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【特別研究】「しろとくろのまほう」京都芸大×小学1年生×水墨画

2011.09.27

 みなさんは水墨画を描いた経験がありますか。水墨画とは,「墨」一色で表現される絵画で,日本文化の1つとして長い間受け継がれています。
 しかし,小中学校の授業で絵を描く時は,クレパスや水彩絵の具を使うことが多く,「墨」を使って描く機会はあまりありません。
 新しい学習指導要領で,郷土の伝統的な文化に関する指導の充実が求められていますが,いざ,水墨の授業をしようと思っても,使用する描画材料や指導方法など,これまでの授業ではなじみのない事もあります。

 そこで,京都市立芸術大学美術学部の教職課程研究室教授横田学,日本画研究室准教授小池一範及び同研究室准教授川嶋渉を中心に,京都市立石田小学校と連携して,水墨画の教材化に向けた取組みを行いましたので紹介します。

 「小学校1年生の子どもたちに墨による白と黒の濃淡やにじみの形などの表現の面白さを思いのままに楽しませたい。」という担任の先生の考えから,取組のタイトルを「しろとくろのまほう」とし,授業内容の検討を重ねました。
 ○ 墨と水の織りなすにじみやかすれなど美しい水墨表現ができ,なおかつ小学校1年生の子ど   もたちが,思い切り活動しても破れない丈夫な紙。
 ○ 子どもたちがのびのび活動できる場所の設定と指導体制。
 ○ 初めて使う筆・墨による表現に,抵抗なく取り組むことが出来る工夫   など 検討課題は沢山ありましたが,日本画材料の開発会社の協力も得て,丈夫で美しい表現が出来る紙を準備し,子どもたちが力一杯活動できる体育館を授業の場として設定しました。さらに,本学日本画専攻の学生9名がアシスタントに加わり,授業を進めました。

 授業当日の7月1日は非常に暑い日でしたが,子どもたちは,教えてもらった表し方を試しながら,体全体を使って,思う存分墨による表現を楽しみ,さらに,出来上がった作品を見て,墨の色の美しさや形の面白さに気付き驚いていました。
 また,アシスタントの学生にとっては,子どもたちとより近い目線で交流しながら,子どもたちの純粋で一途な創作意欲や好奇心に触れ,自分たちの表現活動を見直す良い機会になりました。

 横田教授は語ります。
「将来的に芸術分野の道に進む人はほんの一握り。芸術文化の発展には,それ以外の人にも芸術に興味を持ってもらい,目を向けてもらうことが重要。例えば,より多くの人が美術館を訪れ,美術品に興味を持つ。そうすれば,必然的に芸術家を目指す者も増える。小さい頃から様々な芸術に触れることでその可能性が広がっていく。」

 芸術大学が持つ様々な情報や知識を,地域の文化芸術振興に生かす取組の1つとして,9月以降も,京都市立境谷小学校での「大学生が企画する郷土の素材『竹』を使った授業」,宇治市立伊勢田小学校での「小学校高学年での水墨画の取り組み」など,小学校との連携事業を進めてまいります。

※ 本研究は,本学独自の「特別研究助成」制度で採択された研究です。
 「特別研究助成」制度とは,教員の自発的な特別研究を積極的に推進し,研究教育水準の向上を  図るため,学長の定めるテーマに基づく研究内容を教員から募集し,学長を委員長とする委員会  において提出された研究内容を審査し,採択された研究に対して,研究費を助成する制度です。