第38回アーカイブ研究会のお知らせ

アートと学際研究の幸福な関係
-「ヤングムスリムの窓」を中心に


講師:澤崎賢一(一般社団法人「暮らしのモンタージュ」代表)


近年、アーティストが他領域の研究者等と協働して学際的な研究プロジェクトをおこなう事例が目立つように なりました。本学博士課程(構想設計)を修了したアーティスト/映像作家の澤崎賢一さんは、フランスの庭師 ジル・クレマンの活動を記録したドキュメンタリー映画『動いている庭』(2016 年)以降、研究者や専門家らと の共同研究プロジェクトによる映像作品を続けて制作しており、2018 年には映像メディアを活用した学際研究 のプラットフォームとして一般社団法人「暮らしのモンタージュ」を創設しています。個のアーティストとして の制作を越えて、領域を横断するコラボレイティブな開かれたアート実践を志向する背景にはどのようなビジョ ンがあるのでしょうか。澤崎さんの最新の取り組みである「ヤングムスリムの窓:芸術と学問のクロスワーク」 (文化人類学者の阿毛香絵さん/京都精華大学特任講師、イスラームとジェンダーを専門とする野中葉さん/慶 應義塾大学准教授との共同プロジェクト)など、いくつかの実践についてお話をうかがいます。 https://project-yme.net/


日時:2023 年 3 月 30 日(木)14:00-16:00
会場:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
定員:10 名
▶︎要予約:申込フォーム
*下記の作品を上映します。
澤崎賢一『#まなざしのかたち ヤングムスリムの窓:撮られているのは、確かにワタシだが、撮っているワタシ はいったい誰だろう?』(30 分 30 秒, 2023)

研究会のお知らせ

芸術資源研究センター 「音と身体の記譜研究」プロジェクト企画
「柴田南雄のシアター・ピース考」
(東洋音楽学会西日本支部第295回定例研究会)


概要:
柴田南雄(1916-1996)は日本の民俗芸能に取材したシアター・ピース作品を残したことで知られる。柴田のシアター・ピースは合唱によって上演されることを意図されているが、一般的な合唱作品とは異なり、多くの作品で不確定性を取り入れた記譜が採用されている。上演にあたっては、楽譜の表面に書かれた事柄に加えて、楽譜に書かれていない事柄をどのように「読むか」(あるいは理解するか)ということが問題となる。

本企画では、柴田南雄のシアター・ピースを研究し自身の作品にも応用している作曲家徳永崇氏を招き、 柴田のシアター・ピース作品のなかでも日本の民俗芸能に取材した《追分節考》(1973)、《念佛踊》(1976)、及び古今東西の恋歌を素材とした《歌垣》(1983)を取り上げ、とくに記譜されていない事柄に注目しながら、上演に内在する様々な問題を考える。(文:竹内直)


日 時:2023年3月4日(土)13:00〜16:00/開場 12:30
会 場:京都市立芸術大学大学会館ホール(京都市西京区大枝沓掛町13-26)
   ご来場は公共の交通機関をご利用ください。
定 員:50名 申し込みはこちらのフォームより申し込みください。
参加料:無料 ※ただし事前予約が必要です。(先着順)

企画主催:京都市立芸術大学芸術資源研究センター「音と身体の記譜研究」プロジェクト
共催:東洋音楽学会西日本支部
▶︎新型コロナウイルス感染防止対策のため,当日受付で検温等に御協力をお願いします。


1.イントロダクション 
「柴田南雄の創作活動とシアター・ピース」
講師:竹内直(音楽学、芸術資源研究センター非常勤研究員)

2.講演
「柴田南雄のシアター・ピースの上演における諸問題——記譜されていない情報に着目して——」
講師:徳永崇(作曲家、広島大学大学院准教授)

3.座談会
司会:滝奈々子(芸術資源研究センター非常勤研究員)

【講師プロフィール】
徳永崇(作曲家)
1973年広島生まれ。広島大学大学院教育学研究科、東京藝術大学音楽学部別科作曲専修及び愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士後期課程修了。柴田南雄のシアター・ピース研究で博士号(音楽)を取得。SCM World Music Days入選(2002/香港、2014/ヴロツワフ)。武生作曲賞受賞(2005)。作曲家グループ「クロノイ・プロトイ」メンバーとして、サントリー芸術財団第9回「佐治敬三賞」受賞(2010)。2021年4月より1年間、タンペレ応用科学大学に交換研究員として在籍。広島大学大学院教育学研究科准教授。

● 企画コーディネーター・進行:竹内直
● 座談会司会:滝奈々子


チラシ(PDF)


プロジェクトページ

第37回アーカイブ研究会のお知らせ

第37回アーカイブ研究会
沓掛アーカイバル・ナイト〈第1回〉
沓掛時代から平成美術へ:アートと社会システムとわすれたくない作品



講師
松尾 惠(ギャラリスト|ヴォイスギャラリー)
原 久子(アートプロデューサー|大阪電気通信大学教授)


崇仁地区への本学移転まで、残り1年になりました。そこで芸術資源研究センターでは、これからの1年間、1980年から2023年までの「京芸沓掛時代」を多彩なゲストとともにふりかえるトーク·シリーズ「沓掛アーカイバル·ナイト」を開催いたします。

記念すべき第一回のゲストは、本学卒業生であり、1986年に「ヴォイス·ギャラリー」を立ちあげて以来、多くの表現者たちに活動と発表の場を提供しつづけてきた松尾惠さんと、関西を対象とした現代美術批評誌『A&C: art & critic』の創刊(1987年)をはじめ、沓掛時代を通じさまざまなかたちで「アート·マネジメント」にたずさわってきた原久子さんのお二人です。

研究会では、沓掛時代を「美術をめぐる様々なシステム化が進んでいく時代」としてとらえ、お二人がギャラリストあるいはアート·プロデューサーとして、この時代に何を経験し、何を感じ、どうやってサバイブしてこられたのか、そしてこの40年間をふりかえってみたとき忘れがたい作品や出来事について、お話しいただきます。沓掛時代のアートシーンを熟知したお二人ならではの視点から、同時代についての証言と、これからの芸術についてのご意見をうかがっていきます。


2022年10月21日(金)18:00-20:00
会場:京都市立芸術大学 伝音共同研究室1(新研究棟7F)
定員:24名(要予約)
来場希望の方は下記のフォームよりお申込みください。
▶︎申込受付フォーム
研究会記録はYouTubeチャンネルより後日配信予定です。


チラシPDF

第36回アーカイブ研究会のお知らせ

「西洋美術史研究と芸術資源 ――目録やテクストが伝える情報――」
 本学の芸術資源研究センター(Archival Research Center)は、日々生み出される芸術作品や各種資料、作品が生み出される環境などを広く「芸術資源」と捉え直し、それらが新たな芸術創造に活かされるための諸条件やあり方などを探求しています。一方で西洋美術史研究においては、狭い意味でのアーカイブが史的研究に活用されてきただけでなく、広義の「芸術資源」を作家たちがどう活用し、次の制作・創造につなげていったのか、その有り様が常に探求されてきました。また、そうした「芸術資源」から作家や研究者が汲み取る「情報」や「内容」についても、決して一律に規定されるものではありません。本センターの打ち出す「芸術資源」の新たな定義は、伝統的な手法を取る美術史研究にとっても有意義なものです。その射程を今一度捉え直し、さらに広げていくためにも、伝統的なアーカイブやその周辺に眠る資料や、制作環境で活用されてきた芸術資源がどのようなもので、それらが制作や美術研究に如何に取り入れられてきたのかを多様な事例研究から知ることも、また意義のある取り組みだと言えるでしょう。
 今回開催する研究会では、アーカイブの蓄積と活用の重厚な歴史を持つ西洋美術史分野において、具体的な作家・作品研究とアーカイブの提供する資料とが如何に結び付けられてきたかということを検証し、それをもとに考え、情報提供する機会となればと思っています。皆様のご参加をお待ちしております。
深谷訓子(美術学部 総合芸術学科 准教授)

日 時:8月5日(金)13:00-15:50
方 式:Zoomオンライン

チラシ

▶︎参加申し込みフォーム
リンク先のフォームに必要事項を記入して送信してください。
研究会前日に参加のためのZoom情報をお送りいたします。


プログラム

開会挨拶:森野彰人(芸術資源研究センター所長・美術学部 教授)
研究会へのイントロダクション:佐藤知久(芸術資源研究センター 教授)


【第1部】財産目録から探る作品のすがた|司会:今井澄子|
研究発表①
13:10-13:30
「財産目録から辿るティツィアーノ作品の来歴 - 展示状況とその変化」
大熊夏実(京都市立芸術大学・博士後期課程)

研究発表②
13:30-13:50
「収集品とアイデンティティ-ネーデルラント総督アルブレヒトとイザベラの美術コレクション」
深谷訓子(美術学部 総合芸術学科 准教授)

13:50-14:10
第1部 質疑応答とディスカッション 


【第2部】テクストとしての芸術資源と美術史研究|司会:深谷訓子|
研究発表③
14:20-14:40
「16・17世紀イタリアにおける芸術家のための図書一覧」
倉持充希(神戸学院大学 講師)

研究発表④
14:40-15:00
「ドラクロワによる『ニコラ・プッサン伝』(1853年)-「芸術家伝」に何を学ぶか」
西嶋亜美(尾道市立大学 准教授)

研究発表⑤
15:00-15:20
「ヤン・ファン・エイク研究と古文書記録」
今井澄子(大阪大谷大学 教授)

15:20-15:50
第2部 質疑応答とディスカッション

(敬称略)


第35回アーカイブ研究会のお知らせ

吉田亮人チェキ日記展と第35回アーカイブ研究会
第35回アーカイブ研究会では、有限会社松本工房と共催で、写真家の吉田亮人氏による対話と展示の実験「チェキ日記展」を開催します。



チラシPDF


写真の日常的な氾濫と、写真が呼び起こしているように思われるさまざまな形の関心のため、《それは=かつて=あった》という[写真の]ノエマは、抑圧されることはないとしても、わかりきった特徴として無関心に生きられるおそれがある。「温室の写真」は、まさにそうした無関心から私の目を覚まさせたところであった。
(ロラン・バルト『明るい部屋』)

このたび芸術資源研究センターでは、有限会社松本工房と共催で、写真家の吉田亮人氏による対話と展示の実験「チェキ日記展」を開催します。
吉田亮人氏は1980年生まれ。京都市在住の写真家で、その作品は国内外で展示・出版されており、高い評価を受けています。
本展では、吉田氏が写真家としてデビューする以前から、現在に至るまで撮り続けている膨大な量の家族写真に着目します。2009年からほぼ毎日、1日1枚「チェキ」フィルムで撮影された写真は、ひとつひとつに日付と短いことばが添えられ、同じ月光荘製のスケッチブックに収められています。ひと月で1冊分になるアルバムは今や百冊以上までに増え、現在もこの活動が続いています。
このアルバムはもともと家族写真なので、発表することも、他人に見せるつもりもなかったと吉田氏は言います。それはいずれ大きくなる子供たちへのプレゼントであり、あくまでプライベートなものでした。けれども、12年間におよぶごく日常的な家族の風景を記録した写真を見ていると、それは徐々に、ある種の普遍性をおびたものとして見えてきます。きわめてプライベートで、私的なコンテキストに埋め込まれた記録である他者の家族写真が、なぜか一枚一枚、この上なく貴重な、いとおしいものとして見えてくるのです。
今回考えてみたいことは、大きく分けてふたつあります。ひとつは、この記録/作品がもつ独特の魅力についてです。写真は《それは=かつて=あった》ことを伝えるものだと言われます。「誰かを写真に撮り、それを後で見る」という行為の連続体である「チェキ日記」には、いま目の前にある光景を忘れないための記憶装置としての写真の本質が、シンプルな形式で凝縮されているように思えてなりません。「チェキ日記」について考えることによって、わたしたちは、デジタルカメラによる写真について、他者の記憶と個々人の関係について、さらには、「記憶を呼び起こす」という行為と記録をアーカイブするメディアとの関係について、多くの示唆を得ることになると思います。
第二に、この記録/作品を広く世に出すための方法についてです。「チェキ日記」は、百冊以上のアルバムに貼られた、それぞれが「此性」をもつ写真によって構成されています。したがって、多数のプリント写真をアルバムをめくりながら見ることによってこそ、鑑賞行為が成立します。しかしこのことは、多くの人が直接手にとって感じるような展示形態がきわめて難しいことを意味します。では「チェキ日記」には、どのような展示-鑑賞形態がふさわしいのでしょうか。今後「チェキ日記」を出版するとしたときにも、数千ページの写真集にすればこの作品の良さは伝わるかもしれませんが、現実的にそれはきわめて困難です。では、どのようなかたちであれば、「チェキ日記」はその魅力を維持した「本」になりうるのでしょうか。この問いは、そもそも「オリジナル・プリント」とは何か、そして「写真集」とは何かという問いに、そして再び「アーカイブするメディア」についての問いに接続されていくでしょう。
本展は、展示と研究会の二部構成になります。まず8月24日から6日間、芸術資源研究センターの横にあるギャラリースペースで、オリジナルのアルバム全冊の展示はもとより、複製・拡大プリント・映像投影・展開掲示などの実験を試みながら、作品を公開します。つぎに、展示の終盤に行われる研究会では、吉田氏の写真集『THE ABSENCE OF TWO』(2019)のブックデザインを担当し、かねてより「チェキ日記」に着目してきた、グラフィックデザイナーで有限会社松本工房を運営している松本久木氏を迎えて、この作品の意味と、この作品を展示/出版するための方法について、対話の場を設けます。


|展示|2021年8月24日(火)~8月29日(日)10:00~17:00
会場:京都市立芸術大学 小ギャラリー
本展は、研究のための展示として、来場者を限定して開催いたします。来場は1日10名までに限定させていただきますので、ご了承ください。
来場希望の方は、下記のGoogle Formよりお申込みください。
▶︎申し込みフォーム

|研究会|8月28日(土)14:00~
オンライン開催
予約不要
芸資研YouTubeチャンネルよりライブ配信いたします。
展示と研究会の様子は、どちらも映像に記録し、芸資研YouTubeチャンネルより、後日配信予定です。

▶︎芸資研YouTubeチャンネル

主催:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター、有限会社松本工房
協力:富士フイルム、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA


吉田亮人(よしだ・あきひと)
1980年宮崎県生まれ。京都市在住。滋賀大学教育学部卒業後、タイで日本語教師として1年間勤務。帰国後、小学校教員として6年間勤務した後、退職。2010年より写真家として活動開始。広告や雑誌を中心に活動しながら、「働く人」や「生と死」をテーマに作品制作を行い、国内外で高く評価されている。写真集に『Brick Yard』『Tannery』(以上、私家版)、『THE ABSENCE OF TWO』(青幻舎・Editions Xavier Barral)などがある。2021年、写真家としての10年間の活動を綴った書籍『しゃにむに写真家』(亜紀書房)を刊行。コニカミノルタフォトプレミオ2014年度大賞、日経ナショナルジオグラフィック写真賞2015・ピープル部門最優秀賞など受賞多数。KYOTOGRAPHIE 2017のメインプログラムとして公開された自身の祖母と従兄弟の日常を記録した「Falling Leaves」は、国内外の様々なメディアで取り上げられ大きな反響を呼んだ。

松本久木(まつもと・ひさき)
2007年よりグラフィックデザイン・組版・出版を主軸として活動を開始。クライアントには文化的・芸術的領域の団体や機関が多く、芸術関連施設での展覧会やイベントのデザインワーク、演劇・古典芸能・ダンスなどの舞台芸術の広報デザイン、大学・研究所・文化施設の広報物及び出版物の制作、人文・芸術・アート分野の出版及び装丁などを手がけている。緻密かつ繊細でありながら大胆で強い印象を与えるヴィジュアルイメージの構築と、深いコンテクストを持ちながらも抽象性の高いデザインワークに定評がある。2021年、第54回造本装幀コンクールでは、経済産業大臣賞と審査員奨励賞(京都市立芸術大学 芸術資源研究センター紀要「COMPOST vol.01」にて)を受賞。


第34回アーカイブ研究会 記録映像公開のお知らせ

「失われた絵画とアーカイブ 宇佐美圭司絵画の廃棄処分への対応について」

第34回アーカイブ研究会は、加治屋健司先生にお話いただきました。


2018年4月、東京大学本郷キャンパスの中央食堂にかけられていた宇佐美圭司の絵画が廃棄処分されたことが判明し、全国的な話題となりました。東京大学は、失われた絵画の調査や学内の文化資産の管理に取り組むと同時に、学内の研究者を中心に、廃棄処分に関する議論を重ね、2021年4月から東京大学駒場博物館で「宇佐美圭司 よみがえる画家」展を開催するに至りました。本研究会では、絵画の廃棄処分の報道から展覧会の開催までの取り組みを概観しつつ、その過程でアーカイブが果たした重要な役割を考察します。それと同時に、展覧会で展示している《きずな》(1977年)の再現画像作成と《Laser: Beam: Joint》(1968年)の再制作についてもお話しします。


発表:加治屋健司
コメント:石原友明(京都市立芸術大学美術学部教授)
司会:佐藤知久(京都市立芸術大学美術学部
主催:芸術資源研究センター
収録:2021年6月21日17:30~ @芸資研

芸資研YouTubeチャンネル

加治屋健司|Kenji Kajiya|
(東京大学大学院総合文化研究科教授、東京大学芸術創造連携研究機構副機構長、京都市立芸術大学芸術資源研究センター特別招聘研究員)
アメリカと日本を中心とした現代美術史、美術批評史を研究。日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ代表も務める。著書に『アンフォルム化するモダニズム カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』(東京大学出版会、近刊)。


第33回アーカイブ研究会のお知らせ

滋賀県の中学校で行った「展覧観測」風景、360°の展覧会アーカイブを美術の授業に応用している。

第33回アーカイブ研究会

360°展覧会アーカイブ事業「ART360°」の実践を通した考察


    第33回は,辻勇樹氏にお話いただきます。

  • 日時:2020年12月18日(金)18:00-
  • 場所:オンライン配信(京都市立芸術大学芸術資源研究センターYou Tubeチャンネル)https://youtu.be/EttUHLB3yao
  • 参加無料(事前申込不要)

360°展覧会アーカイブ事業「ART360°」を構想するきっかけとなった経緯と本事業が描く未来、実践を通した体験のデジタルアーカイビングにおける手法的考察や、PCやスマートフォンといった平面的インタフェースを通して、現在のメディアが人々に無意識下で与えている影響、また記録 / 体験それぞれのフェーズにおける既存のデジタルメディア体験の不完全性について自身の見解を展開します。また、アーカイビングという活動を記録保存のみの活動に限定せず「過去および未来との対話」と捉えることで意識化する社会的役割を俯瞰してみたいと考えています。


■講師プロフィール
辻勇樹|Yuki Tsuji
Actual Inc. 代表取締役 /ART360° ディレクター
京都精華大学卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に進学後は競技用義足のデザイン研究を通して、デザインエンジニアリングを学ぶ。株式会社グランマにて発展途上国でのデザインリサーチに従事。渡米の後、2015年より京都を拠点に活動する。2017-18年 KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 プロジェクトマネージャーとして展示マネジメントを担当。2018年に Actual Inc. を設立し、360°展覧会アーカイブ事業「ART360°」の企画運営、360°配信システム「PLACE」の開発など、バーチャルとアクチュアルの間にグラデーションを作り出す事業を展開する。Actual Inc.: https://actu-al.co


画像上から
・滋賀県の中学校で行った「展覧観測」風景、360°の展覧会アーカイブを美術の授業に応用している。
・香港での撮影風景
・VR鑑賞会の様子

2020年度 芸術資源研究センター 研究会・シンポジウム のお知らせ


京都市立芸術大学・芸術資源研究センターでは、この秋から冬にかけ、「芸術」「大学」「記憶機関 memory institutions」を主題とする連続研究会とシンポジウムを開催します。


京都市立芸術大学芸術資源研究センターYou Tubeチャンネルで配信いたします。


▼シンポジウム▼
2020年11月28日(土)14:00-17:00オンライン配信

「デジタル時代の〈記憶機関〉 芸術/大学における図書館・美術館・アーカイブ 」

登壇者:桂英史、佐々木美緒、松山ひとみ、森野彰人(芸術資源研究センター所長・京都市立芸術大学美術学部教授)
司会:佐藤知久

■概要
京都市立芸術大学・芸術資源研究センターでは、この秋から冬にかけ、「芸術」「大学」「記憶機関 memory institutions」を主題とする連続研究会とシンポジウムを開催します。
「記憶機関 memory institutions」とは、過去の出来事に関する記憶や記録を、未来へ向けて継承するための、社会的・文化的な機関や制度を指すことばです。具体的には、〈図書館〉〈ミュージアム(博物館・美術館)〉〈アーカイブ〉、さらには〈ギャラリー〉なども、現在そして過去の活動や経験を現在と未来に伝えるための〈記憶機関〉と見なすことができます。
本企画は、これからの芸術にとって、あるいはこれからの芸術をつくる人材を育てる芸術大学にとって、 記憶機関はどのようなものであるべきか?について、具体的に考えてみようという試みです。
近年あらゆることがらのデジタル化が展開し、記憶機関のあり方だけでなく、私たちの記憶やコミュニケーションのあり方も、大きく変化してきました。新しい技術の実装により、知識を蓄積する基盤としてのインターネットが、ひとつの巨大な記憶機関となりつつあります。図書館や学術資源の電子化がすすみ、オンラインのギャラリーやミュージアムが続々と現れています。
しかし他方では、長期間の保存に耐える物質的記録の価値や、人間が交流し、協働し、共に創造的な活動に従事する物理的空間を再評価する動きもあります。COVID-19の影響下で、ますますデジタル-分散-協働的な生活様式が編み出されていくなか、「手応えのある物質を共有する、開かれた物理的な公共空間」としての図書館、ミュージアム、ギャラリー、アーカイブなどの意義が、あらためて問われています。
記憶を継承し、次世代の創造活動を支えるインフラストラクチャーとしての記憶機関は、今後どのようなものとなっていくのでしょうか。そして人びとは、そこでどのように他者の記憶や経験をたどり、何を経験していくのでしょうか。さまざまな方々とともに考えます。

チラシ(PDF)


過去のオンライン配信の様子は芸術資源研究センターYou Tubeチャンネルでご覧いただけます。

No.29アーカイブ研究会 10月16日(金)18:15-

「デジタル時代の〈記憶機関 memory institutions〉–イントロダクション」

佐藤知久(京都市立芸術大学芸術資源研究センター/文化人類学)


No.30アーカイブ研究会 10月28日(水)18:00-20:00

「プラットフォームとしての図書館の役割
コロナ禍で露呈した物理的な公共空間としての弱さ」

佐々木美緒(京都精華大学人文学部/図書館情報学・図書館員養成)
■概要
「これからの芸術をつくる人材を育てる芸術大学にとって、記憶機関はどのようなものであるべきか?」、芸術大学の図書館の役割をそれぞれの機関における「プラットフォーム」として位置づけ、どのような取組みを展開できるのか考えます。ただ、「手ごたえのある物質を共有する、開かれた公共空間」であった図書館は、コロナ禍においてその弱さも露呈しています。課題を示しながら今後の可能性を探ります。
■プロフィール
佐々木美緒|Mio sasaki
フロリダ州立大学大学院図書館情報学科修了、修士(情報学)
政策研究大学院大学文化政策プログラム修了、修士(文化政策)
政策研究大学院大学公共政策プログラム博士課程(単位取得退学)
これまでアメリカのシアトル公共図書館、民間企業にて日本の公共図書館、大学図書館の管理・運営業務に携わる。
主な研究テーマは大学機関における専門(芸術)図書館員の養成について。


No.31アーカイブ研究会
11月10日(火)18:00-20:00 オンライン配信(参加無料・予約不要)

「美術館の資料コレクションは誰のもの?」

松山ひとみ(大阪中之島美術館/学芸員・アーキビスト)


No.32アーカイブ研究会
11月16日(月)18:0-20:00

「世界劇場モデルを超えて」

桂英史(東京藝術大学大学院映像研究科/メディア研究、図書館情報学)

第28回アーカイブ研究会のお知らせ


第28回アーカイブ研究会

シリーズ:トラウマとアーカイブvol.4
ロマの進行形アーカイブとしてのちぐはぐな住居


    シリーズ第4回目は,岩谷彩子氏にお話いただきます。

  • 日時:2020年2月18日(火)14:30−16:30
  • 場所:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
  • 参加無料(事前申込不要)

チラシ


 ポスト共産主義期のルーマニアに林立し始めた奇妙な御殿。いつしか人々はそれを「ロマ御殿」と呼ぶようになった。アジア建築にも似た豪奢なその建物に住まうのは、ルーマニアで長らく差別と迫害を受けてきた少数民族ロマであり、その中でも最も移動性が高く、戦前から金属加工にたずさわってきたカルダラリ・ロマである。第二次世界大戦時、彼らの多くはトランスニストリアへの強制連行と強制労働で命を失った。戦後、トランスニストリアから引き揚げマイナスから出発した彼らだったが、金属市場の高騰を受け急速に蓄財をなしとげた。彼らの御殿には異なる建築様式が折衷され富を誇るが、建築途中で放置され剥き出しになった階段やベランダも存在し、敷地の一角にはスクラップが散乱する。家族の遺品が普段使われない部屋にひっそりと納められる一方で、未来の客人や子どもたちのために未使用の部屋もある。本報告では、語られない過去と饒舌なまでの未来の期待を含み、異なる空間的要素が組み合わさる一見ちぐはぐなロマの住居を、彼らの現在進行形のアーカイブとしてとらえてみたい。(岩谷彩子)

■講師プロフィール
岩谷彩子|Iwatani Ayako
 文化人類学。京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。インドの商業移動民および世界でロマ、「ジプシー」と呼ばれてきた人々の文化人類学的研究にたずさわる。夢や建築物、音楽や踊りなど、彼らのコミュニティの境界を形成するさまざまな装置を「記憶の媒体」としてとらえ、その特徴について考察している。著書に『夢とミメーシスの人類学―インドを生きぬく商業移動民ヴァギリ』(明石書店)、『映像にやどる宗教、宗教をうつす映像』(せりか書房)、分担執筆に「『移動民族』としてのロマと新人種主義―ヨーロッパ域内の人の移動をめぐるポリティクス」(斉藤綾子・竹沢泰子編『人種神話を解体する 第1巻Invisibility―「見えない人種」の表象』、東京大学出版会)など。


シリーズ:トラウマとアーカイブについて
芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。
公的な歴史や大きな物語からこぼれおち,それゆえ忘れ去られていく出来事とその記憶については,その記憶を聞きとり,引きうけ,わがこととして受けつぐ試みが,近年多くの場面で行われ,論じられています。
今回考えてみたいのは,忘れ去られつつあり,かつ忘れてはならないと思われるにも関わらず,差別や暴力の経験,負の記憶に結びついているために,あるいは今それについて語ることが新たな暴力や差別を引き起こしかねないために,思い出すことや語ること自体が現在でも困難であるような出来事とその記憶―トラウマ的な記憶―についてです。
たとえば,差別の経験や,国と国のあいまにある中間的な場所の記憶などについては,それについて語る・想起する・言及すること自体が,当事者にとってはもちろん,アーティストや研究者にとってもむずかしいという現状があります。しかしながらだからこそ,そうしたことがらについて語り,聞き,話すための場所が必要だとも言えます。
では実際に,こうした経験と記憶については,どのような試みやアプローチが可能でしょうか。本シリーズでは,記憶をアーカイブする装置としての芸術やフィクションの可能性に注目してみます。集団的というよりも個的な記憶,言語的・歴史的史料というよりも,フィクションや視覚的資料,そしてさまざまな「モノ」などに焦点をあてるこうした実践が,いまどのように可能なのか。異なるフィールドを対象に,忘れられるべきではない経験と記憶についての研究や表現活動を実践してこられた方たちをお迎えし,語ること,想起すること,聞きとり・引きうけ・受けつぐことの可能性とその具体案について,考えてみたいと思います。(芸術資源研究センター教授 佐藤知久)


第27回アーカイブ研究会のお知らせ


第27回アーカイブ研究会

シリーズ:トラウマとアーカイブvol.3
このまえのドクメンタって結局なんだったのか?!


    シリーズ第三回目は,石谷治寛氏にお話いただきます。

  • 日時:2019年12月17日(火)17:30−
  • 場所:京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
  • 参加無料(事前申込不要)

チラシ


ドクメンタとは5年毎にドイツのカッセルという街で行われている国際芸術展です。今回のアーカイブ研究会では,2017年のドクメンタとは何だったのかをあらためて振り返ります。ドクメンタは,第2次世界大戦中に国が規範にそぐわない近代美術を禁止したことへの反省から,戦後に開始された現代美術展でした。そうした経緯から,表現の自由を象徴する展覧会として,国際的に注目され続けています。2017年に行われた14回目のドクメンタでは,ギリシアのアテネとも共催で,両都市間の連携がなされました。その背景には,ギリシアの文化や思考法が西洋文明にとって重要な規範になってきただけでなく,現在の欧州においても,南と北の経済格差や,地中海を超えて流入する移民など,さまざまな欧州の歴史と現在を照らし出すと考えられたからでした。ドイツーギリシア間とそこから広がる重層的な歴史を主題にした展示物の中には,美術作品や音楽だけでなく,アーカイブ資料の提示も含まれ,パフォーマンスや議論を通して,トラウマ記憶を再演する試みもみられました。本研究会では,さまざまな主題に分けて,全体像を読み解きながら,終了後の論争もふまえて,ドクメンタ14をいま振り返ります。(石谷治寛)

■講師プロフィール
石谷治寛|Ishitani Haruhiro
芸術論・美術史。京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員,非常勤講師。十九世紀フランス美術と視覚文化に関する研究から,外傷記憶の再演を扱う現代アート,メディア芸術の保存とアーカイブなどを考察。京都国際芸術祭パラソフィア2015や,岡山芸術交流2019に関する論考もウェブ媒体に発表している。著書に『幻視とレアリスム―クールベからピサロへ フランス絵画の再考』(人文書院)。共同企画に『MAMリサーチ006:クロニクル京都−ダイアモンズ・アー・フォーエバー,アートスケープ,そして私は誰かと踊る』(森美術館)など。


シリーズ:トラウマとアーカイブについて
芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。
公的な歴史や大きな物語からこぼれおち,それゆえ忘れ去られていく出来事とその記憶については,その記憶を聞きとり,引きうけ,わがこととして受けつぐ試みが,近年多くの場面で行われ,論じられています。
今回考えてみたいのは,忘れ去られつつあり,かつ忘れてはならないと思われるにも関わらず,差別や暴力の経験,負の記憶に結びついているために,あるいは今それについて語ることが新たな暴力や差別を引き起こしかねないために,思い出すことや語ること自体が現在でも困難であるような出来事とその記憶―トラウマ的な記憶―についてです。
たとえば,差別の経験や,国と国のあいまにある中間的な場所の記憶などについては,それについて語る・想起する・言及すること自体が,当事者にとってはもちろん,アーティストや研究者にとってもむずかしいという現状があります。しかしながらだからこそ,そうしたことがらについて語り,聞き,話すための場所が必要だとも言えます。
では実際に,こうした経験と記憶については,どのような試みやアプローチが可能でしょうか。本シリーズでは,記憶をアーカイブする装置としての芸術やフィクションの可能性に注目してみます。集団的というよりも個的な記憶,言語的・歴史的史料というよりも,フィクションや視覚的資料,そしてさまざまな「モノ」などに焦点をあてるこうした実践が,いまどのように可能なのか。異なるフィールドを対象に,忘れられるべきではない経験と記憶についての研究や表現活動を実践してこられた方たちをお迎えし,語ること,想起すること,聞きとり・引きうけ・受けつぐことの可能性とその具体案について,考えてみたいと思います。(芸術資源研究センター教授 佐藤知久)


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