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第156回 定期演奏会 出演者インタビュー①声楽

左から 木下さん,廣田さん,講殿さん

第156回 定期演奏会を前に,ソリストを務める3人にお話を聞きました。

  • ソプラノ:講殿 由紀奈(大学院修士課程声楽専攻2回生)
  • テノール:木下 紀章(大学院修士課程声楽専攻1回生)
  • バス:廣田 雅亮(大学院修士課程声楽専攻1回生)

interviewer_music声楽を始めたきっかけを教えてください

講殿 他の人とは違うことがしたくて,小学6年生のときに,当時ピアノを習っていた先生にピアニストになりたいと言ったんです。すると先生から,ピアニストを目指すのであれば,毎日5時間は練習が必要だし,指導も他の先生から受けないといけないと告げられました。私はピアノの練習が好きではなかったし,先生が変わることになるかもしれないことがショックで大泣きしました。するとその先生がちょうど声楽出身の方で,じゃあ歌をやったら?と言われて始めたのがきっかけです。

木下 元々人前で何かをして喜ばせるのが好きで,小学校のときも演劇クラブに入って台本を書いたりしていたんです。それで,小学校6年生のときにテレビで3大テノールを聴いたのですが,その中でもパヴァロッティの拍手が一番長くて,私もこんな風に拍手の鳴り止まない人になりたいと思いました。だから別に歌じゃなくても良かったんです。結果的に歌をやっていますけど。でも,根本的には最初に言ったように人が喜んでくれるのが好きなんです。

廣田 高校生のときは音楽科に通っていてピアノを弾いていたんです。それで,音楽科はソルフェージュという時間があって歌を歌ったりするんですが,その時間に先生に「うまいなあ,歌にしない?」と不意に言われて,それがきっかけで,歌を始めたんです。

interviewer_music声楽は体が楽器だと言われることがよくありますが,コンディションを良く保つために心がけていることはありますか?

講殿 私は風邪を引かないようにということで,薬効のあるハーブティーの知識を仕入れ,趣味にしています。また,体調が悪い時には寝るという人が多いんじゃないかと思いますが,逆に免疫力を上げるために走るなどアクティブに過ごしています。

廣田 当たり前のことですが,喉だけでなく体も不調にならないようにすること。特に,姿勢には気をつけています。寝て起きたら寝違えしていることがありますよね。だけど首に何か違和感があるだけでも演奏するときに気にしてしまうと思うんです。だから,いつでも姿勢には注意をしています。

interviewer_music今回シューベルトのミサ曲を演奏されますが,この曲について特に取り組んだこと,苦労したことはありますか?

講殿 中低音が苦手ですが,ミサ曲はその音域が重要なので特に集中的に練習しました。

木下 オペラとは違い,自分のいい声を出すだけではなく,他のソリストの声とのバランスを考えながら歌うことは,今回の演奏会だけでなく,他の演奏会やオーディションでも心がけています。

廣田 歌う箇所で一定に響きを保って歌うことを心がけました。

interviewer_musicこの曲の聴きどころを教えてください。

講殿 最後の方にアニュス・デイという部分があります。そこでソプラノが最初中低音で歌っていますが,次にソプラノが出てきたときに1オクターブ上で歌います。1オクターブ違うだけで,和音や歌詞も同じなのに響きが違うので,意味合いが変わってくると思います。その部分が私のお気に入りです。

廣田 アニュス・デイのソプラノはもちろんですが,同じくアニュス・デイにおいて,他のベネディクトゥスなどは掛け合いなどをしている中で,ここでは合唱なども入らずバスもソロになっています。なので,ここは色々な意味で,聴きどころではないでしょうか。

木下 私に関してはベネディクトゥスしかなく,聴きどころというのはあまりなくて(笑)。テノールはアンサンブル中心なんです。それでも,テノールを聴けるのはそこしかないので注目していただけたら,と思います。

廣田 まあ,総じて言えば講殿さんの部分じゃないですか。

interviewer_music京芸オケとの共演に向けての抱負を聞かせてください。

木下 いわゆる教会のオケというのは,現代のオケよりも規模が小さかったりしますし,京芸の合唱は女声が多かったりします。どのようなオケなのかというのは毎回あけてみないとわからない部分があるので,どのような場面でも合わせるという努力はしたいと思います。

講殿 自主公演で共演させていただいているので,ホームグラウンドのような温かい環境でできるのは幸せなことだと思います。そして何より,秋山和慶先生の指揮で歌えることはとても貴重なことなので,たくさん学びたいと思います。

interviewer_music最後に演奏会のお客様に向けてメッセージをお願いします!

木下 元々ミサというのは教会の儀式で行うものですから,本当はキリエがあってグローリアがあって,教会の司祭さんのお話があってそれに対してクレドがあって,そしてその後にまたお話があって献金があってサンクトゥス,ベネディクトゥスに続いて…という流れに私は慣れているんです。日本ではそれを演奏会として取り上げているから,1曲終わって,はい次というのがとても不思議なんです。ですから,できれば教会の音楽とはどういうものなのかをあらかじめ知っておいていただければ,より楽しんでいただけると思います。

廣田 オペラとはまた違う響きを楽しんでもらいたいと思います。あまり演奏会として聴く機会もないと思うので,いろんな人に来ていただけたら嬉しいです。

講殿 ミサはキリスト教のものですけど,来てくださる方々は,皆さんがキリスト教信者というわけではないと思います。でも,宗教を超えて,聴いてくださる方々の心をまっさらにできるような歌を歌えたらと思います。

講殿,木下,廣田 私たち偶然みんなB型なので,感受性豊かなB型のハーモニーをお聴きください(笑)。

インタビュアー:山本恵利佳(音楽学部音楽学専攻2回生)

写真:桒田萌(音楽学部音楽学専攻2回生)

(取材日:2017年10月30日・本学新研究棟にて)

Profile:木下 紀章【きのした・のりあき】(写真左)

京都市立芸術大学を卒業後,2004年よりウィーン国立音楽大学研究課程声楽科に在籍し,教会のソリストとして多くのミサを務める。2011年,ヴェルディ《椿姫》アルフレード役のカヴァーで帰国中に,佐野成宏氏の急病代役で鮮烈にオペラデビュー。2013年,東京春音楽祭にてセバスチャン・ヴァイグレ指揮,NHK交響楽団によるワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》にフォーゲルゲザング役として出演。また2014年には,小澤征爾音楽塾によるモーツァルト《フィガロの結婚》に参加し,ドン・クルツィオ役で特別演奏会に出演する。現在,京都市立芸術大学大学院音楽研究科修士課程に在籍し,北村敏則准教授に師事。二期会会員。

Profile:廣田 雅亮【ひろた・まさあき】(写真中央)

大阪府立夕陽丘高等学校音楽科 卒業。京都市立芸術大学音楽学部声楽専攻卒業。第8回東京国際声楽コンクール歌曲部門第4位(1位なし)。第3回さかい九頭竜音楽コンクールさかい市長賞受賞(全部門最高位)。現在,京都市立芸術大学大学院音楽研究科修士課程に在籍。大阪府立泉大津高等学校音楽非常勤講師。

Profile:講殿 由紀奈【こうどの・ゆきな】(写真右)

京都市立芸術大学音楽学部声楽専攻を首席で卒業。卒業時に京都市長賞,京都音楽協会賞を受賞。第7回横浜国際音楽コンクール大学生の部第2位。学内オペラではモーツァルト《フィガロの結婚》にスザンナ役,プッチーニ《ラ・ボエーム》にムゼッタ役,木下牧子《不思議の国のアリス》にアリス役で出演。これまでに古河正枝,久能有希子,日紫喜恵美の各氏に師事。平成27年度青山財団奨学生。現在,京都市立芸術大学大学院音楽研究科修士課程に在籍。