2025年度 芸術資源研究センター公開講座 「芸術と人権」開催のお知らせ


本連続講座は、移転を契機に本学キャンパスに内包された世界人権問題研究センターと芸術資源研究センターが協働し「芸術と人権」の関わりを積極的に見つめ直すことを目的に始まりました。第1回目の講座は2025年1月に朴実(パク・シル)氏を講師に迎え「共に生きる社会を求めて~東九条マダンに託す願い~」と題して行われました。今年度は、2つの講座と1つの関連プログラムを開催します。
チラシpdf

 

公開講座①「やわらかい社会のつくり方」
小山田徹学長は焚き火場や屋台などのアートプロジェクトを通して、多様な人々が集う場づくりを実践してきました。2025年4月学長就任後も、ウィークエンドカフェや地域と大学が一丸となって取り組む「たがやし」プロジェクトなど、芸術を入り口とした多様性を受け入れるやわらかいコミュニティのあり方について実践を続けています。小山田学長の数々の実践をもとに、やわらかい社会のつくり方についてお聞きします。

日時 | 2025年11月4日(火)17:30–19:00
会場 | 京都市立芸術大学 C棟1階 講義室1
講師 | 小山田徹(芸術家、京都市立芸術大学学長)
聞き手 | 佐藤知久(京都市立芸術大学芸術資源研究センター教授)

講師プロフィール:
小山田 徹 Toru KOYAMADA
1961年鹿児島県生まれ。1981年に京都市立芸術大学入学、日本画を学ぶ。在学中に友人たちとパフォーマンスグループdumb typeを立ち上げ、国内外での公演に数多く招かれる。活動の中で、メンバーのHIV感染とエイズ発症を機に、さまざまな社会活動と表現のありかたを試すことになり、1998年頃から、共有空間の獲得をテーマに活動を行う。焚き火場などさまざまな人々が集い、交流する空間や時間を開発し、社会実装を試みている。2010年から本学の彫刻の専任教員となる。2021年10月から美術学部長、2025年4月から現職。

 

公開講座②「土地の語りに耳をすます」
アーティストが地域をリサーチしていく中で、土地の古い層に眠るような物語に出会うことがあります。「崇仁すくすくセンター(挿し木プロジェクト)」の活動をきっかけに、山本麻紀子さんは崇仁地域で踊り念仏を広めた一遍上人の人物像についてリサーチを始めました。一方、中野裕介さんは、説経節から能まであらゆる古典芸能で変奏される「俊徳丸/弱法師」の語り物にインスピレーションを受け、独自の表現世界を広げています。アーティストたちを惹きつける地霊(ゲニウス・ロキ)の語りから、時代ごとに周縁で力強く生きてきた人々の声に耳を傾けてみます。

日時 | 2025年11月19日(水)17:30–19:00
会場 | 京都市立芸術大学 C棟1階 講義室1
講師 | 山本麻紀子(アーティスト、崇仁すくすくセンター実行委員会委員長)
   中野裕介/パラモデル(アーティスト、京都精華大学芸術学部教授)

講師プロフィール:
山本麻紀子 Makiko YAMAMOTO
1979年京都市生まれ。2005年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻構想設計修了。ある特定の場所について観察や考察を続け、その場に関わる人たちとのコミュニケーションの在り方を考えるプロジェクトを行う。その一連の過程を、絵、写真、映像、ドローイング、染め、刺繍など様々な形で作品制作を行う。2012年~巨人伝説を軸にしたプロジェクトをライフワークとして継続中。2016年に京都の東九条で「植物」の世界に出会い、以降「植物」に着目した活動を展開している。

撮影:内堀義之

中野裕介/パラモデル Yusuke NAKANO / PARAMODEL
1976年東大阪生まれ。2002年京都市立芸術大学大学院 絵画専攻(日本画)修了。03年同大学の林泰彦とユニット「パラモデル」結成。二人のメタフィジカルな「模型遊び」をテーマに多様な形式の作品を発表。11~17年の図書館勤務を経た現在のソロ活動では、描画やテキスト・空間表現を軸に、文学・哲学・マンガ・建築・郷土文化・古典芸能など、古今の書物を横断し、題材とする創作を続ける。京都精華大学芸術学部教授。

 

〈関連プログラム〉「Weekend Café+崇仁すくすくセンター 断幕ワークショップ」
二つの活動を学内で同時開催し、〈場〉と〈事〉を共有していく実践によって「芸術×人権」の関係を考えるきっかけにします。二つの活動と合わせて、「たがやしプロジェクト」で崇仁児童館が育成中の野菜プランターもやってきます!
⚫︎「Weekend Café(ウィークエンドカフェ)」:多様な人々がゆるやかに集うことのできる共有空間が学内に出現します。
⚫︎崇仁すくすくセンター「大きな作品シリーズ」:開発にともない地域住民のつながりの希薄化が課題となっている崇仁地域において、制作しながら居場所や拠り所となる場や機会を創出します。

日時 | 2025年11月26日(水)13:00–15:00
会場 | @KCUA 南側の半屋外
講師 | 小山田徹、山本麻紀子
作業内容:布製の横断幕(110cm×10m)に針と糸を使ってパーツを縫い付けます。見学(おしゃべり)のみの参加も大歓迎。

 


 

場内誘導や座席等について特別な配慮を必要とされる方は、各講座の開催日の3日前までに芸術資源研究センターまで御相談ください。御希望に沿うよう可能な限り対応いたします。

京都市立芸術大学移転記念事業
主催 | 京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
共催 | 公益財団法人世界人権問題研究センター
助成 | 公益財団法人小笠原敏晶記念財団

ワークショップのお知らせ

「音と身体の記譜研究」プロジェクト企画 
ワークショップ企画「ヴィオラ・ダ・ガンバ講習会」

「記憶装置としての楽器」
本ワークショップ(講習会)は、「記憶装置としての楽器」(高橋悠治, 2010)というコンセプトにもとづいて行うものです。
楽器は、それが使われていた時代の文化や社会、そしてその中での音楽の習慣を反映しています。たとえば楽器の音色や音質は、その楽器が演奏された空間と切り離すことはできません。弦の数や弓の持ち方は、それを操る身体(からだ)やそこからうまれる音楽と強く、深く結びついています。そして、そうした空間や身体からうみだされた音楽を記録し、新たに創造する術(すべ)としての記譜法、その時代の音をいまの時代に再創造・再想像するためのツールです。
今回のワークショップでは、スペインの作曲家、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のディエゴ・オルティス(ca. 1510-ca. 1570)の残した数々の「レセルカーダ」のオリジナル譜を教材として用いながら、ヴィオラ・ダ・ガンバが鳴り響いた時代の音と身体の結びつきを想像してみようということで企画したものです。
「音と身体の記譜研究」プロジェクト・リーダー 竹内直


「ヴィオラ・ダ・ガンバ講習会」
講 師:頼田麗(ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者)
日 時:2024年8月20日(火)/21日(水)10:00-17:00
会 場:京都市立芸術大学 笠原記念アンサンブルホール
受講生:弦楽器を専門的に習っている高校生・大学生:最大12名まで/要予約
▶︎受講生申込用フォーム
一般参加者(聴講):定員50名/要予約
▶︎一般参加申込用フォーム
参加料:受講者・一般参加者ともに無料
企画・主催:京都市立芸術大学芸術資源研究センター「音と身体の記譜研究」プロジェクト

講師プロフィール
頼田麗(ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者)
相愛大学音楽学部卒業。ヴィオラ・ダ・ガンバを平尾雅子氏に師事。ルガーノ・コンセルバトーリオにてV. ギエルミ氏に師事。バーゼル・スコラ・カントールムにてP. パンドルフォ氏のもとで研鑚を積みディプロムを取得。2007年ドイツの第4回テレマンコンクールにて「ベーレンライター賞」受賞。2008年兵庫県知事グランプリ賞を受賞。「プリンチピ・ヴェネツィアーニ」「アンサンブル・ポエジア・アモローザ」メンバー。相愛大学音楽学部非常勤講師。

【企画アドヴァイザー・協力】 
三島郁(音楽学/相愛大学教授、本学非常勤講師、芸術資源研究センター共同研究員)

【企画コーディネーター】
竹内直(芸術資源研究センター「音と身体の記譜研究」プロジェクト・リーダー)

▶︎チラシ

「音と身体の記譜研究」ワークショップ

「リュート・タブラチュアの記譜法を考える——鳴ると記すのあわい」


日 時:2022年3月20日(日)開始:13:00/(開場)12:30)
◇ワークショップ:13:00-15:00
◇トーク・セッション:15:15-16:00
会 場:京都市立芸術大学大学会館ホール(京都市西京区大枝沓掛町13-6)ご来場は公共の交通機関をご利用ください。
定 員:50名(一般)一般申し込みはこちらのフォームより申し込みください。(先着順)
参加料:無料・要予約(筆記用具をご持参ください)
主 催:京都市立芸術大学
企 画:京都市立芸術大学芸術資源研究センター 「音と身体の記譜研究」プロジェクト
チラシ(PDF)
▶︎新型コロナウイルス感染防止対策のため,当日受付で検温等に御協力をお願いします。


【概要】
楽譜には、音楽を演奏するにあたっての様々な情報が書き込まれている。この楽譜を書く方法のことを記譜法(ノーテーション)という。
楽譜に書き込まれた情報は演奏をする際に必要なことがらだが、必要なことがらの定義は、地域や文化によって、また同じ地域でも時代によって変わる。
いっけんすると慣習的な読み方で読めるようでも、特定の地域や時代特有の読み方が必要なこともある。また楽譜に書かれていない情報を奏者が読み出すことが必要なことも、奏者によって引き出される情報が異なる場合もある。

ルネサンス期のリュート・タブラチュア(奏法譜)は、文章の句読点に相当する休符が書かれていない。そのため、この時代特有の多声的(ポリフォニック)な音の響き(テクスチュア)も、タブラチュアの表面からすぐには読み取れない。ただ、楽譜に書かれていないことがらを読み出すための読み筋はあり、書かれている情報の背後には、隠されたテクスチュアがある。

記譜法とは、端的に言えば、実際に演奏される音を書き記すための行為であるわけだが、記すという行為と現実に鳴る音とのあいだは、決して直線で結ばれてはいない。
本ワークショップでは、ルネサンス期のリュート・タブラチュアの記譜法を通して、鳴る音と記す行為のあいだを考える。(文:竹内直)

ワークショップ講師:笠原雅仁(古楽器奏者、声楽家)
トークセッション・ゲスト:岡田加津子(作曲家、本学教授)、三島郁(音楽学、本学非常勤講師)


【講師プロフィール】
笠原雅仁(声楽家、古楽器奏者)
武蔵野音楽大学声楽科にて宮本昭太氏に師事。同大学卒業後は有村祐輔氏のもとで声楽、古典音楽理論を学んだ後、1998年に渡英。ロンドンの英国王立音楽大学、大学院古楽科にてN.ロジャース、S.ロバーツの各氏に声楽を、J.リンドベルイ氏にリュートを師事。2002年より仏国のパリ市高等音楽院古楽科にてコルネットをJ.テュベリ氏に師事。2007年にディプロマを取得し、卒業。アンサンブル「エリマ」、「カンパニー・オートルムズュール」など、フランス内外の主要なバロックオーケストラやアンサンブル等と共演、またCDやラジオ・フランス、BBCの為の録音に参加する等、特に初期バロック音楽の専門家として国内外で活躍中。また、パルコ劇場主催の舞台劇「メアリー・ステュアート」にはリュート奏者として出演するなど、様々な分野での活動を拡げている。「アンサンブル・プリンチピ・ヴェネツィアーニ」主宰。

【トークセッション・ゲスト プロフィール】
岡田加津子(作曲家、本学教授)
神戸生まれ。東京藝術大学作曲科卒業、同大学院音楽研究科修了。2003年バロックザール賞、2016年藤堂音楽賞受賞。作曲活動の一方で、楽譜を使わないで音楽する「リズミック・パフォーマンス」のワークショップを全国的に展開。また近年は、バシェの音響彫刻の保存と、音響彫刻を用いた新しい創造活動、教育活動に情熱を注ぐ。京都市立芸術大学教授。京都在住。

三島郁(音楽学、本学非常勤講師)
東京学芸大学大学院修士課程修了後、ケルン大学に留学、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門分野は西洋バロック期から19世紀の鍵盤楽器音楽の演奏・作曲論、数字付きバス文化研究。チェンバロ、通奏低音を亀谷喜久子、岩渕恵美子、C. チェラジの各氏に師事。国内外でバロック期の音楽や音楽修辞学などのレクチャーやコンサートを企画・開催。共著に『音楽文化学のすすめ:いまここにある音楽を理解するために』(2007年、ナカニシヤ出版)、『音楽を考える人のための基本文献34』(2017年、アルテス・パブリッシング)他がある。京都市立芸術大学、同志社女子大学、大阪音楽大学、甲南女子大学、大阪教育大学、各非常勤講師、京都市立芸術大学芸術資源研究センター共同研究員。

【トークセッション司会】:滝奈々子(芸術資源研究センター非常勤研究員)
【コーディネーター・進行】:竹内直(芸術資源研究センター非常勤研究員、プロジェクト・リーダー)

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