昨年,創立130周年を迎えた本学について,毎日新聞社大阪本社学芸部記者の澤木政輝氏には,平成19年の暮れから熱心に取材いただきました。
澤木氏は,その取材を基に平成20年10月から平成23年1月にかけて,「都の美~京都芸大130年~」を毎日新聞大阪本社版に計48回に亘って連載され,更に,本学創立130年記念著書として「京都芸大130年の歩み 京の美 都の響」を刊行されました。
この度,本学の歴史を並々ならぬ愛情と熱意によりまとめられ,本学の研究教育の一層の発展に貢献されました澤木氏に感謝の意を表し,感謝状を贈呈しました。
贈呈式の後は,澤木氏と本学学長・教員による懇談会において,様々な意見交換が行われました。
澤木政輝著「京都芸大130年の歩み 京の美 都の響」のご購入を希望されます方は,出版社求龍堂ホームページをご覧ください。
日本の伝統文化の一つとして古くから受け継がれている水墨画。
新しい学習指導要領で,郷土の伝統的な文化に関する指導の充実が求められていますが,水墨画の授業を行うには,専用の描画材料や指導方法のノウハウが必要になるため,小・中学校の図画工作・美術科の授業では,クレパスや水彩絵の具を使い,「墨」を使って描く機会はあまりありません。
そこで,今回,京都市立芸術大学美術学部の教職課程研究室横田教授,日本画研究室小池准教授,同研究室川嶋准教授,大学院博士(後期)課程の竹内晋平さん,修士課程日本画専攻生4名が,宇治市立伊勢田小学校において,小学校6年生117名を対象に水墨画の授業を行いました。
授業を行う前に,教員,学生一同で「どのようにして子どもたちに水墨画の魅力を伝えるか」について真剣に議論を行い,次のことを意識して授業を進めることになりました。
○ 授業では,子ども達が,手本のとおりに描くのではなく,手本を基に自分なりに描き,例えば,大根の葉っぱ一枚,犬の毛など一部だけでも綺麗に描けて,子ども達自身が「うまく描けた!」と達成感を感じることを目指す。
○ 水墨画は墨の量の調整がポイント。「墨が出なくなるまでギュッと絞る。」など,音付きで大げさに実演し,子ども達にわかりやすく伝え,墨の量の調整の感覚をつかんでもらう。
まず,子ども達をいくつかのグループに分け,教員,学生がゲストティーチャーとして,水墨画の実演を行いました。
それぞれが,子ども達に話しかけながら実演を行います。「最初から綺麗に描こうと思わず,楽しく音楽と思ってリズミカルに描きや。トントントン,シュッっていう感じ。」「みんなが普段使っている鉛筆と違って,筆一つで,まるで魔法のように色んな表現ができるんやで。」
子ども達は口々に「すげぇ。むっちゃうまい。」と興奮して見入っていました。実演を間近で見ることは,子ども達にとって貴重な経験です。
その後,子ども達が手本を見ながら描いていきます。
子ども達は,先生から教えてもらった技を最初は試すように描いていましたが,上手に描けることに驚き,そして,コツをつかんだことが嬉しい様子で,手本を見ながら犬や茄子を何枚も何枚も描いていました。
子ども達の描いた作品は,とても小学生が描いたとは思えない質の高いものに仕上がり,教えている教員や学生も,子ども達の飲み込みの早さに驚きました。
今回,取組の中心である,博士課程の竹内さんは語ります。
「専門家のことを専門家で終わらせないことが大事。スポーツというジャンルは,「生涯スポーツ」という言葉があるとおり,裾野が広く,一般的に楽しまれている。「生涯美術」という言葉があっても良いと思う。子どもの時に,本物の美術に触れ,魅力を感じてほしい。また,子どもと一緒におうちの方にも美術に触れてほしい。こういった取組を地道に続け,美術の裾野を広げていきたい。」
子ども達の作品は,11月19日(土)・20日(日)の2日間,黄檗宗大本山萬福寺で開催される萬福寺芸術祭において展示されます。お近くの方は,子ども達の力作を是非ご覧になってください。
今後も,芸術大学が持つ様々な情報や知識を,地域の文化芸術振興や美術教育の充実に生かす取組の1つとして,小学校との連携事業を進めてまいります。
※ 本研究は,本学独自の「特別研究助成」制度で採択された研究です。
「特別研究助成」制度とは,教員の自発的な特別研究を積極的に推進し,研究教育水準の向上を図るため,学長の定めるテーマに基づく研究内容を教員から募集し,学長を委員長とする委員会において提出された研究内容を審査し,採択された研究に対して,研究費を助成する制度です。