京都市立芸術大学では,平成26年4月1日付けで新たな研究機関「芸術資源研究センター」を発足しました。
このセンターでは,学部や学内の諸機関に分かれて蓄積されている芸術作品や資料などを整理し,それらを新たな視点から捉え直し,創造につなげることを目的に,専任研究員を中心に様々な調査研究に取り組みます。
概要
名称
京都市立芸術大学芸術資源研究センター
(英語表記 Archival Research Center 略称 ARC)
場所
京都市立芸術大学内(西京区大枝沓掛町13-6)
体制
センター所長 定金 計次 (美術学部教授)
専任研究員 加治屋 健司 (センター准教授)
兼担教員 石原 友明 (美術学部教授)
同 柿沼 敏江 (音楽学部教授)
同 藤田 隆則 (日本伝統音楽研究センター教授)
非常勤研究員 前﨑 信也 (立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員)
同 林田 新 (同志社大学・京都精華大学非常勤講師)
同 竹内 直 (日本伝統音楽研究センター非常勤講師)
同 高野 裕子 (相愛大学非常勤講師)
特別招聘研究員
彬子女王殿下
塩見 允枝子 氏 (現代音楽作曲家)
重点事業
センターではアーカイブ全般の基礎研究をもとに,以下の調査研究を重点事業に位置付け,その成果をシンポジウムやワークショップ等を通して発信していきます。
(1)オーラルヒストリー
オーラルヒストリーとは,語り手が個々の記憶に基づいて口述した内容を記録したもの及び口述資料として記録・保存,研究するもので,芸術資源研究センターでは次の3つを取り上げます。
・戦後日本美術のオーラルヒストリー
戦後の日本美術を担ってきた美術家たち,中でも本学ゆかりの陶芸家・八木一夫らの前衛陶芸グループ「走泥社」や北白川芸術村等,京都における芸術活動にスポットをあてます。
・京都画壇のオーラルヒストリー
本学にゆかりのある上村松園・松篁,榊原紫峰,堂本印象等の画家と親交のあった方々に思い出話や絵画への思いを語ってもらい,美術史,産業史,さらには生活史の面から調査研究します。
・フルクサスのオーラルヒストリー
1960年代から美術,音楽などの各分野のアーティストが分野の枠を越えて展開した国際的な芸術運動「フルクサス」に携わった人々にインタビューし,その基礎資料を作ることを目的とします。
(2)富本憲吉アーカイブ
本学の前身である京都市立美術大学で教授,学長を務めた富本憲吉の書簡資料等を富本憲吉アーカイブとして整理,活用を図り,シンポジウムの開催等を通して京都の陶芸産業や市民に還元します。
(3)記譜プロジェクト
本学の日本伝統音楽研究センターが培ってきた楽譜研究の手法を基盤に,記譜法の解析や再現を進め,記譜を新たな芸術創造の装置とみなし,その表現の多様性を探ります。
(4)森村泰昌関連文献資料アーカイブ
名画の中の人物や著名人に扮する作品で知られる,本学出身の現代芸術家・森村泰昌に関する文献資料のデータベースの構築・活用方法を検討し,各資料が書かれた当時の文化的背景を考察します。
(5)総合基礎実技アーカイブ
本学美術学部の新入生全員が各専攻に分かれる前に受講し,各分野の専門性と横断性の両立を図る講義「総合基礎実技」の課題と成果を資料化し,芸術教育に新たな展望を開くことを目指します。
※ センター開設記念シンポジウムを7月1日(火曜日)に本学講堂で開催する予定です。 詳細が決まり次第,改めてお知らせします。
芸術資源研究センター特別招聘研究員・専任研究員の紹介
・特別招聘研究員 彬子女王殿下
1981年生まれ。前立命館大学衣笠総合研究機構客員准教授,慈照寺研修道場美術研究員。専門は在外日本美術コレクション研究,文化交流史。D.Phil.(オックスフォード大学)。著書に『文化財の現在・過去・未来』(編著 宮帯出版社 2013),『写しの力 -創造と継承のマトリクス-』(編著 思文閣出版 2013)。
・特別招聘研究員 塩見 允枝子 氏
1938年生まれ。1961年東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。1964年ニューヨークに渡り,フルクサス(上記参照)に参加。1965年にメールによるイヴェント「スペイシャル・ポエム」開始。現在も作曲,パフォーマンス,視覚作品の制作など多様な活動を続けている。著書に『フルクサスとは何か』(フィルムアート社 2005年)。
・専任研究員 加治屋 健司
1971年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修士課程・ニューヨーク大学大学院美術研究所博士課程修了。PhD(美術史)。専門はアメリカと日本を中心とした現代美術史・美術批評史。2006年より日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ代表を務める。著書に『From Postwar to Postmodern, Art in Japan 1945-1989: Primary Documents』(共編著 ニューヨーク近代美術館 2012年)。