発行のお知らせ
芸術資源研究センター紀要
COMPOSTvol.01
この度,紀要『COMPOST』vol.01を発行いたしました。
ウェブ版はこちらからご覧ください。
『COMPOST』の刊行に
いよいよと、というべきか、やっと、というべきか、京都市立芸術大学芸術資源研究センターから紀要『COMPOST』が発刊される運びになりました。めでたいことです。2014年の芸術資源研究センター(以下〈芸資研〉)のオープンから数えて6年にしてようやくの発行、ということになります。センターの最初の構想案を書いたのがその5年前の2009年のことなので、そこから数えると、10年以上が経過してしまいました。『COMPOST』は芸資研の紀要という位置づけなのですが、この少々変わったネーミングについては説明が必要かもしれません。
「アーカイブ」(正確にはアーカイヴズarchivesですが、ここでは「アーカイブ」と表記しています)の概念を説明する時に、「美術館は壁、図書館は書架、アーカイブはキャビネット」というような比喩が使われたりするのですが、「COMPOST=コンポスト」は、私たちの考えるもうひとつの動的なアーカイブ観を表しています。
コンポストとは、一般的に、生ゴミや排泄物などの有機物を微生物の力を借りて分解、堆肥化すること、またはその容れもののことですが、ゴミ箱とは違って、そこには、廃棄、保存・蓄積と同時に、変化と再生のイメージがあります。なぜ廃棄が保存へと移り変わるのかといえば、そこに変化・再生のプロセスがあるからです。本来の「アーカイヴズ」では対象とされる行政文章について、恣意的な書き換えや紛失を避けるべく、変化の少ない堅牢な保存を旨とするのですが、日々変化していく創造の現場である芸術大学のアーカイブには、その変化のプロセスがあらかじめ組み込まれているはずではないか?と考えてみましょう。そのような芸術としてのアーカイブひとつが「記譜法」です。楽譜は創造されたあたらしい音を記述して、時間を超えて保存継承する技法なのですが、同時に楽譜は、時間を超えて様々な読みと変化を許容し、あたらしく生き生きとした演奏=創造を生み出す可能性に開かれ、創造的に読まれるための開かれた記述(ノート)でもあります。私たちの考える「芸術大学におけるアーカイブ」というのは、例えばそんなイメージで「COMPOST」というメーミングにはそんな意図も込められているのです、実は。
まずは最初の一巻です。2020年をスタートに年1回の発行で10年を当面の目標にしていきます。できる限り息の長い存在でありますように、温かく見守っていただければ幸いです。
石原友明
(COMPOST vol.01 巻頭言より)