井上隆雄「インド・ラダック仏教壁画」資料展—井上隆雄写真資料に基づいたアーカイブの実践研究—<br> 蘇る天空のラダック密教図像

■資料展概要

 

 本資料展は、2014年4月に発足した京都市立芸術大学芸術資源研究センターのプロジェクトの一つ「井上隆雄写真資料に基づいたアーカイブの実践研究」の成果報告展です。
 「井上隆雄写真資料に基づいたアーカイブの実践研究」は、2017年4月より本学出身であり写真家として数々の功績を残された井上隆雄の膨大な写真関連資料をお預かりし、調査研究を進めています。その中にインド・ラダック地方の写真資料があり、外国人の入域制限が解かれた1974年頃の仏教壁画群に関する1,000点を超えるポジ類、多数の資料類があります。井上隆雄の写真資料は、当時の状態を鮮明に記録しており、また壁画の寸法や撮影方法などの取材の記録もあります。1978年に駸々堂出版より井上隆雄『チベット密教壁画』が出版されていますが、その資料的価値は高く、横尾忠則による極彩色の装丁はブックデザインとしても優れています。
 そこでプロジェクト「井上隆雄写真資料に基づいたアーカイブの実践研究」では、井上隆雄全資料の調査・分類を進め目録を作成しつつ、2018年11月よりアーカイヴ・学術(仏教美術)・実技(日本画)の研究者による共同研究「井上隆雄写真資料のアーカイヴ構築に基づいたラダック仏教壁画のグラフィック的観点からの表現技法研究」を開始しました。この共同研究では、過去の重要な遺産を利活用可能な資料体へとシフトさせるアーカイヴという手法を用いながら、ラダックの仏教壁画の表現技法を分析、模写を行うことで、アジアにおける仏教美術の中での位置づけを再検証し、また井上隆雄『チベット密教壁画』の情報をさらに更新していきたいと考えています。
 この共同研究の立ち上げに際し、2019年2月に「井上隆雄「インド・ラダック仏教壁画」写真資料展」を開催しました。本展ではそれに続く2回目の資料展となります。これまでに井上隆雄が残したインド・ラダック仏教壁画に関するポジフィルムを15の寺院別に分類し、デジタル化を進めてきました。また高解像度のデジタルデータより、アルチ寺の三層堂一階の「般若波羅蜜仏母」壁画に注目し、模写制作を行いました。本資料展ではこれらアーカイヴ活動と図像研究の成果を井上隆雄の活動の軌跡とともに公開します。
 ラダックは今、観光化や雨量の急増などの環境の変化によって、寺院壁画は劣化の問題を抱えていますが、井上隆雄の写真資料は、1974年直後の状態を鮮やかに記録しています。アーカイヴは多大な時間と労力を要しますが、このように蓄積されていた重要な資料体を未来のための創造へと蘇らせ継承させることが可能です。本展を通して、井上隆雄という一人の写真家の軌跡と残された資料の未来、そしてアーカイヴズを活用した資料研究の新たな可能性について考える場となれば幸いです。

■会期・場所

・2021年3月23日(火)-28日(日) 11:00-17:00
・京都市立芸術大学小ギャラリー

■入場料

・無料

■アクセス

〒610-1197 京都市西京区大枝沓掛町13-6 京都市立芸術大学小ギャラリー(大学会館内)
・桂駅東口:京阪京都交通バス、芸大前(約20分)で下車。バス停から徒歩ですぐ。
詳しくは、京都市立芸術大学ホームページをご確認ください。

http://www.kcua.ac.jp/access/
※公共交通機関をご利用ください。

■お問い合わせ

・山下晃平:k_yamashita@pt.kcua.ac.jp
・京都市立芸術大学芸術資源研究センター事務局
・〒610-1197 京都市西京区大枝沓掛町13-6
・TEL/FAX: 075-334-2217
・メール: arc@kcua.ac.jp
(主催)
  共同研究「井上隆雄写真資料のアーカイヴ構築に基づいたラダック仏教壁画のグラフィック的観点からの表現技法研究」
  山下晃平(京都市立芸術大学美術学部非常勤講師 「井上隆雄写真資料に基づいたアーカイブの実践研究」プロジェクトリーダー)
  加須屋誠(京都市立芸術大学芸術資源研究センター・客員研究員)
  正垣雅子(京都市立芸術大学・日本画専攻准教授)
  岡田真輝(京都市立芸術大学大学院・芸術学専攻修了生)
  林宏枝(京都市立芸術大学・ビジュアルデザイン専攻卒業生)
(協力)
  京都市立芸術大学芸術資源研究センター
(助成)
  DNP文化振興財団グラフィック文化に関する学術研究助成