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大船鉾の裾幕などを京芸生がデザイン提案

2013.08.02

 8月1日(木曜日),来年度の祇園祭で巡行復活を目指す大船鉾保存会(※1)に,京芸生が,鉾の裾幕と音頭取りの衣装のデザインを提案しました。

 提案するのは,美術学部の授業,テーマ演習(※2)「祇園祭と浴衣」に参加する3・4回生と大学院修士生27人。150年ぶりの大船鉾の復興に向けて準備を進める公益財団法人祇園祭山鉾連合会及び公益財団法人四条町大船鉾保存会は,裾幕及び音頭取りの衣装(※3)の制作に,今後の祇園祭を支える若い世代が携わることに賛同され,また,本学が130余年にわたり,世界に誇る芸術家を輩出してきた教育・研究システムやその技術を評価していただき,提案する機会が実現しました。

 

 デザイン画は,裾幕は5班に分かれて2点ずつ計10点,音頭取りの衣装は1人1点ずつ計27点を制作。学生は,事前に祇園祭や制作に必要な見識を深めるとともに,同保存会の方々からデザインの希望を伺って,制作を開始。その後,事前の学内プレゼンテーションにおいて公益財団法人祇園祭山鉾連合会の吉田孝次郎理事長や染色会社「スギシタ」の杉下永次氏から一人一人にアドバイスをいただき,実際に祇園祭の山鉾や音頭取りの様子を観察することで,デザイン画を洗練させ,自信を持ってプレゼンテーションに望みました。

 裾幕は,縮小したサイズで全体像を見せながら,波頭の部分を原寸大サイズで提示します。保存会の方はデザイン画を見たり学生の説明を聞きながら,「実際に大船鉾に取り付けたらどうか」と思案顔です。 

 

 音頭取りの衣装では,凱旋鉾である大船鉾を象徴する「凱」の字を使ったものや,斬新な波模様をあしらったもの,紋をデザインとして配置したものなど,それぞれが大船鉾に相応しいテーマを設定して仕上げてきました。その出来映えに,保存会の方々は,「音頭取りの動きまで良く考えて配置されている」,「学生ならではの大胆なデザイン,面白いデザインばかりで迷う」と,口々におっしゃられました。

 

 衣装を監督される木村忠夫氏は,「迷うほどレベルが高かった。大船鉾の趣旨に合うものを選ばせていただくことになるが,選ばれなかったものがダメというわけではない。面白いデザインがたくさんいただけて感謝している。」と話されました。

 担当の吉田雅子准教授は,「授業では,祇園祭の伝統を尊重しながら,今日に生きるデザインを提案できるようにアドバイスしてきましたが,学生は,デザイン全般を監督する滝口洋子教授,染織表現と技法を監督するひろいのぶこ教授,三橋遵教授のアドバイスをよく吸収し,最終的には,保存会の希望するデザインの意味を理解して反映されることができていました。授業のたびに水準が上がっていって,その成長は目を見張るものありました。」と,期待以上の学生の成長ぶりと完成度を率直に褒めておられました。さらに,「京都の文化が持つ,教科書や図版では分からない約束やしきたりなどの伝統を担う方々から直接話を聞き,紋様のデザインや祭礼の在り方などを学びながらデザイン提案できたのは,大船鉾保存会の御理解と御協力のおかげです。そして,採用していただけるレベルのデザインが提案できたのは,さまざまな専攻・学年の学生が集まって,互いのアイデアを学び合ったり,複数分野の教員がアドバイスできる「テーマ演習」という授業ならではの結果だと思います。」と話されました。

 今後開催される大船鉾保存会の理事会において,提案したデザインの中から採択される見通しです。

 

※1 大船鉾(おおふねほこ)

 大船鉾は,後祭(あとまつり)の鬮(くじ)取らずとして殿(しんがり)をつとめ,前祭(さきまつり)の船鉾が出陣船鉾と称されるのに対し凱旋船鉾といわれていました。500年余りの歴史を持ち,江戸時代の再三の大火に被災するも復興を繰り返してきましたが,幕末の元治元年(1864年)「蛤御門の変」の大火にて木組や車輪を焼失し,それ以来巡行に参加することはありませんでした。

しかし,幸いにもご神体人形や舳(へさき)を飾る大金幣(だいきんぺい),織物・刺繍の技術を使った大舵や水引・前懸・後懸等の懸装品(けんそうひん)が焼失を免れ「居祭(いまつり)」として宵山飾りを続けてきました。近年町内で復興の機運が高まり,本年より御神面(ごしんめん)の唐櫃(からひつ)を担い,囃子を伴い約140数年ぶりに巡行参加が決まりました。また,各方面からの御援助により,胴組木部・車輪の復元が出来,京都市無形文化遺産展示室(烏丸通七条下る西側)に展示されています。今後は屋根や装飾品を復元し,早い時期に幕末の大火で焼失した以前の形態での巡行を目指しています。

※2 テーマ演習

 京都市立芸術大学美術学部独自の横断教育カリキュラムで,一定のテーマに沿って,学生と教員が専攻を越えて実践的な研究活動を行い,芸術に関わる幅 広い視野と探究心,コミュニケーション能力を養う授業です。

※3 裾幕,音頭取り

 音頭取りは,山や鉾の骨格である胴組を組み立て,縄がらみをほどこすのを主としている「手伝い方」が努めています。巡行中は二人が山や鉾の前面に立ち,扇子とかけ声で山鉾を曳く人に合図を出したり,辻回しのときには人数を四人に増やして雰囲気を盛り上げるのがその役目です。

 また,裾幕は,山鉾の下方につける細長い幕のことです。