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令和3年度京都市立芸術大学入学式を挙行しました。

2021.04.09

 令和3年4月9日,令和3年度京都市立芸術大学入学式を執り行いました。

 美術学部135名,音楽学部65名,美術研究科修士課程73名,音楽研究科修士課程24名,美術研究科博士後期課程6名,音楽研究科博士後期課程1名の総計304名が,ご来賓の門川大作京都市長,保護者の皆様,教職員に温かく見守られ,入学式に参加しました。

 

 

 また,開式にあたって,音楽学部・研究科在学生が,本学の下野教授のタクトの下,歓迎演奏を行いました。新入生はそれぞれの思いを胸に抱き,期待に満ちた表情が輝く晴々とした顔で参加されていました。

 新入生の皆さん,御入学おめでとうございます。皆様の大学生活が,実りある人生の1ページとなりますように。教職員一同,心よりお祝い申し上げます。

2021年度 入学式式辞

 本日ここに集われた美術学部135名,音楽学部65名の学部生の皆さん,大学院美術研究科73名,音楽研究科24名の修士課程の皆さん,そして美術研究科6名,音楽研究科1名の博士課程の皆さん,総勢304名の皆さんの入学ならびに進学,誠におめでとうございます。京都市立芸術大学は,みなさんを心から歓迎いたします。
 新型コロナウィルス感染防止対策のため,本日は美術と音楽を分けて2部制といたしました。例年ならばご列席いただくご家族や関係者の皆様には,動画ライブ配信でご視聴いただいております。

 さて,新入生のみなさんは,受験準備の昨年一年間を,コロナ禍のために不安と緊張の中で過ごしてこられたと思います。活動が制限され,予定していた行事が中止になって何度も悔しい思いをされたことでしょう。自分や家族が感染するかもしれない不安の中,ひたすら努力を続けて,こうして京都市立芸術大学に入学をされたみなさんに敬意を表すとともに,この間もずっと芸術の道に夢を持ち続けてくれたことを嬉しく思います。
 京都芸大でも昨年の春は,大学施設の使用制限の為に入学式ができず,授業開始を遅らせ,さらに実技も含むすべての授業を遠隔で始めるという,前代未聞の年度始めでした。感染拡大予防対策の準備を整え,秋になりようやく本格的に学生たちの姿が戻ったものの,感染者数の増加や医療体制の逼迫など,現在もまだ予断を許さない状況は続いています。今後も学内の安全と安心な環境に最大限に配慮する日々が続きます。新入生の皆さんにも,大人数での飲食の自粛や感染予防マナーの徹底など,分別のある行動にご協力をお願いします。

 ところで,本日の入学式は,講堂に入場する人数を制限し2部に分け,さらに時間を短縮しています。様々に考えて対策を徹底する中,従来の式典のプログラムで削らなかったものがあります。それは先ほどの新入生全員の名簿の読み上げです。今は声を出して返事をすることさえ制限される状況ですが,みなさんはきっと心の中で,しっかりと返事をしてくれたことと思います。
 入学式や卒業式で名前を呼ばれ返事をして起立することは,幼い頃から繰り返してこられたでしょうから,最も形式的なものと感じられたかもしれません。他大学,特に大きな総合大学ではそもそも平常時であっても,入学式で何千人もの新入生の名簿の読み上げることはないと聞きます。今回,式典の規模を縮小するために改めて一つ一つのプログラムの意味や優先順位を考える中で,私たちは学長式辞や来賓祝辞を短くしても,大学として新入生お一人お一人の名前を呼びそれに応えていただくという,このことが,実は私たち京都芸大の入学式で欠かしてはならない,大切なものであると考えるに至りました。

「少人数教育を旨とする本学の最も誇るべきは,教職員が学生一人一人を顔のある存在として遇し,ともに教育研究に励むところにあるはず。多くの大学が学籍番号で学生を管理する中,名前の読み上げには,個々の学生をかけがえのない存在として尊重する,大学からのメッセージが込められている。」

 これは,フルート奏者であり,音楽学部教授でもある大嶋副学長が,式次第を決める協議の中で強い思いを語られた言葉です。

「芸術の道を進み,そのキャリアを形成していく中で,徐々にその世界で名前を知られ,呼ばれ,それに応えること。それが芸術家としての存在を確立することだ。しかし,芸術を志す者にとって,本当の意味でその名前を呼んでほしいのは,誰だろうか。それはコンクールの審査員でも,取り巻きのファンでもない。もしあなたが芸術を心から求め,極めたいのなら,それは「芸術」そのものからの呼びかけであるはずだ。」

と,このようなお話を先生から伺いました。

 「芸術」からの呼びかけ,とても魅力的な言葉です。その呼びかけに応えることであなたの芸術はきらめきを増し,ますます豊かなものになることでしょう。そしてそれは創作や演奏,研究に真摯に向き合い,精進し続ける者のみに訪れる一瞬です。ここにいる皆さんは,「芸術」からその価値のある人として選ばれ,呼びかけられて,入学を果たされました。140年の長い歴史の中で芸術と向き合ってきた大学として,かけがえのないあなたの名前を呼ぶことが,皆さんに贈るにふさわしい祝福であると考え,本日も新入生名簿の読み上げをさせていただきました。

 さて,現在の沓掛校舎は緑豊かな,制作・練習・研究に打ち込める環境ではありますが,建物の耐震性やバリアフリーの問題などもあり,これらを解消するために,そして未来に向けて大学が一層飛躍していくために,JR京都駅の東,崇仁地域へ,2023年度にキャンパス全面移転を予定しています。私は,40年以上前,この沓掛校舎への移転を控えた頃,美術学部のあった今熊野校舎で京都芸大に入学し,この沓掛校舎への移転を学生として経験しました。ここにいらっしゃる学部生のみなさんも,学生時代に移転を迎えることになります。
 移転に向けては,テラスのように社会にむかって自由に開かれることを基本構想として,現在準備を進めているところです。いよいよこれから,それぞれの研究室で準備が加速していくことでしょう。先生方が京都芸大の将来に向けて考え,取り組むことを,そばで見て,聴いて,時には一緒に考える。私たちが経験したあの頃と同じです。そんなことが,きっとみなさんの未来につながると思います。

 最後に,この場におられる皆さんは,今年の早咲きの桜をご覧になったでしょうか。昨年の世界各地のパンデミック,ロックダウンの中でも,花たちは変わらず美しく咲いていました。そして一年が経ち,今年も春を迎え,再び花々は咲き誇っています。コロナは季節を止めることはできません。そして人々の歩みを止めることもできません。
 どうかみなさん,厳しい制約に不自由を感じても,これからも歩みを止めず,この時代の芸術という自由の花を咲かせるために,アーティストや研究者としての,自らの世界を作り上げることを目指してください。京都市立芸術大学のよさ,おもしろさを存分に生かして,皆さんにとっての大学生活が充実したものになりますよう,心からお祈りしいたします 。

 ライブ配信をご視聴いただいているご家族の皆様に一言申し上げます。この一年間,コロナの影響で不自由を余儀なくされた学生たちを,そばで支えていただいたことに感謝を申し上げます。ご家族の存在はこれからも大きな支えとなります。彼らの芸術に向かう姿勢を信じて,今後も見守ってくださるようお願い申し上げます。本日は誠におめでとうございます。 

 これをもって,お祝いの言葉とさせていただきます。

令和3年4月9日
京都市立芸術大学学長
赤松玉女