染織専攻では,さまざまな繊維素材を用いて染めと織りの技法を習得し,専門の知識を深め経験を重ねながら自己研鑽することで,卒業後の進路を見出す手がかりにつながる授業を行っています。
今回は,「ミクストメディア・テキスタイル」授業の一部をご紹介します。
2013年度は,大学に寄贈いただいた民族資料「マヤ・アンデス染織—石原コレクション」を軸に授業を展開しています。授業は,実物の資料を手にとり,そこに使われた染織技法を学び,実際に技法を経験してみるところから始まりました。さらに,関連する映像資料や文書などから,学生自身がどのように実物の資料と関わっていくのか,考察を進めました。
<民俗資料を手に取り,そこに使われている技法を経験する>
資料をきっかけにして学んだこと,感じたこと,発見したことを,二つの方向で創造活動を試みます。
一つは,各自が,今回触発されて生まれた発想を,自由に造形作品へと展開させることです。もう一つは,学外の機関とのコミュニケーションをはかりながら,ジャカード織機(1801年にフランスの発明家ジョゼフ・マリー・ジャカールによって発明された自動織機)による広幅のテキスタイル制作することです。
学生は,資料から得たインスピレーションを元に,織物用の図案を作成しました。
<学生が考案した図案とそのメモ>
さらに,西脇市にある兵庫県立工業技術センターを訪れて,織物の制作現場を見学しました。
<兵庫県立工業技術センターの様子>
同センターは,繊維製品の創造的技術の自主・共同開発,高度技術による新商品開発と高付加価値化など業界のための技術支援をされており,先染織物の商品開発や,繊維製品の多用途分野への展開,先染織物の生産技術のシステム化などを行っておられます。
今回は,同センターに協力を申し出ていただいたことにより,学生の図案を,工業用織機を使って試作した後,同センターの古谷所長自ら学生一人一人とやりとりして,細かい点まで工夫して織り上げてくださいました。
でき上がったテキスタイルが教室に運びこまれると,学生から驚きの声があがりました。
<同センターで織り上げられる途中のテキスタイルと,教室で古谷所長から説明を受ける学生>
学生にとっては自らがデザインした織物を,他者と協力し合いながら制作するという,量産におけるものづくりを体験する貴重な機会となっています。
このような経験を経た染織専攻の卒業生は,多くの方がテキスタイルやファッション等のデザインや企画などの現場でも活躍しています。
また,今回制作したテキスタイルは,寄贈を受けたマヤ・アンデスの染織資料や,もう一つの試みの造形作品とともに,展覧会「Collection / Connection -マヤ・アンデス染織につらねる新しいカタチ-展」(2014年1月7日〜15日,ギャラリー@kcua)において展示予定です。