第27回アーカイブ研究会のお知らせ


第27回アーカイブ研究会

シリーズ:トラウマとアーカイブvol.3
このまえのドクメンタって結局なんだったのか?!


    シリーズ第三回目は,石谷治寛氏にお話いただきます。

  • 日時:2019年12月17日(火)17:30−
  • 場所:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
  • 参加無料(事前申込不要)

チラシ


ドクメンタとは5年毎にドイツのカッセルという街で行われている国際芸術展です。今回のアーカイブ研究会では,2017年のドクメンタとは何だったのかをあらためて振り返ります。ドクメンタは,第2次世界大戦中に国が規範にそぐわない近代美術を禁止したことへの反省から,戦後に開始された現代美術展でした。そうした経緯から,表現の自由を象徴する展覧会として,国際的に注目され続けています。2017年に行われた14回目のドクメンタでは,ギリシアのアテネとも共催で,両都市間の連携がなされました。その背景には,ギリシアの文化や思考法が西洋文明にとって重要な規範になってきただけでなく,現在の欧州においても,南と北の経済格差や,地中海を超えて流入する移民など,さまざまな欧州の歴史と現在を照らし出すと考えられたからでした。ドイツーギリシア間とそこから広がる重層的な歴史を主題にした展示物の中には,美術作品や音楽だけでなく,アーカイブ資料の提示も含まれ,パフォーマンスや議論を通して,トラウマ記憶を再演する試みもみられました。本研究会では,さまざまな主題に分けて,全体像を読み解きながら,終了後の論争もふまえて,ドクメンタ14をいま振り返ります。(石谷治寛)

■講師プロフィール
石谷治寛|Ishitani Haruhiro
芸術論・美術史。京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員,非常勤講師。十九世紀フランス美術と視覚文化に関する研究から,外傷記憶の再演を扱う現代アート,メディア芸術の保存とアーカイブなどを考察。京都国際芸術祭パラソフィア2015や,岡山芸術交流2019に関する論考もウェブ媒体に発表している。著書に『幻視とレアリスム―クールベからピサロへ フランス絵画の再考』(人文書院)。共同企画に『MAMリサーチ006:クロニクル京都−ダイアモンズ・アー・フォーエバー,アートスケープ,そして私は誰かと踊る』(森美術館)など。


シリーズ:トラウマとアーカイブについて
芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。
公的な歴史や大きな物語からこぼれおち,それゆえ忘れ去られていく出来事とその記憶については,その記憶を聞きとり,引きうけ,わがこととして受けつぐ試みが,近年多くの場面で行われ,論じられています。
今回考えてみたいのは,忘れ去られつつあり,かつ忘れてはならないと思われるにも関わらず,差別や暴力の経験,負の記憶に結びついているために,あるいは今それについて語ることが新たな暴力や差別を引き起こしかねないために,思い出すことや語ること自体が現在でも困難であるような出来事とその記憶―トラウマ的な記憶―についてです。
たとえば,差別の経験や,国と国のあいまにある中間的な場所の記憶などについては,それについて語る・想起する・言及すること自体が,当事者にとってはもちろん,アーティストや研究者にとってもむずかしいという現状があります。しかしながらだからこそ,そうしたことがらについて語り,聞き,話すための場所が必要だとも言えます。
では実際に,こうした経験と記憶については,どのような試みやアプローチが可能でしょうか。本シリーズでは,記憶をアーカイブする装置としての芸術やフィクションの可能性に注目してみます。集団的というよりも個的な記憶,言語的・歴史的史料というよりも,フィクションや視覚的資料,そしてさまざまな「モノ」などに焦点をあてるこうした実践が,いまどのように可能なのか。異なるフィールドを対象に,忘れられるべきではない経験と記憶についての研究や表現活動を実践してこられた方たちをお迎えし,語ること,想起すること,聞きとり・引きうけ・受けつぐことの可能性とその具体案について,考えてみたいと思います。(芸術資源研究センター教授 佐藤知久)


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