皆さん,地下鉄北山駅から京都コンサートホールへ向かう地下通路で,楽器をテーマにした作品を見掛けたことはありませんか。
その作品は,京都市立芸術大学美術学部デザイン科の学生が制作した作品です。1年ごとに新しい作品へと入れ替えを行っており,今年もデザイン科の2回生,32名が夏の課題として作品を制作しました。
今年の作品テーマは「音を奏でる楽器」です。
学生が,それぞれ一つ,好きな楽器を選び,楽器そのものではなく,その楽器が京都コンサートホールで奏でる「音楽」を表現します。
「楽器」というテーマを設定した理由は,京都コンサートホールへ向かう道のりであるからということもありますが,実は,「楽器」を含む広い意味での「道具」のデザインについて,学生に考えさせる良いテーマであるということも隠れた理由の1つです。
最近の多くの「道具」は,購入した時からその能力を十分に発揮できるように作られています。しかし,「楽器」は,購入してすぐに誰もがそのパフォーマンスを引き出せる訳ではなく,使う者がトレーニングを重ねて初めて能力を発揮することができるものであり,プロの演奏家は,その能力を芸術の領域まで高めます。
「ユニバーサルデザイン」という考え方も重要ですが,「楽器」のように,使う者によってパフォーマンスに差が出る「道具」も存在するということを理解することが,デザイナーとしての奥行きや幅を育むと考えています。
作品の材料は,白い段ボールのみで,地下通路を歩きながら楽しんでもらえるよう,立ち位置(見る角度)によって表情が変わる立体的な作品となっています。
作品を制作した学生は,
「作品を見て,コンサートに向かうワクワク感をさらに高めてもらえたら嬉しい。」
「帰りの際にも余韻に浸ってもらえたら。」
と,目を輝かせて語ります。
学生にとっては,公共の場で「作品を見られる」ということは,社会の反応を含め,デザインが社会とどう関係していくのかを体験し,そこから学ぶ良い機会です。
9月3日から新たな作品が展示されていますので,北山駅をご利用の際には,32種類の楽器が奏でる音楽を是非お楽しみください。
北山駅のアート作品展示
展示期間 | 2011年9月3日から約1年間 |
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設置場所 | 地下鉄烏丸線北山駅の改札口から出入口1までの通路壁面 |
展示サイズ | 縦1メートル,横1メートル,厚さ5センチメートル |
[写真上]教員の説明を熱心に聞く学生
[写真中]学生の制作風景
[写真下]作品の一例


