富本憲吉アーカイブ・辻本勇コレクション

プロジェクトリーダー:森野彰人(美術学部准教授)
前崎信也(芸術資源研究センター非常勤研究員)

 富本憲吉(1886–1963)は,人間国宝,文化勲章受章者であり,本学の前身である京都市立美術大学で教授,学長を務め,陶磁器専攻科を創設した近代を代表する陶芸家である。富本の陶磁器に対する造形的思考は現代陶芸に一貫するものであり,その影響を受けた陶磁器関係者は多岐に渡る。2012年度末に富本憲吉記念館所蔵の資料558点の寄贈を受けたことに引き続き,2014年4月に資料の追加寄贈を受けた。
 寄贈資料にはその思考の原点であるバーナード・リーチとの交換書簡や渡英時の書簡やその他の書簡,書籍などがある。その資料から富本の造形的思考の源泉を明らかにし,近代・現代工芸における西洋的造形思想と日本的工芸の関係性を探求することが本研究の目的である。
 今年度は,2014年度に立命館大学アート・リサーチセンター 日本文化資源デジタル・アーカイブ研究拠点において「富本憲吉・辻本勇アーカイブ」研究の主たる資料であるバーナード・リーチとの往復書簡「富本憲吉とバーナード・リーチ往復書簡の研究 京都市立芸術大学所蔵資料を中心に」として共同研究に採択され翻刻作業を行ない,制作したデータベースを立命館大学アート・リサーチセンターが管理運営している「近現代陶磁器資料データベース」にて公開した。このことにより,多くの研究者がこの資料を用い,近現代陶磁器研究に活用されることが期待できる。昨年度,翻刻され英文としては読みやすくなったが,今年度予定していた翻訳作業が本資料を翻訳出来る翻訳者の確保ができず,未完となった。
 データベースのアドレスはhttp://www.dh-jac.net/db1/mjci/about/index.phpである。
 また,富本憲吉が京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)の着任に際し,教科書として執筆した未定稿の著書である『わが陶器造り』の出版の仕上げを行なった。『わが陶器造り』では随所に富本の作陶観,作品観である因襲にとらわれず陶芸の本質を追求し,きわめて知性的な芸術論を持って,オリジナリティーある陶芸を創造することがいかに大切かが,やきものの歴史,技法を通して語られている。本著は,富本憲吉という陶芸家としてのあり方の軌跡だけではなく,日本の陶芸,工芸のあり方に対する提言と言うべき内容である。それは,教科書の範疇を凌駕した内容となっており,近代・現代工芸における西洋的造形思想と日本的工芸の関係性の探求において,非常に重要な著書である。本書は2016年4月には里文出版より刊行され書店に並ぶ予定である。
 データベース制作や出版の他,調査としてリーチとの往復書簡に関しての共同研究者である鈴木禎宏氏と,晩年の富本作品において重要な技術となる上絵を学んだ九谷の北出塔次郎窯の調査を行なった。富本は1936年5月から10月まで,およそ半年間,色絵磁器の研究と制作を行なった。北出塔次郎の親族への聞き取り及び,周辺の九谷焼と富本の関係を調査した。
 最後に私の在学中の先生でもあり,本学の陶磁器専攻1期生で富本の薫陶を受け,晩年の富本の制作を手伝い,間近で富本と接しておられた小山喜平先生への聞き取りを来年度予定していた。それに先立ち8月に訪ね,富本先生の思い出話を少し聞かせていただいたが,その数週間後,永眠された。心よりご冥福をお祈りいたします。

平成26年度
「富本憲吉―バーナード・リーチ往復書簡」のデータ・ベース

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  • 1. わが陶器造り
  • 2. 富本先生誕生日
  • 3. 富本憲吉と近藤悠三1956年

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