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デザイン科の学生による金環日食仮面観察会

2012.05.22

 平成24年5月21日午前7時30分頃,京都市内で金環日食が観測されました。

 金環日食は,太陽がリング状に欠けて見える非常に珍しい天文現象で,この世紀の天体ショーを芸術大学らしく観察しようと,デザイン科2回生の課題として,金環日食観察用仮面の制作が行われました。

 イメージは仮面舞踏会の仮面。ケント紙をベースに,太陽観測用の遮光フィルターをはめ込むこととされた以外,着彩と追加素材は自由となっていて,学生の個性溢れる仮面が並びました。

 5月21日当時の朝,大学校舎の屋上で行われた観察会には,デザイン科の学生に限らず,多くの学生が参加しました。

 学生は,「世紀の天体ショー。普通に観察するだけでは面白くない。」と話し,仮面をつけて金環日食の瞬間に向けカウントダウン。太陽がリング状になった時には,大きな歓声が起こりました。

 

 この課題を担当したプロダクトデザイン専攻では,自らの手で,できる限り実物のモノづくりを経験させ,実社会でのデザイン制作に生かせる造形力を軸とした資質形成を重視しています。担当教員は,「日食を見ることで人生観が変わることもある。自然の神秘を体験することで,刺激を受け,造形力に幅が出ればと思い,このテーマとした。」と話します。

 

 観察を終えた学生は,「仮面をつけて見ることで高揚感が増した。」と,仮面による観察を楽しんでいた様子。中には,「後でこの感動を思い出せるように。」と絵を描く学生もいました。

 この取組は,ニュースや新聞でも取り上げられ,学生にとって貴重な経験となりました。

 日本の伝統文化の一つとして古くから受け継がれている水墨画。
 新しい学習指導要領で,郷土の伝統的な文化に関する指導の充実が求められていますが,水墨画の授業を行うには,専用の描画材料や指導方法のノウハウが必要になるため,小・中学校の図画工作・美術科の授業では,クレパスや水彩絵の具を使い,「墨」を使って描く機会はあまりありません。

 そこで,今回,京都市立芸術大学美術学部の教職課程研究室横田教授,日本画研究室小池准教授,同研究室川嶋准教授,大学院博士(後期)課程の竹内晋平さん,修士課程日本画専攻生4名が,宇治市立伊勢田小学校において,小学校6年生117名を対象に水墨画の授業を行いました。

 授業を行う前に,教員,学生一同で「どのようにして子どもたちに水墨画の魅力を伝えるか」について真剣に議論を行い,次のことを意識して授業を進めることになりました。

 

○ 授業では,子ども達が,手本のとおりに描くのではなく,手本を基に自分なりに描き,例えば,大根の葉っぱ一枚,犬の毛など一部だけでも綺麗に描けて,子ども達自身が「うまく描けた!」と達成感を感じることを目指す。

 

○ 水墨画は墨の量の調整がポイント。「墨が出なくなるまでギュッと絞る。」など,音付きで大げさに実演し,子ども達にわかりやすく伝え,墨の量の調整の感覚をつかんでもらう。 

 まず,子ども達をいくつかのグループに分け,教員,学生がゲストティーチャーとして,水墨画の実演を行いました。
 それぞれが,子ども達に話しかけながら実演を行います。「最初から綺麗に描こうと思わず,楽しく音楽と思ってリズミカルに描きや。トントントン,シュッっていう感じ。」「みんなが普段使っている鉛筆と違って,筆一つで,まるで魔法のように色んな表現ができるんやで。」
 子ども達は口々に「すげぇ。むっちゃうまい。」と興奮して見入っていました。実演を間近で見ることは,子ども達にとって貴重な経験です。

 その後,子ども達が手本を見ながら描いていきます。
 子ども達は,先生から教えてもらった技を最初は試すように描いていましたが,上手に描けることに驚き,そして,コツをつかんだことが嬉しい様子で,手本を見ながら犬や茄子を何枚も何枚も描いていました。
 子ども達の描いた作品は,とても小学生が描いたとは思えない質の高いものに仕上がり,教えている教員や学生も,子ども達の飲み込みの早さに驚きました。

 今回,取組の中心である,博士課程の竹内さんは語ります。
 「専門家のことを専門家で終わらせないことが大事。スポーツというジャンルは,「生涯スポーツ」という言葉があるとおり,裾野が広く,一般的に楽しまれている。「生涯美術」という言葉があっても良いと思う。子どもの時に,本物の美術に触れ,魅力を感じてほしい。また,子どもと一緒におうちの方にも美術に触れてほしい。こういった取組を地道に続け,美術の裾野を広げていきたい。」

 子ども達の作品は,11月19日(土)・20日(日)の2日間,黄檗宗大本山萬福寺で開催される萬福寺芸術祭において展示されます。お近くの方は,子ども達の力作を是非ご覧になってください。

 今後も,芸術大学が持つ様々な情報や知識を,地域の文化芸術振興や美術教育の充実に生かす取組の1つとして,小学校との連携事業を進めてまいります。

※ 本研究は,本学独自の「特別研究助成」制度で採択された研究です。
 「特別研究助成」制度とは,教員の自発的な特別研究を積極的に推進し,研究教育水準の向上を図るため,学長の定めるテーマに基づく研究内容を教員から募集し,学長を委員長とする委員会において提出された研究内容を審査し,採択された研究に対して,研究費を助成する制度です。