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現代の遊びについての考察 -玩具で見る遊びの現状から-

―(論文要旨)―


 本研究は、「美術」という活動に携わる自身の立場から、美術の活動源となる面白さの探求、つまり「遊び」への関心が動機となって始まった。そこでまずは、「遊びとは何なのか」・「玩具とは何か」といった問題から着手し、多様な観点から考察を進めた後で、「今、求められる遊び」を一つの具体的な形として提案することを研究の目的とした。


 まず、第1章の「遊びについて」では、遊びに関する過去の先行研究を基に遊びの本質について考察した。主に、Michael.J.Ellisの覚醒追及理論やRoger.Cailloisの遊び概念、Jean.Piagetの発達段階説などの考察を踏まえて、「遊びは仕事のように特別生産的な活動ではないが、日々の生活を支え、人間をより豊かなものにするといった意味において重要な活動である」と自らの見解を述べた。


 次に、第2章の「玩具について」では、玩具を取り巻く現状について分析した。そして、玩具とは「玩具」という物を販売していながら、私たち遊び手はその中に含まれる「遊び」というイメージを購入しているのではないかという考えに至り、「玩具は、遊び手と作り手を繋ぐメディアである」と定義した。つまり、玩具の作り手である企業は、如何にしてより面白そうな「遊びのメッセージ」を玩具に託すのかが問われているのだと言える。


 続いて第3章の「遊びの視点で見る現代の玩具」では、第1章と第2章で導き出した考察結果を踏まえて、遊びの視点から現代の玩具について考察した。ここでは、質問紙調査や分類の試み、売れ筋商品の検討を経て、「現代の玩具には、象徴性やルール性といった遊びのイメージが最初から作り手によって載せられ過ぎている」と分析した。


 そして、第4章の「遊びの提案」では、第3章で明らかになった現代の遊びの問題点を解決する為に、「今、求められる遊び」について考察し、新しい遊びの提案を行った。これまでの考察内容を全て考慮すると、今求められる遊びとは、「遊び手がルールを主体的に創造出来る遊び」ではないかと考えたが、一方で現代の遊び、特にコンピュータゲームの分野においては、プレーヤーがルールを創造しにくいという現状が見えてきた。そこで、「遊び手も主体的にルールが創造できる遊び」を目指す為に、オンラインゲームのシステムを提案するに至った。


 ここでは、そのシステム上で遊ぶルールの一例として、Google Earthのプラットフォームを利用して「鬼ごっこ」を展開する「Brain-Tag」というタイトルを挙げている。従来のコンピュータゲームでは実現が難しかった、「プレーヤーによるローカルルールの創造」・「仮想現実世界で味わえるリアルな遊びの体験」・「現実か非現実かに終息しない遊びの自由な選択」の実現に向けて具体的な提案を行った。 現時点では、この遊びを実際に試用し、その結果について確かめることは出来ないが、これまでの考察から明らかになった現代の遊びの問題や課題は少しでも軽減されるのではないかと考える。そして、ここで提案した遊びは、アイテムの所在やその具体的な機能などについて更に工夫することで、まだまだ多くの可能性を含んでいると考えられる。


 本来、遊びとは無目的なものだが、可能ならば、単なる「遊び」にとどまらず、遊びが社会に利益を還元出来る形が望ましい。本研究は、様々な角度から遊びの重要性について考え、当初からこうした研究の成果を更に社会に生かしていくことを目標にしてきた。 本論文だけで話を完結させてしまうのではなく、ここで述べた具体的な成果については、卒業後の仕事を通して検証し、社会に還元していきたいと考える。

2008年度 奨励賞 総合芸術学科 総合芸術学専攻 4回生 村上 咲 Saki Murakami

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