レクチャーコンサート「バロック時代の音楽と舞踏〜記譜を通して見る華麗なる時空間」の報告

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 10月18日,京都市立京都堀川音楽高等学校ホールにおいて,レクチャーコンサート「バロック時代の音楽と舞踏〜記譜を通して見る華麗な時空間」が実施された。この公演は,芸術資源研究センターの重点研究の一つである「記譜プロジェクト」の成果発表の場でもあった。時間性にかかわる音楽の記譜と,空間と時間を立体的に共存させる舞踏譜とを接合させることにより,「“記譜(ノーテーション)”とは何か」,さらには「“記す”という行為は何を意味するのか」についてあらためて考察することを公演の主たる目的とし,その題材として,ルイ14世の統治下において舞踏と音楽が密接に関わっていた,フランス17世紀および18世紀の記譜法を選択した。
 公演は2部制(前半はレクチャー,後半は舞踏付き演奏会)で企画された。まず,柿沼敏江教授の挨拶の後,高野裕子が「バロック時代の音楽と舞踏」というタイトルで,主にフランス・バロック時代における音楽と舞踏の特別な関係性について述べた。次に,三島郁氏が「『音楽』と『演奏』を書き留める」と題して,バロック時代に見られた記譜法と演奏法について論じ,最後に赤塚健太郎氏が「舞踏譜は何を語るのか」と題して,舞踏譜の基礎的な知識と実践について論じた。後半の舞踏付き演奏会では,17世紀・18世紀のフランス・バロック音楽と舞踏が披露された。樋口裕子氏がバロック・ダンス,永野伶実氏がフルート,大内山薫氏がヴァイオリン,頼田麗氏がヴィオール,三橋桜子氏がチェンバロをそれぞれ担当した。
 舞曲「クラント」の記譜法に関する三島氏の考察は,当時の記譜法が音楽様式や身体の動きと関連があったことを示す興味深いものであった。特に,チェンバロ演奏を交えながらの解説からは大きな説得力を感じた。一方の赤塚氏による講演は,バロック時代の舞踏譜とその記譜法を概観するものであり,舞踏に馴染みのない人々にとっても驚きと発見の連続であった。実際に舞踏譜を映写しながら,そのステップを樋口氏が実演した際には,感嘆の声が聞かれた。また,17世紀・18世紀に流行した主な舞踏を取り上げた後半の演奏会では,前半のレクチャー内容を「実践」することにより,本公演の目的である「“記譜”とは何か」を立体的に投影することに成功した。
 以上の公演内容に対して,当日ご来場頂いた観客の方々から大きな反響を頂戴した。当日回収したアンケートから貴重なご意見をいくつかご紹介したい。
・17世紀の記譜法が,今日とは違うことは知っていたが,これほど異なっていたとは知らなかった。また,舞踏と音楽の繋がりの深さが再認識され,舞踏についても興味を持った。
・当時の楽譜の記譜法や舞踏譜の読み方,またダンス付き舞曲など,とても素晴らしかった。特に音楽とダンスを同時に見られたことにより,舞曲のステップや特徴などを一層深く理解することが出来た。
・前半のレクチャーは一般には知り得ない専門的な知識を聴くことが出来て興味深かった。後半の舞踏を楽しみにしていたので,とても素晴らしかった。 等
 最後に,本公演は「平成27年度京都市立芸術大学特別研究助成」により実施された。深く感謝すると共に,ここに改めてお礼を申し上げたい。

(芸術資源研究センター非常勤研究員 高野裕子)

「バロック時代の音楽と舞踏〜記譜を通して見る華麗なる時空間」
日時:平成27年10月18日(日) 午後2時開演(午後1時30分開場)
会場:京都市立京都堀川音楽高等学校 音楽ホール
主催:京都市立芸術大学芸術資源研究センター
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