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フランスにおける山海塾作品の評価の様相-仏紙 Le Monde の劇評を中心に-

 本研究は、日本発祥の舞踊様式「舞踏」に基づく舞台芸術作品を制作するグループ「山海塾」の、海外における受容のあり方の特徴について考察するものである。舞踏は1950年代の終わりに土方巽(ひじかた・たつみ)という人物によって創始され、西洋のクラシックバレエなどが振付の中に組み込もうとしなかった、衰弱した身体や不具の身体、あるいは日本人の身体から踊りを生み出すことを重視した。外見的な特徴としては白塗りやガニ股、顔や手を歪めて強張らせる動きなどが代表的なものとして挙げられる。山海塾は1975年に舞踏手の天児牛大(あまがつ・うしお)によって結成され、日本人の男性ダンサーのみで構成される形式を保ったまま現在までフランス・パリを拠点に活動を続けている。天児は「重力との対話」という主題に基づいて、身体の緊張と脱力を混ぜ合わせる柔らかな振付や、洗練された舞台美術などを用いた作品を制作し、世界中で高い評価を受けている。特にフランスにおいては「パリ市立劇場」というコンテンポラリー・ダンスを発信する中心的な施設との共同制作を1982年より30年以上に渡って継続しており、山海塾は日本発祥の舞踊様式を用いながら外国で大きな成功を収めたグループであると言える。

 

 本論文においては、彼らがフランスで高評価された理由を考察するための基礎的な調査として、80年代から現在に至るまでの仏紙Le Mondeの記事において彼らの作品がどのように評価されてきたかを把握・分析した。

 

 その結果明らかになった評価の様相のうち特徴的なことの一つは、彼らの作品をフランスの批評家が「儀式・儀式的」「古代・先史」「胎児・被造物」という言葉を用いて形容することが多いということである。また、90年代からは作品が「瞑想」であると評する記事が多く見受けられることも判明した。

 

 彼らの作品には確かに緩やかで美しい振付や洗練された舞台美術が使用されており、フランスの劇評においてはそれらの要素から作品が「瞑想」であると言い表されている。しかし、「瞑想」と言われる作品の実際の映像などを参照すると、土方巽や他の舞踏家にも見られるような歪んだ動きや表情などが多分に用いられている場合もあった。こうした穏やかさや洗練された美しさとは異なる要素を含む作品までも「瞑想」であると称する90年代以降のフランスの批評家の傾向には、筆者は恣意性を感じざるを得ない。そのため、本論文の締めくくりとして90年代前後にはあらゆる芸術作品を「瞑想」であるとする傾向がフランスに存在したのではないかという仮説を立て、今後はより多く当時の「瞑想」に関する現地の文化現象についての情報を集め、山海塾作品との関連性を見出すことを課題とする。

2016年度 同窓会賞 総合芸術学科 総合芸術学専攻 4回生 砥綿 栞 TOWATA Shiori

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