戦後日本美術のオーラル・ヒストリー

プロジェクト・リーダー:加治屋 健司(芸術資源研究センター特別招聘研究員)
林田 新(芸術資源研究センター非常勤研究員)

 本研究の目的は,オーラル・ヒストリーの手法を用いて,戦後日本美術を担ってきた美術関係者,中でも本学ゆかりの美術家や,京都を舞台に活動してきた美術家,美術批評家,美術館学芸員に聞き取り調査を行ない,戦後日本美術に関する研究の基礎資料をつくることである。
 戦後日本美術は,具体美術協会などの一部の例外を除いて,東京で活躍した美術家を中心に議論されてきた。それは,戦後日本美術の言説が,東京の美術批評家が中心となって,東京で発行される美術雑誌において形成されてきたことに加えて,関西よりも数が多い関東の美術館で開かれる展覧会を通して,その言説が再生産されてきたからである。本研究は,戦後日本美術に関する従来の言説が十分に扱えなかった関西の戦後美術の動向を主な対象とし,とりわけ作家の声を中心に集めるものである。
 関西の戦後美術の動向に関する証言を得るために,本学で教員を務めた名誉教授に話を聞く。先述のように,本学は関西で活躍する美術家を数多く輩出しており,本学の名誉教授に話を聞くことで,関西の美術状況の多くを知ることができるからである。聞き取り調査では,本人の制作はもとより,本学の美術教育や卒業生などについても話を聞くことで,大学教育という視点から,関西の戦後美術に関する言説の構築を試みる。
 1年目は,油画専攻の森本岩雄先生,版画専攻の舞原克典先生,彫刻専攻の山﨑脩先生,福嶋敬恭先生にお話を伺った。その際,各専攻で現在教員を務めるサイモン・フィッツジェラルド教授,出原司教授,中原浩大教授,そして,国立国際美術館学芸員の安來正博氏,卒業生の藤原信氏の協力を得た。2年目は,2015年に京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで二人展「岡崎和郎/大西伸明 Born Twice」を開催した岡崎和郎先生と本学の版画専攻の大西伸明准教授にそれぞれお話を伺った。岡崎先生は主に東京で活躍されている作家であるが,従
来の美術言説が十分に捉えきれなかった重要な活動をされてきたため,お話を伺う必要があると考えた。大西准教授は,これまでお話しいただいた作家と比べるとずっと若いが,中堅の世代の作家にお話を伺うことで,関西の近年の動向について,別の視点が得られるのではないかと考えた。その際,東京国立近代美術館美術課長の蔵屋美香氏,大阪電気通信大学の原久子氏の協力を得た。3年目となる今年度は,これまで行なってきたオーラル・ヒストリーの公開に向けて,書き起こしを精査した。
 録音・録画したインタヴューは,書き起こしたうえで,芸資研のウェブサイトで公開し,広く一般の利用に供することにする。本研究によってつくられる基礎資料は,特定の研究者だけが利用できるものにはせず,関心を持つ者全てがアクセスできるようにする。そのことによって,戦後日本美術のオーラル・ヒストリーが,関西の戦後美術に関する言説を活性化することを目指している。

平成26年度
平成27年度

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  • 1 森本岩雄氏への聞き取り
  • 2 山崎脩氏への聞き取り
  • 3 舞原克典氏への聞き取り

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