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大船鉾の裾幕,音頭取りの衣装に, 京都市立芸術大学の学生が提案したデザインが採用されました

2013.09.11

 京都市立芸術大学の学生が,大船鉾保存会に提案した大船鉾の裾幕と音頭取りの衣装のデザインが採用されました。

 祇園祭の山鉾巡行が,2014年から49年ぶりに7月17日(前祭(さきまつり))と24日(後祭(あとまつり))の2日間に分離して実施されることが,8月30日に正式に決まり,かつて後祭の最後尾を務めた大船鉾の巡行復活に向けて,京都芸大の学生がお手伝いさせていただくことになりました。

 採用されたデザインは,裾幕1点と音頭取りの衣装2点です。

 

【裾幕】

 裾幕は,山鉾の下方につける縦60㎝×横5mの細長い幕で,鉾の両側面に取り付けます。

 デザインした学生は,佐藤 花音さん,三富 翔太さん(以上,日本画専攻3回生),東穂 愛子さん(日本画専攻4回生),覺野 真規子さん,木塚 奈津子さん,花岡 ゆうさん(以上,油画専攻3回生)の計6名のグループです。 

 選考結果について,リーダーの覺野さんは,「採用の連絡をいただいた時は驚きしかなかったです。大船鉾保存会の皆さんへのプレゼンテーションの二日前までメンバーのみんなにアドバイスをもらいながら改善を繰り返したものだったので,苦労した甲斐があって本当によかったと思います。手伝ってくれた皆には感謝でいっぱいです。」と,喜びの声を寄せられました。

 覺野さんをはじめるとする学生たちは, 「歴史ある祇園祭の,しかも大船鉾に使われる裾幕ということで,自分本位にならないようあくまで伝統ある青海波の形体を守ることを念頭に置いてデザインしました。トラディショナルな半円形の波が連なる形を残しつつ,その枠の中で 今を生きる自分なりの感性を加えて遊びを入れたりリズム感や動きを出していくことを意識しました。伝統と近代のギリギリの境目を自分の中で追求したデザインです。」と,デザインをする上で大船鉾保存会からのオーダーを守りながらも,大船鉾の巡行をよりダイナミックに見せるデザインを仕上げました。

 

【音頭取りの衣装】

 音頭取りの衣装は,山鉾巡行に登場する音頭取り6名の衣装と,曳き初め(ひきぞめ)に登場する音頭取り2名の衣装の2種類が採用されました。

 音頭取りは,巡行中は二人が山や鉾の前面に立ち,扇子とかけ声で山鉾を曳く人に合図を出したり,辻回しのときには人数を4人に増やして雰囲気を盛り上げるのがその役目です。

 

 山鉾巡行用の衣装をデザインしたのは,井澤 茉梨絵さん(油画専攻 3回生)。

 「大船鉾の象徴である「凱」の字をアレンジして全体を構成しました。太い直線によって日本的で男性的な力強さを出し,また遠くから見ても映えるように,シンプルではっきりとしたデザインにしました。選ばれてとても驚きましたが,気に入っていたデザインなので嬉しいです。」と,選考結果に喜びの声を聞かせてくれました。

 「わたしは油画専攻で普段は自由に描きたい絵を描いていますが,今回のテーマ演習(※)に参加して,制約のある中でデザインを考えるのも好きだと感じました。今後こうしたコラボレーションする機会があれば,積極的に取り組んでいきたいです。大変貴重な経験をさせていただき,ありがとうございました。来年の祇園祭が楽しみです。」と,デザイン提案に参加できた感謝と衣装完成への期待を膨らませていました。

 

 曳き初め用の衣装をデザインしたのは,西田 千紗さん(版画専攻3回生)。

 「曳き初め」は,組み立てた山鉾を巡行よりもひと足早く,試しに動かしてみる行事で,祇園囃子の演奏やかけ声も本番さながらに,ひき綱をひいて山鉾を動かします。

  「衣装の表には航海の安全を願うおだやかで雄大な波を,背面には凱旋船鉾とも呼ばれる大船鉾にちなんで「凱」の文字を大きく配するとともに,船を動かす荒波の力強さをイメージしてデザインしました。」と,後祭の最後尾を巡行する大船鉾の音頭取りを生き生きと見せるデザインに仕上がりました。 選考結果について,「今回,大船鉾の衣装デザインを提案させていただくという,またとない機会に自分の案を採用していただき本当に光栄です。伝統的な祇園祭を,作る者の立場から考えることで,また違った面白さを知ることができました。この貴重な経験を今後の制作にも繋げていけたらと思います。」と,芸術に携わる上で素晴らしい経験になったことの喜びを語ってくれました。

 

【これまでの経過と今後の予定】

 今回のデザイン提案は,150年ぶりの大船鉾の復興に向けて準備を進める公益財団法人祇園祭山鉾連合会及び公益財団法人四条町大船鉾保存会が,大船鉾の裾幕及び音頭取りの衣装の制作に,今後の祇園祭を支える若い世代が携わることに賛同され,また,本学が130余年にわたり,世界に誇る芸術家を輩出してきた教育・研究システムやその技術を評価していただき,提案する機会が実現しました。

 8月1日(木)に行われた大船鉾保存会へのプレゼンテーションには,美術学部の授業であるテーマ演習「祇園祭と浴衣」に参加する3・4回生と大学院生の計27人が,裾幕は5班に分かれて2点ずつ計10点,音頭取りの衣装は1人1点ずつ計27点のデザイン画を提案しました。その後,デザイン画は,8月4日(日)に開催された同保存会理事会において選考され,採用が決定しました。

 

 今後は,裾幕は,採用されたデザイン画に基づいて,本学学生が,教員及び京都市内の杉下永次氏(染色会社「有限会社スギシタ」代表取締役)から染織技術提供と表現・技法の助言を受けながら,今秋に制作する予定です。また,音頭取りの衣装は,有限会社スギシタによって制作されます。制作にあたっては,田中直染料店にご協力いただき,染料と薬品を提供していただきます。

 

※ テーマ演習

 京都市立芸術大学美術学部独自の横断教育カリキュラムで,一定のテーマに沿って,学生と教員が専攻を越えて実践的な研究活動を行い,芸術に関わる幅 広い視野と探究心,コミュニケーション能力を養う授業です。

 

(関連するお知らせ)

大船鉾の裾幕などを京芸生がデザイン提案(8月2日掲載)