研修会 「芸術文化と著作権 大学という場を中心に」の報告

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インターネットをはじめとする情報通信技術の発展と普及にともない,容易に芸術作品を参照したり複写したりできるようになった今日,芸術文化をめぐる法的な問題は,重要性を増している。また,芸術の研究と創造でも使われるアーカイブ資料や電子データベースは,芸術作品とは別の法的な問題を生み出している。
 芸術資源研究センター運営委員会は,リポジトリ運営会議との共催で,弁護士の福井健策先生をお招きして「芸術文化と著作権 大学という場を中心に」と題する研修会を開催した。
 福井弁護士は,日本とニューヨーク州の弁護士で,芸術文化法,著作権法を専門分野とされている。今回の研修会では,「どんな情報が著作権で守られるのか」「どんな利用に著作権は及ぶのか」「著作権と著作権者」「模倣とオリジナルの境界/どこまで似れば「侵害」なのか」「例外的に許可のいらない場合/制限規定」「保護期間と国際著作権」の6つの項目について,配付資料とスライドをもとに丁寧に分かりやすくお話しいただいた。
 具体的な内容については,福井先生のご著書『著作権とは何か 文化と創造のゆくえ』(集英社新書,2005年)などを参照してもらえればと思うが,東京アウトサイダーズ事件,チョコエッグ・フィギュア事件,スイカ写真事件,ミッフィー対キャシー事件などを例に挙げながら,芸術文化に関する著作権上のポイントを解説してくださったので,参加者の著作権に対する理解はかなり深まったのではないだろうか。
 質疑応答は活発に行われ,楽譜の使用やオーラル・ヒストリーなどに関して質問が出た。美術学部と音楽学部をもち,制作者と研究者がいる本学は,芸術文化に関する様々な法的な問題が発生しているはずであり,何らかの問題に直面したことがある人も少なくないのではないだろうか。これからますます増えていくであろう法的な問題に対処するために,それに対する体制を早急に整備する必要性を強く感じた。

(芸術資源研究センター准教授 加治屋健司)

研修会
「芸術文化と著作権 大学という場を中心に」
日時:2014年5月30日(金)15:00—17:00
会場:京都市立芸術大学新研究棟2階大会議室
講師:福井健策(弁護士)
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