第10回アーカイブ研究会のお知らせ

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第10回アーカイブ研究会

映像民族誌とアーカイヴの可能性
記録映画『スカラ=ニスカラ ~バリの音と陶酔の共鳴~』
上映+レクチャー

第10回は美術家、映像・音響作家、映像人類学研究者である春日聡氏をお迎えし,記録映画『スカラ=ニスカラ ~バリの音と陶酔の共鳴~』の上映会とレクチャーを行います。

〈概要〉
 映像民族誌とは映像で描く民族誌で、ほかの映像分野と同様に制作には膨大な素材(ストック・
フッテージ)が必要となる。
 映像・音響は祭礼や音楽やダンスなど一回性の事象を時間軸と伴に克明に記録する代わりに、文字
と違い、後から書き直すことができない。そのため記録者は事象の生起する場の流れを読み取り、臨
機応変に対応しなければならず、撮影・録音の技量が問われる。そうして記録した素材は価値を持つ
一方、さまざまな失敗やノイズが含まれる可能性がある。さらに長期保存や共有に関する問題が待ち
構えている。これらの問題はメディアのアナログ/デジタルに関わらずつきまとう。
 また記録者の存在によって事象の状況が変化する可能性を含むことに留意しておきたい。その場を
共有する記録者も刻々と変化する事象に影響を与えうる存在なのである。
 このようなことを踏まえ、ここでは、足かけ16年超のフィールドワークで撮影・録音した調査
アーカイヴを基に制作した記録映画を参照し、バリ島特有の事情も交えながら、映像民族誌における
アーカイヴとはどのような意味を持つのか、また映像作品制作によりよく活用できる創造的なアーカ
イヴとはどういうものなのか、映像民族誌とアーカイヴの可能性を考える。

  • 日時:平成27年12月8日(火曜日)午後5時から7時まで(上映60分+レクチャー)
  • 会場:京都市立芸術大学 中央棟 L1
  • 参加無料(事前申込み不要)
  • チラシ


■ 講師プロフィール
春日 聡
(かすが・あきら)
 美術家、映像・音響作家、映像人類学研究者。博士(美術)。東京藝術大学美術研究科先端芸術表
現領域博士後期課程修了。
 専門は映像人類学、音楽人類学、民俗芸能研究、映像・音響メディア研究。バリ島、日本列島にお
ける祭祀儀礼や芸能などの無形文化と聖地に関する民族誌研究。地域研究における映像・音響メディ
アの活用。
 1990年より日本列島各地、バリ島、ネパールなどでフィールド・ワークを続ける。祭祀儀礼や祝
祭空間における「可視/不可視」や「超越性」をテーマに民族誌映像の可能性を追求。
 バリ島の祭祀儀礼における多様なトランス・ダンスと、宇宙観における五大元素をモチーフにした
サウンド・スケープでつづる記録映画『Sekala Niskala スカラ=ニスカラ ―バリの音と陶酔の共鳴
―』を発表。「ふじのくに⇄せかい演劇祭2012」(SPAC静岡舞台芸術センター)、SARAVAH東京
(2012、2013年)、日本映像民俗学の会岐阜大会、東洋音楽学会西日本支部例会(2015年)など
各地で上映。
 奈良県立万葉文化館委託共同研究『日本列島の古代における音の超越性 ~祭祀芸能の比較研究と
音楽・映像による実践的研究の視座から~』研究成果発表シンポジウム「音と映像で体感する超越性
の古層」(2015年)において、パネル発表とともに映像・音響による演奏を行う。
 これまで音響彫刻作品、メディア・インスタレーション作品、ダンス作品の音楽、映像・音響作品
を多数発表。またライヴ・エレクトロニクスを中心とする演奏を自作のインスタレーション空間で行
うほか、ギャラリー、書店、神社、アート・イベントなどで発表。

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