感じられました。そこから市立芸術大学での修士や博士課程の作品を拝見しましたが、最初に見た展示とはまた大きく異なり、数年学んできた中で、独自の表現を作り上げてきた方、作り上げようとしている方など数年間の経過によって生まれる作家としての成長や作品の展開を感じられました。

地価が高いニューヨークは、美術の大学も大きな制作スペースを維持するのは難しく、学生も卒業したアーティスト達の多くは、高額な制作スタジオを借りて制作を続けて行くことに、大きな問題を抱えます。ブルックリンのアーティストレジデンスのスタジオも約10畳程のスペースでもレントが20万円代〜というのも少なくはありません。スタジオ代、制作費、生活費をペイしながら制作をしていかなければならない若いアーティストは、とてもコンペティティブな環境で切磋琢磨しながら制作をしているので、京都の若いアーティスト達は大きなスタジオを皆で低価格でシェアをしながらアルバイトをして制作活動がしていけていると伺い、制作を続けて行くにはなんと羨ましい環境なのだとも思いましたが、それゆえ学生や若いアーティストが外へ出て行かない傾向が強いとも伺い、その話を聞いてからスタジオを回ってアーティスト達と話を聞いてゆくと、確かにこの居心地の良い環境に慣れてしまっている危機感も感じられました。

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特にそれは作品のプレゼンテーションにおいて顕著に見られ、多くの作家は自身の作品についてきちんとプレゼンテーションができてない状況が見られました。作品のクオリティもそれなりに有り、きちんと作品を作っているように見えるにも関わらず、その作品や自身の制作における姿勢についてはきちんと論理的に話をすることができない人が多くいました。また、海外のキュレーターも視察に来ると言う事でしたが、英語の説明を用意していたのは、2人程だけでした。

欧米では、作品について作家がきちんとプレゼンをするのはもはや必須であり、大学の授業の中でも作品についてのプレゼンテーションを皆の前で行う事は多々あります。勿論理論だけが先行して作品自体が未完成であっても問題ですが、最低限、自身の言葉で作品を言語化する事は不可欠になっています。今後も京都の中だけで作品を制作して終わるのであれば良いのかもしれませんが、作家として生きて行くのであれば、国内外での活躍もきっと視野にあるかと思います。今まで外部の方にむけて作品を見せる、プレゼンテーションを行う、という機会があまりなかったかと思いますが、今回のプロジェクトを経て今後の課題を個々の作家が見つけられれば、それもまた新たなスタートとチャンスになるかと思いますし、このリサーチャー招聘プロジェクトの一つの成果とも言えると思います。

私個人としても、今後展示をしてみたい作家とも出会え、京都の新しいアートシーンや今後の動向も伺うことができ、大変有意義なリサーチとなりました。

今後のリサーチャー招聘プロジェクトの成就を心よりお祈り申し上げます。