閉じる

共通メニューなどをスキップして本文へ

ENGLISH

メニューを開く

デザイン科の学生による復興支援

2011.12.08

義援金を渡すデザイン科の学生
義援金を渡すデザイン科の学生

京都市営地下鉄北山駅から京都コンサートホールに向かう地下通路に,「楽器」をテーマにした作品が数多く展示されています。

それらは,コンサートに向かう人たちのワクワク感を高めようと,京都市交通局,(財)京都市音楽芸術文化振興財団との連携により,本学デザイン科の学生が「楽器」をテーマに制作したものです。

この作品展示は,平成22年9月に始まり,1年ごとに新しい作品へと入れ替えを行う予定であったため,展示期間が終わると作品は学生の手元に返る予定でした。

京都新聞社会福祉事業団の担当者と意見交換を行う教員と学生
京都新聞社会福祉事業団の担当者と意見交換を行う教員と学生

しかし,予定していた展示期間のおよそ半分が過ぎた頃,東日本大震災によって未曽有の災害がもたらされました。

現地の惨状を前に学生はみな,「被災地を支援したい。でも具体的に何をすればいいのか分からない。」というもどかしさを抱えていました。そうした中,京都市交通局からデザイン科に,「展示作品のチャリティーオークションを実施できないか。」と提案をいただき,オークションの話を聞いた学生は「自分たちの作品が復興に役立てるなら。」と喜んで賛同しました。

オークションは,テレビや新聞等でも取り上げられ,多くの方に足を運んでいただいたおかげで,30点の作品に対し,延べ77件の入札がありました。

この収益金は,デザイン科の学生の手で,京都新聞社会福祉事業団に東日本大震災の義援金として寄付されました。
オークションに参加していただいた方,会場に足を運んでいただいた方に心からお礼を申し上げます。

 日本の伝統文化の一つとして古くから受け継がれている水墨画。
 新しい学習指導要領で,郷土の伝統的な文化に関する指導の充実が求められていますが,水墨画の授業を行うには,専用の描画材料や指導方法のノウハウが必要になるため,小・中学校の図画工作・美術科の授業では,クレパスや水彩絵の具を使い,「墨」を使って描く機会はあまりありません。

 そこで,今回,京都市立芸術大学美術学部の教職課程研究室横田教授,日本画研究室小池准教授,同研究室川嶋准教授,大学院博士(後期)課程の竹内晋平さん,修士課程日本画専攻生4名が,宇治市立伊勢田小学校において,小学校6年生117名を対象に水墨画の授業を行いました。

 授業を行う前に,教員,学生一同で「どのようにして子どもたちに水墨画の魅力を伝えるか」について真剣に議論を行い,次のことを意識して授業を進めることになりました。

 

○ 授業では,子ども達が,手本のとおりに描くのではなく,手本を基に自分なりに描き,例えば,大根の葉っぱ一枚,犬の毛など一部だけでも綺麗に描けて,子ども達自身が「うまく描けた!」と達成感を感じることを目指す。

 

○ 水墨画は墨の量の調整がポイント。「墨が出なくなるまでギュッと絞る。」など,音付きで大げさに実演し,子ども達にわかりやすく伝え,墨の量の調整の感覚をつかんでもらう。 

 まず,子ども達をいくつかのグループに分け,教員,学生がゲストティーチャーとして,水墨画の実演を行いました。
 それぞれが,子ども達に話しかけながら実演を行います。「最初から綺麗に描こうと思わず,楽しく音楽と思ってリズミカルに描きや。トントントン,シュッっていう感じ。」「みんなが普段使っている鉛筆と違って,筆一つで,まるで魔法のように色んな表現ができるんやで。」
 子ども達は口々に「すげぇ。むっちゃうまい。」と興奮して見入っていました。実演を間近で見ることは,子ども達にとって貴重な経験です。

 その後,子ども達が手本を見ながら描いていきます。
 子ども達は,先生から教えてもらった技を最初は試すように描いていましたが,上手に描けることに驚き,そして,コツをつかんだことが嬉しい様子で,手本を見ながら犬や茄子を何枚も何枚も描いていました。
 子ども達の描いた作品は,とても小学生が描いたとは思えない質の高いものに仕上がり,教えている教員や学生も,子ども達の飲み込みの早さに驚きました。

 今回,取組の中心である,博士課程の竹内さんは語ります。
 「専門家のことを専門家で終わらせないことが大事。スポーツというジャンルは,「生涯スポーツ」という言葉があるとおり,裾野が広く,一般的に楽しまれている。「生涯美術」という言葉があっても良いと思う。子どもの時に,本物の美術に触れ,魅力を感じてほしい。また,子どもと一緒におうちの方にも美術に触れてほしい。こういった取組を地道に続け,美術の裾野を広げていきたい。」

 子ども達の作品は,11月19日(土)・20日(日)の2日間,黄檗宗大本山萬福寺で開催される萬福寺芸術祭において展示されます。お近くの方は,子ども達の力作を是非ご覧になってください。

 今後も,芸術大学が持つ様々な情報や知識を,地域の文化芸術振興や美術教育の充実に生かす取組の1つとして,小学校との連携事業を進めてまいります。

※ 本研究は,本学独自の「特別研究助成」制度で採択された研究です。
 「特別研究助成」制度とは,教員の自発的な特別研究を積極的に推進し,研究教育水準の向上を図るため,学長の定めるテーマに基づく研究内容を教員から募集し,学長を委員長とする委員会において提出された研究内容を審査し,採択された研究に対して,研究費を助成する制度です。