京都市立芸術大学・芸術資源研究センターでは、この秋から冬にかけ、「芸術」「大学」「記憶機関 memory institutions」を主題とする連続研究会とシンポジウムを開催します。
京都市立芸術大学芸術資源研究センターYou Tubeチャンネル で配信いたします。
▼シンポジウム▼
2020年11月28日(土)14:00-17:00オンライン配信
「デジタル時代の〈記憶機関〉 芸術/大学における図書館・美術館・アーカイブ 」
登壇者:桂英史、佐々木美緒、松山ひとみ、森野彰人(芸術資源研究センター所長・京都市立芸術大学美術学部教授)
司会:佐藤知久
■概要
京都市立芸術大学・芸術資源研究センターでは、この秋から冬にかけ、「芸術」「大学」「記憶機関 memory institutions」を主題とする連続研究会とシンポジウムを開催します。
「記憶機関 memory institutions」とは、過去の出来事に関する記憶や記録を、未来へ向けて継承するための、社会的・文化的な機関や制度を指すことばです。具体的には、〈図書館〉〈ミュージアム(博物館・美術館)〉〈アーカイブ〉、さらには〈ギャラリー〉なども、現在そして過去の活動や経験を現在と未来に伝えるための〈記憶機関〉と見なすことができます。
本企画は、これからの芸術にとって、あるいはこれからの芸術をつくる人材を育てる芸術大学にとって、 記憶機関はどのようなものであるべきか?について、具体的に考えてみようという試みです。
近年あらゆることがらのデジタル化が展開し、記憶機関のあり方だけでなく、私たちの記憶やコミュニケーションのあり方も、大きく変化してきました。新しい技術の実装により、知識を蓄積する基盤としてのインターネットが、ひとつの巨大な記憶機関となりつつあります。図書館や学術資源の電子化がすすみ、オンラインのギャラリーやミュージアムが続々と現れています。
しかし他方では、長期間の保存に耐える物質的記録の価値や、人間が交流し、協働し、共に創造的な活動に従事する物理的空間を再評価する動きもあります。COVID-19の影響下で、ますますデジタル-分散-協働的な生活様式が編み出されていくなか、「手応えのある物質を共有する、開かれた物理的な公共空間」としての図書館、ミュージアム、ギャラリー、アーカイブなどの意義が、あらためて問われています。
記憶を継承し、次世代の創造活動を支えるインフラストラクチャーとしての記憶機関は、今後どのようなものとなっていくのでしょうか。そして人びとは、そこでどのように他者の記憶や経験をたどり、何を経験していくのでしょうか。さまざまな方々とともに考えます。
チラシ(PDF)
過去のオンライン配信の様子は芸術資源研究センターYou Tubeチャンネル でご覧いただけます。
No.29アーカイブ研究会 10月16日(金)18:15-
「デジタル時代の〈記憶機関 memory institutions〉–イントロダクション」
佐藤知久(京都市立芸術大学芸術資源研究センター/文化人類学)
VIDEO
No.30アーカイブ研究会 10月28日(水)18:00-20:00
「プラットフォームとしての図書館の役割
コロナ禍で露呈した物理的な公共空間としての弱さ」
佐々木美緒(京都精華大学人文学部/図書館情報学・図書館員養成)
■概要
「これからの芸術をつくる人材を育てる芸術大学にとって、記憶機関はどのようなものであるべきか?」、芸術大学の図書館の役割をそれぞれの機関における「プラットフォーム」として位置づけ、どのような取組みを展開できるのか考えます。ただ、「手ごたえのある物質を共有する、開かれた公共空間」であった図書館は、コロナ禍においてその弱さも露呈しています。課題を示しながら今後の可能性を探ります。
■プロフィール
佐々木美緒|Mio sasaki
フロリダ州立大学大学院図書館情報学科修了、修士(情報学)
政策研究大学院大学文化政策プログラム修了、修士(文化政策)
政策研究大学院大学公共政策プログラム博士課程(単位取得退学)
これまでアメリカのシアトル公共図書館、民間企業にて日本の公共図書館、大学図書館の管理・運営業務に携わる。
主な研究テーマは大学機関における専門(芸術)図書館員の養成について。
VIDEO
No.31アーカイブ研究会
11月10日(火)18:00-20:00 オンライン配信(参加無料・予約不要)
「美術館の資料コレクションは誰のもの?」
松山ひとみ(大阪中之島美術館/学芸員・アーキビスト)
VIDEO
No.32アーカイブ研究会
11月16日(月)18:0-20:00
「世界劇場モデルを超えて」
桂英史(東京藝術大学大学院映像研究科/メディア研究、図書館情報学)
VIDEO
2020/10/12
第28回アーカイブ研究会
シリーズ:トラウマとアーカイブvol.4
ロマの進行形アーカイブとしてのちぐはぐな住居
シリーズ第4回目は,岩谷彩子氏にお話いただきます。
日時:2020年2月18日(火)14:30−16:30
場所:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
参加無料(事前申込不要)
チラシ
ポスト共産主義期のルーマニアに林立し始めた奇妙な御殿。いつしか人々はそれを「ロマ御殿」と呼ぶようになった。アジア建築にも似た豪奢なその建物に住まうのは、ルーマニアで長らく差別と迫害を受けてきた少数民族ロマであり、その中でも最も移動性が高く、戦前から金属加工にたずさわってきたカルダラリ・ロマである。第二次世界大戦時、彼らの多くはトランスニストリアへの強制連行と強制労働で命を失った。戦後、トランスニストリアから引き揚げマイナスから出発した彼らだったが、金属市場の高騰を受け急速に蓄財をなしとげた。彼らの御殿には異なる建築様式が折衷され富を誇るが、建築途中で放置され剥き出しになった階段やベランダも存在し、敷地の一角にはスクラップが散乱する。家族の遺品が普段使われない部屋にひっそりと納められる一方で、未来の客人や子どもたちのために未使用の部屋もある。本報告では、語られない過去と饒舌なまでの未来の期待を含み、異なる空間的要素が組み合わさる一見ちぐはぐなロマの住居を、彼らの現在進行形のアーカイブとしてとらえてみたい。(岩谷彩子)
■講師プロフィール
岩谷彩子|Iwatani Ayako
文化人類学。京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。インドの商業移動民および世界でロマ、「ジプシー」と呼ばれてきた人々の文化人類学的研究にたずさわる。夢や建築物、音楽や踊りなど、彼らのコミュニティの境界を形成するさまざまな装置を「記憶の媒体」としてとらえ、その特徴について考察している。著書に『夢とミメーシスの人類学―インドを生きぬく商業移動民ヴァギリ』(明石書店)、『映像にやどる宗教、宗教をうつす映像』(せりか書房)、分担執筆に「『移動民族』としてのロマと新人種主義―ヨーロッパ域内の人の移動をめぐるポリティクス」(斉藤綾子・竹沢泰子編『人種神話を解体する 第1巻Invisibility―「見えない人種」の表象』、東京大学出版会)など。
シリーズ:トラウマとアーカイブについて
芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。
公的な歴史や大きな物語からこぼれおち,それゆえ忘れ去られていく出来事とその記憶については,その記憶を聞きとり,引きうけ,わがこととして受けつぐ試みが,近年多くの場面で行われ,論じられています。
今回考えてみたいのは,忘れ去られつつあり,かつ忘れてはならないと思われるにも関わらず,差別や暴力の経験,負の記憶に結びついているために,あるいは今それについて語ることが新たな暴力や差別を引き起こしかねないために,思い出すことや語ること自体が現在でも困難であるような出来事とその記憶―トラウマ的な記憶―についてです。
たとえば,差別の経験や,国と国のあいまにある中間的な場所の記憶などについては,それについて語る・想起する・言及すること自体が,当事者にとってはもちろん,アーティストや研究者にとってもむずかしいという現状があります。しかしながらだからこそ,そうしたことがらについて語り,聞き,話すための場所が必要だとも言えます。
では実際に,こうした経験と記憶については,どのような試みやアプローチが可能でしょうか。本シリーズでは,記憶をアーカイブする装置としての芸術やフィクションの可能性に注目してみます。集団的というよりも個的な記憶,言語的・歴史的史料というよりも,フィクションや視覚的資料,そしてさまざまな「モノ」などに焦点をあてるこうした実践が,いまどのように可能なのか。異なるフィールドを対象に,忘れられるべきではない経験と記憶についての研究や表現活動を実践してこられた方たちをお迎えし,語ること,想起すること,聞きとり・引きうけ・受けつぐことの可能性とその具体案について,考えてみたいと思います。(芸術資源研究センター教授 佐藤知久)
2020/01/20
第27回アーカイブ研究会
シリーズ:トラウマとアーカイブvol.3
このまえのドクメンタって結局なんだったのか?!
シリーズ第三回目は,石谷治寛氏にお話いただきます。
日時:2019年12月17日(火)17:30−
場所:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
参加無料(事前申込不要)
チラシ
ドクメンタとは5年毎にドイツのカッセルという街で行われている国際芸術展です。今回のアーカイブ研究会では,2017年のドクメンタとは何だったのかをあらためて振り返ります。ドクメンタは,第2次世界大戦中に国が規範にそぐわない近代美術を禁止したことへの反省から,戦後に開始された現代美術展でした。そうした経緯から,表現の自由を象徴する展覧会として,国際的に注目され続けています。2017年に行われた14回目のドクメンタでは,ギリシアのアテネとも共催で,両都市間の連携がなされました。その背景には,ギリシアの文化や思考法が西洋文明にとって重要な規範になってきただけでなく,現在の欧州においても,南と北の経済格差や,地中海を超えて流入する移民など,さまざまな欧州の歴史と現在を照らし出すと考えられたからでした。ドイツーギリシア間とそこから広がる重層的な歴史を主題にした展示物の中には,美術作品や音楽だけでなく,アーカイブ資料の提示も含まれ,パフォーマンスや議論を通して,トラウマ記憶を再演する試みもみられました。本研究会では,さまざまな主題に分けて,全体像を読み解きながら,終了後の論争もふまえて,ドクメンタ14をいま振り返ります。(石谷治寛)
■講師プロフィール
石谷治寛|Ishitani Haruhiro
芸術論・美術史。京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員,非常勤講師。十九世紀フランス美術と視覚文化に関する研究から,外傷記憶の再演を扱う現代アート,メディア芸術の保存とアーカイブなどを考察。京都国際芸術祭パラソフィア2015や,岡山芸術交流2019に関する論考もウェブ媒体に発表している。著書に『幻視とレアリスム―クールベからピサロへ フランス絵画の再考』(人文書院)。共同企画に『MAMリサーチ006:クロニクル京都−ダイアモンズ・アー・フォーエバー,アートスケープ,そして私は誰かと踊る』(森美術館)など。
シリーズ:トラウマとアーカイブについて
芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。
公的な歴史や大きな物語からこぼれおち,それゆえ忘れ去られていく出来事とその記憶については,その記憶を聞きとり,引きうけ,わがこととして受けつぐ試みが,近年多くの場面で行われ,論じられています。
今回考えてみたいのは,忘れ去られつつあり,かつ忘れてはならないと思われるにも関わらず,差別や暴力の経験,負の記憶に結びついているために,あるいは今それについて語ることが新たな暴力や差別を引き起こしかねないために,思い出すことや語ること自体が現在でも困難であるような出来事とその記憶―トラウマ的な記憶―についてです。
たとえば,差別の経験や,国と国のあいまにある中間的な場所の記憶などについては,それについて語る・想起する・言及すること自体が,当事者にとってはもちろん,アーティストや研究者にとってもむずかしいという現状があります。しかしながらだからこそ,そうしたことがらについて語り,聞き,話すための場所が必要だとも言えます。
では実際に,こうした経験と記憶については,どのような試みやアプローチが可能でしょうか。本シリーズでは,記憶をアーカイブする装置としての芸術やフィクションの可能性に注目してみます。集団的というよりも個的な記憶,言語的・歴史的史料というよりも,フィクションや視覚的資料,そしてさまざまな「モノ」などに焦点をあてるこうした実践が,いまどのように可能なのか。異なるフィールドを対象に,忘れられるべきではない経験と記憶についての研究や表現活動を実践してこられた方たちをお迎えし,語ること,想起すること,聞きとり・引きうけ・受けつぐことの可能性とその具体案について,考えてみたいと思います。(芸術資源研究センター教授 佐藤知久)
2019/11/26
第26回アーカイブ研究会
シリーズ:トラウマとアーカイブvol.2
parallax(視差)―「向こう側」から日本を見る
シリーズ第二回目は,高嶋慈氏をお迎えします。
日時:2019年10月24日(木)17:30−
場所:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
参加無料(事前申込不要)
チラシ
占領期の日本で,将校用家族住宅としてGHQに接収された個人邸宅である「接収住宅」。20世紀初頭の朝鮮半島で,鉄道路線の中継地点として日本人が作った街,大田(テジョン)。植民地期の釜山に住んだ日本人の墓地を土台にし,朝鮮戦争の避難民がバラックを建てて住んだ「峨嵋洞(アミドン)」。日本の中の「アメリカ」と,朝鮮半島の中の「日本」。アーカイブに保存された写真イメージに残る「占領」の記憶。今も人が住む住宅,無人の廃屋,リノベーションされた店舗,再開発が同時進行し,忘却,融合と共存,上書き,転用,そして抹消という複数のレイヤーが共存する空間。批評家として美術作家のリサーチに並走するなかで見えてきた,入れ子状になった「占領」の記憶について,「トラウマ的な負の記憶が堆積する場所」としてのアーカイブと建築物を通して考えます。アメリカ国立公文書館が所蔵する「接収住宅」の写真資料と,韓国の大田に現存する日本家屋や住居の一部となった墓石の事例とともに,アートを通して負の記憶に対峙することの可能性や意義について考えます。合わせて,9月に行った韓国現地レポートも交えてお話しします。 (高嶋慈)
芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。
公的な歴史や大きな物語からこぼれおち,それゆえ忘れ去られていく出来事とその記憶については,その記憶を聞きとり,引きうけ,わがこととして受けつぐ試みが,近年多くの場面で行われ,論じられています。
今回考えてみたいのは,忘れ去られつつあり,かつ忘れてはならないと思われるにも関わらず,差別や暴力の経験,負の記憶に結びついているために,あるいは今それについて語ることが新たな暴力や差別を引き起こしかねないために,思い出すことや語ること自体が現在でも困難であるような出来事とその記憶―トラウマ的な記憶―についてです。
たとえば,差別の経験や,国と国のあいまにある中間的な場所の記憶などについては,それについて語る・想起する・言及すること自体が,当事者にとってはもちろん,アーティストや研究者にとってもむずかしいという現状があります。しかしながらだからこそ,そうしたことがらについて語り,聞き,話すための場所が必要だとも言えます。
では実際に,こうした経験と記憶については,どのような試みやアプローチが可能でしょうか。本シリーズでは,記憶をアーカイブする装置としての芸術やフィクションの可能性に注目してみます。集団的というよりも個的な記憶,言語的・歴史的史料というよりも,フィクションや視覚的資料,そしてさまざまな「モノ」などに焦点をあてるこうした実践が,いまどのように可能なのか。異なるフィールドを対象に,忘れられるべきではない経験と記憶についての研究や表現活動を実践してこられた方たちをお迎えし,語ること,想起すること,聞きとり・引きうけ・受けつぐことの可能性とその具体案について,考えてみたいと思います。(芸術資源研究センター教授 佐藤知久)
■講師プロフィール
講師:高嶋慈|Takashima Megumi
京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員。美術・舞台芸術批評。ウェブマガジンartscapeにてレビューを連載中。企画した展覧会に,「Project ‘Mirrors’ 稲垣智子個展:はざまをひらく」(2013年,京都芸術センター),「egØ-『主体』を問い直す-」展(2014年,punto,京都),大坪晶「Shadow in the House」展(2018年,京都市立芸術大学 小ギャラリー)。共著に『身体感覚の旅 ― 舞踊家レジーヌ・ショピノとパシフィックメルティングポット』(2017)。
2019/10/16
第25回アーカイブ研究会
シリーズ:トラウマとアーカイブvol.1
《シャンデリア》自作を語る—近代歴史の中で生き残った人々の話から
シリーズ第一回目は、作家の裵相順(Bae SangSun)氏をお迎えします。
日時:2019年10月8日(火)17:30−
場所:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
参加無料(事前申込不要)
チラシ
芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。
公的な歴史や大きな物語からこぼれおち,それゆえ忘れ去られていく出来事とその記憶については,その記憶を聞きとり,引きうけ,わがこととして受けつぐ試みが,近年多くの場面で行われ,論じられています。
今回考えてみたいのは,忘れ去られつつあり,かつ忘れてはならないと思われるにも関わらず,差別や暴力の経験,負の記憶に結びついているために,あるいは今それについて語ることが新たな暴力や差別を引き起こしかねないために,思い出すことや語ること自体が現在でも困難であるような出来事とその記憶―トラウマ的な記憶―についてです。
たとえば,差別の経験や,国と国のあいまにある中間的な場所の記憶などについては,それについて語る・想起する・言及すること自体が,当事者にとってはもちろん,アーティストや研究者にとってもむずかしいという現状があります。しかしながらだからこそ,そうしたことがらについて語り,聞き,話すための場所が必要だとも言えます。
では実際に,こうした経験と記憶については,どのような試みやアプローチが可能でしょうか。本シリーズでは,記憶をアーカイブする装置としての芸術やフィクションの可能性に注目してみます。集団的というよりも個的な記憶,言語的・歴史的史料というよりも,フィクションや視覚的資料,そしてさまざまな「モノ」などに焦点をあてるこうした実践が,いまどのように可能なのか。異なるフィールドを対象に,忘れられるべきではない経験と記憶についての研究や表現活動を実践してこられた方たちをお迎えし,語ること,想起すること,聞きとり・引きうけ・受けつぐことの可能性とその具体案について,考えてみたいと思います。(芸術資源研究センター教授 佐藤知久)
作家ノート
夢でも行きたかった大田、朝鮮大田生まれのある日本人は終戦後、引き上げてから亡くなるまで一度も大田に行かず、遺骨の一部を大田のある山に入れてほしいと遺言を残した。その遺言を聞いた息子も今では82歳になっている。それで逆に日本で生まれ朝鮮の人と結婚し、終戦後、韓国の釡山に行った日本人の女性は104歳になり、今も韓国にいる。
私は 2015 年から約3年間、韓国中部の大田にある小さな街「蘇堤洞」を調査し、故郷と国籍が一致しない日本人たちへのインタビューを行うなど、数年間にわたって誠実な調査や記録を重ねた。インタビュー対象者は 80~90歳と高齢で、彼らと自分が共にいられる時間はあまり残っていない。
激動の近代日韓史を生き抜いてきた彼らの語られることなかった記憶や想いを聞く行為から作品に至るまでの複雑な気持ちに向き合っている。それを作家として作品に繋げていくプロジェクトでもあった。(裵相順|Bae SangSun)
■講師プロフィール
講師:裵相順|Bae SangSun
1997年成均館大学美術教育科(美術教育専攻)卒業。
2002年武蔵野美術大学造形研究科美術専攻修了。
2003年ロイヤル・カレッジ・ オブ・アート(版画専攻)交換留学生。
2008年京都市立芸術大学 大学院美術研究科博士(後期)課程満期退学。
2005年と2008年,日本のVOCA「現代美術の展望-新たな平面の作家たち」の展示に選ばれ、韓国と日本を始め,多くの国際的な展示に参加した。現在は京都を拠点に制作し,活動している。
Selected exhibition
2019
‘Moon-Bow’,Jarfo,Kyoto
‘Layer’s of time’,Gallery Lee&Bae,Busan
‘KG+ Selected 12’,Junpu Elementary School,Kyoto
2017
‘Repeat & Repeat’,Sfera Exhibiton,Kyoto
‘International artist Solo Exhibition’,CIGE,Beijing
2016
‘Daejeon research project final show'(2 years running from 2015)
‘TEMI art centre’,Daejeon,Korea
‘DMZ project’,Korea,(3years running from 2014)
2014
‘Line’s Echo’,Ujong Museum of Art,Korea
‘Over & Over’,Imura Art Gallery,Kyoto
2013
‘Dividing Line,Connecting Line’,Collaboration with Michael Whittle,Zuian-an,Kyoto
2019/10/01
第24回アーカイブ研究会
特集展示「鈴木昭男 音と場の探究」をめぐって
日時:2018年12月16日(日)14:00−
場所:京都市立芸術大学 大学会館ホール
参加無料(事前申込不要)
チラシ
〈概要〉
第24回アーカイブ研究会では、和歌山県立近代美術館で開催された特集展示「鈴木昭男 音と場の探究」(2018年8月4日~10月21日)を企画された奥村一郎氏を講師にお招きします。同展は日本におけるサウンドアートの先駆者である鈴木昭男氏の、1960年代から今日に到る足跡を辿る内容で、チラシやポスター、リーフレットといった印刷物、写真、映像、パフォーマンスで使用した音具などを主要な展示物として構成しました。展示を振り返りながら、今後進める鈴木昭男氏所蔵資料のアーカイブ計画についてもお話いただきます。また、トークとともに鈴木昭男氏によるパフォーマンスをおこないます。
■講師プロフィール
奥村一郎
和歌山県立近代美術館学芸員
近年担当した展覧会は,「アメリカへ渡った二人 国吉康雄と石垣栄太郎」(2017),「なつやすみの美術館6 きろくときおく」(2016)など。鈴木昭男氏に関しては,2005年に「鈴木昭男:点音 in 和歌山 2005」を開催。また2015年には,その10周年記念イベントをゲストに梅田哲也氏を招いて行った。
鈴木昭男
1941年生まれ。60年代より「自修イベント」の形で「音」の世界に目覚め,70年代には「アナラポス」その他の創作楽器による演奏を開始し,南画廊・東京で個展(1976)。80年代は,素材そのものから音を探る「コンセプチャル・サウンドワーク」を創始,ドクメンタ 8・カッセルに出場した。〈1日の自然に耳を澄ます〉音のプロジェクト「日向ぼっこの空間」を遂行(1988)。90年代からインスタレーションを手がけ,べルリンでのソナンビエンテ・フェスティバル(1996)で発表の「点 音(おとだて)」(60年代の自修イベントの公共板としての〈巷に耳を澄ます〉ポイントのマーキング作品)を各地で行ってきている。今年は、KUNST MUSEUM BONNにて新作を発表したほか,熊野古道なかへち美術館では,開館20周年記念特別展「鈴木昭男 ー内 在ー」を,和歌山県立近代美術館との連携企画として開催している。
2018/11/20
第23回アーカイブ研究会
「日本の録音史(1860年代~1920年代)」
第23回は,音楽学者の細川周平氏をお招きします。
日時:2018年10月11日(木)17:30−19:00
場所:京都市立芸術大学芸術資源研究センター
参加無料(事前申込不要)
チラシ
〈概要〉
講師は以前、国立民族学博物館にて「植民地主義と録音産業―日本コロムビア外地録音資料の研究」(平成17~18年度科研費)に参加して、録音のアーカイブ化に携わった経験、日本最初の円盤禄音として知られるフレッド・ガイスバーグ録音のCDボックス制作に関わった経験を持つ。今回は日本の初期録音史を振り返り、アーカイブ化の意義について考えます。
■講師プロフィール
細川周平
音楽学者。国際日本文化研究センター教授
主な著書:『日系ブラジル移民文学 2 ―日本語の長い旅 [歴史]』2013、『日系ブラジル移民文学 1 ―日本語の長い旅 [評論]』2012、『民謡からみた世界音楽 うたの地脈を探る』2012、『遠きにありてつくるもの―日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』2008、Karaoke Around the World: Global Technology, Local Singing (三井徹共編) 2001、『シネマ屋ブラジルを行く』1998、『サンバの国に演歌は流れる』1995、『レコードの美学』1990など。
2018/10/05
第22回アーカイブ研究会
NETTING AIR FROM THE LOW LAND
空を編むー低い土地から
第22回は,アーティストの渡部睦子氏をお招きします。
日時:2018年10月4日(木)17:30−19:30
場所:京都市立芸術大学芸術資源研究センター
参加無料(事前申込不要)
Special Performance by MAMIUMUートークの後にMAMIUMUによるパファオーマンスを予定しております。
チラシ
〈概要〉
約20年に及びオランダをベースにさまざまな土地を移動し、また人に出会いながら「そこにあるもの」を取り込み、独自のユニークな視点で再構成し作品制作を続けてきた渡部睦子。
今年の6月にアムステルダムのハウス・マルセイユ写真美術館で発表した新作、同時に出版された自身の本” NETTING AIRFROM THE LOW LAND”、さまざまな場所での制作プロセスなどについて、アーカイブという視点も含めつつお話ししていただきます。
■講師プロフィール
渡部睦子
1969年愛知県刈谷市生まれ。1992年京都市立芸術大学美術学部工芸専攻(陶磁器)卒業、1994年同大学大学院美術研究科工芸専攻(陶磁器)修了。1988年サンドベルグ・インスティテュート、2002年ライクスアカデミー、アムステルダム修了。1995年よりオランダを拠点に、アートを介し異なる国や文化、コミュニティーを訪れ「地元の人に何かを教えてもらう」ということをキーワードに様々な形態を用いて作品の制作を試みている。
2018/09/10
第21回アーカイブ研究会
コミュニティ・アーカイブをつくろう!
せんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」奮闘記
日時:2018年9月28日(金)17:30−19:30
場所:京都市立芸術大学芸術資源研究センター
参加無料(事前申込不要)
チラシ
〈概要〉
今年はじめに刊行された、『コミュニティ・アーカイブをつくろう! せんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」奮闘記』(晶文社)の著者3名によるトークイベントを開催します。
「3がつ11にちをわすれないためにセンター(わすれン!)」は、せんだいメディアテークが2011年に開設した、市民・専門家・メディアテークスタッフの協働による、東日本大震災とその復興のプロセスを、独自に発信・記録するためのプラットフォームです。
個々人による災害の記録は、近年twitterなどでも注目されています。けれども、こうした記録がマスメディアに利用されるだけでなく、つぎの災害にまで届く「声」になるためには、工夫が必要です。
この本では、「個別的で微細な手ざわりをもつ出来事を、さまざまな技術と道具をつかって、自分たちで記録し共有する」ための活動を、コミュニティ・アーカイブと呼んでいます。本書には、わすれン!に蓄積された、コミュニティ・アーカイブづくりのノウハウと成果、これからの課題をまとめました。
トークイベントでは、本書の背景と内容、そこに書ききれなかったことを紹介するとともに、本書刊行後に著者3人が続けているそれぞれの活動について、社会活動とアート、建築と展示とデザイン、記録とアーカイブと人類学など、さまざまなトピックについてお話します。
■講師プロフィール
甲斐賢治
1963年大阪府生まれ。せんだいメディアテーク アーティスティック・ディレクター。[remo]記録と表現とメディアのための組織や、[recip]地域文化に関する情報とプロジェクトなどを通じて、社会活動としてのアートに取組んでいる。
北野央
1980年北海道生まれ。公益財団法人仙台市市民文化事業団 主事。2011年からせんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」を担当、「レコーディング イン プログレス」(2015)「震災と暮らし」(2016)などの展覧会を行う。
佐藤知久
京都市立芸術大学芸術資源研究センター専任研究員/准教授。
2018/09/10
第20回アーカイブ研究会
「Week End / End Game:展覧会の制作過程とその背景の思考について」
日時:2018年1月11日(木)17:30−19:30
場所:京都市立芸術大学芸術資源研究センター
参加無料(事前申込不要)
チラシ
〈概要〉
アーティスト田村友一郎による個展《試論:栄光と終末、もしくはその週末 / Week End》が栃木県の小山市立車屋美術館で開催されました。
本アーカイブ研究会では、田村友一郎とこの展覧会をゲストキュレーターとして企画した服部浩之が、展覧会の制作過程や実施意図などを紹介します。アーティストやキュレーターが如何に思考し、現在という時代を生きているか、それぞれの観点を交えながら話を展開します。
“バブル期から約 30 年、 そして東日本大震災から 5 年以上が経過した現在の都市や、 その生活の現状を改めて考えるというところから、 展覧会はスタートしました。 はじめて美術館を訪問した際に、 美術館の公用車となっていた日産グロリアに着目した田村は、 これまで自身が度々言及してきた 「栄光」 へとつながる手がかりを見出しました。 そこから、 ある個人の栄光に着目し、都市の状況や人々の生活の背後にある社会の現状を捉えようと試みました。 作品は、 美術館だけでなく市内の複数の場所にも挿入され、 それらをリンクさせる独自の仕組みの構築、 さらにウェブサイトへの展開など、 展覧会は複数のレイヤーが重なる立体的な構造を成しています。 それは都市そのものの複雑な現状を再体験するようなものでもあり、 一地方都市において実際に生活する人物や具体的な出来事から、 より大きな普遍的な諸問題を描出することを試みています。
また、 このグロリアをきっかけにして、 同時期に開催される日産アートアワードでは 《栄光と終焉、もしくはその終演 / End Game》 というタイトルを冠した作品への展開も行われました。 ふたつの作品に直接的なつながりはありませんが、 ほぼ同時期に性格の異なる関東のふたつの都市で作品が同時に公開されることで、 何かしら特異な事象が生まれていることは確かです。
展覧会という規定された枠組みを超えて、 作品/プロジェクトを展開する田村の作品がどのような思考と過程を経てつくられたのか、 車屋美術館での展覧会を企画した服部の企画意図なども含めて、 その制作の裏側を紹介したいと思います。”
■講師プロフィール
田村友一郎(アーティスト)
1977 年富山県生まれ。熱海市在住。日本大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程修了。2012 年度文化庁新進芸術家海外派遣制度によりベルリン芸術大学・空間実験研究所に在籍。既にあるイメージや自らが撮影した素材をサンプリングの手法を用いて使用し、独自の関係性を導き出し再構築することで時空を超えた新たな風景や物語を立ち上げる。Google Street View のイメージのみで構成されたロードムービー『NIGHTLESS』で第 14回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞受賞(2011 年)。近年の主な展覧会に「2 or 3 Tigers」(Haus der Kulturen der Welt、ベルリン|2017 年)、「Mode of Liaison」(バンコク芸術文化センター[BACC]|2017 年)、「BODY/PLAY/POLYTICS」(横浜美術館|2016 年)、KYOTO EXPERIMENT 2016(京都芸術センター)、「物語りのかたち」(せんだいメディアテーク|2015 年)、メディアシティ・ソウル 2014(ソウル市美術館)、「これからの写真」(愛知県美術館|2014 年)、MOT アニュアル 2012「風が吹けば桶屋が儲かる」(東京都現代美術館)など。今後は、日産アートアワード2017、ヨコハマトリエンナーレ 2017 特別企画、ハンブルガー・バーンホフ現代美術館(ベルリン)での展示が予定されている。
服部浩之(キュレーター)
1978 年愛知県生まれ。秋田市、名古屋市在住。早稲田大学大学院修了(建築学)。2009 年-2016年青森公立大学国際芸術センター青森[ACAC]学芸員。2017 年より秋田公立美術大学大学院にて教鞭をとる傍ら、アートラボあいちディレクターとしてアートセンターの運営にも携わる。これからの生活のあり方を模索すべく、異なる二つの地域を往来しながら暮している。都市空間の諸問題と公共圏の成り立ちに興味をもち、アジアを中心に、展覧会やプロジェクト、リサーチ活動を展開している。近年の企画に「十和田奥入瀬芸術祭」(十和田市現代美術館、奥入瀬地域 |2013 年)や、「Media/Art Kitchen」(ジャカルタ、クアラルンプール、マニラ、バンコク、青森|2013 年~2014 年)、「あいちトリエンナーレ 2016」(愛知県美術館ほか、名古屋市、岡崎市、豊橋市|2016 年)、「アッセンブリッジナゴヤ」(港まちポットラックビルディングほか|2016年~)、「ESCAPE from the SEA」(マレーシア国立美術館、Art Printing Works Sdn. Bhd|2017年)等がある。
2017/12/24