音と身体の記譜

プロジェクトリーダー:柿沼敏江(音楽学部教授)
担当(協力者を含む):滝奈々子、竹内直、三島郁(協力者)

 「記譜法(ノーテーション)」は,芸術資源研究センター設立の準備段階から,美術と音楽,伝統音楽の3つの領域を媒介する共通のテーマとして設定されてきた。異なる分野の人間が共同で行う研究のなかから,新しい発想や研究の視点を得ることを企図している。
「記譜法研究会」(プロジェクトリーダー:柿沼敏江)はこれまで「西洋音楽の記譜研究―書かれたものと響くもの」をテーマとして活動を行ってきた。2015年度にはレクチャー・コンサート「バロック時代の音楽と舞踏~記譜を通して見る華麗なる時空間」を行い,空間性と時間性,身体性が複合的に絡み合ったフランスのバロック・ダンスの特殊な記譜法とバロック音楽独自の記譜法について,ゲストを招いて研究成果を発表した。2016年度には,スタンダードな記譜法によらない音楽作品によるコンサート「五線譜に書けない音の世界~声明からケージ,フルクサスまで~」を開催し(2017年2月26日,京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA),作曲家で芸術資源研究センター特別招聘研究員の塩見允枝子氏への委嘱新作《カシオペアからの黙示》をはじめ,ジョン・ケージ,一柳慧の実験的な図形的作品と声明の記譜を並べ,比較考察する試みを行った。また塩見允枝子氏から芸資研に寄贈された氏の楽譜やヴィジュアルな作品についても,展示を行った。こうして「記譜」という問題を音楽のみならず,美術,伝統音楽,ダンスを含めて領域横断的に考える場を作ることができたと考えている。
こうした活動実績をもとに,2017年度からは「音と身体の記譜」をテーマとして研究活動を行っていきたい。
この新しい企画では,「書かれたもの(スクリプト)」を手がかりに,人類学者のフィールド・ノートや民謡の採譜,音声の録音記録,身振りや舞踊の記譜など,領域を越えて広い視野から「記譜と身体」の問題を捉え直し,考察していきたい。様々な分野(現代美術,舞踊,伝統芸能)の専門家をゲストとして招いて研究会を行い,最終的に記譜に関する展示を行うとともに,シンポジウムを開催する予定である。「書くということは,ことばを空間にとどめることだ」と言ったのはワルター・オングであるが,書き記す行為はことばを空間化,視覚化し,言語の可能性を広めるとともに,声の原初的な力を弱める側面も持っていた。記譜に関わる多様な面を洗い出しながら,書き,描き,記すことの意味を考え,音と身体の記譜に関する考察をさらに深めていきたい。

平成26年度
平成27年度

 


・「五線譜に書けない音の世界~声明からケージ,フルクサスまで~」

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