現代美術の保存修復/再制作の事例研究 ―國府理《水中エンジン》再制作プロジェクトのアーカイブ化 シンポジウム「過去の現在の未来2」関連展示 の報告

   

 

國府理(1970~2014,京都市立芸術大学 美術研究科 彫刻専攻修了)は,自作した空想の乗り物やクルマを素材に用いた立体作品などを通して,自然とテクノロジー,生態系とエネルギーの循環といった問題を提起してきた美術作家である。國府は2014年,国際芸術センター青森での個展「相対温室」の作品調整中に急逝した。2012年に京都のアートスペース虹で発表された《水中エンジン》は,國府自身が愛用していた軽トラックのエンジンを水槽に沈め,水中で稼働させる作品である。エンジンから放出された排熱は揺らめく水の対流と泡を発生させ,幾本ものホースや電気コードを接続されて振動音とともに蠢くエンジンは,培養液の中で管理される人造の臓器のようにも見える。本来,自動車のエンジンは水中での使用を想定した設計ではないため,部品の劣化や漏電,浸水などのトラブルに見舞われた國府は,展示期間中,メンテナンスを施しながら稼働を試み続けた。発表の前年に起きた福島第一原発事故への批評的応答でもあるこの作品は,機能不全に陥ったテクノロジー批判を可視化したものだと言える。 (さらに…)

シンポジウム 「過去の現在の未来2 キュレーションとコンサベーション その原理と倫理」の報告

現代美術の保存・修復の意義や課題についてのシンポジウム「過去の現在の未来2」が,2017年11月23日に兵庫県立美術館にて開催された。当研究センター所長の石原友明は,開会あいさつで,第1弾にあたる2015年のシンポジウム「過去の現在の未来」と古橋悌二の《LOVERS―永遠の恋人たち》の修復事例に触れ,開催趣旨を述べた。また,本シンポジウムのモデルケースとなった國府理《水中エンジン》の再制作と,《LOVERS》の修復における共通点として,作者が他界した状況での試みであることを指摘した。その上で,制作者としての立場から,「作品は,作者の手を離れて初めて,開かれたかたちで勝手に観客と関係を結び始めるという幻想を個人的に抱いている。作者の不在が作品を完成させると言ってもいい。作品を安定した状態に保つことが保存の基本だが,本来の生き生きとした状態から遠ざけてしまう場合がある。作品を生きた状態で保存する,動的な保存の可能性があるのではないか。物質的な安定性とともに,作品が生きた記憶をどのように引き継ぐのかを考えることが,現代美術の保存修復において必要なのでは」と問題提起を行った。 (さらに…)

塩見允枝子氏の特別授業「水を演奏する」

2017年11月17日(金),大学会館ホールにて,芸術資源研究センター特別招聘研究員・塩見允枝子氏の特別授業「水を演奏する」が行われた。美術学部の共通授業・造形計画2B「水のポイエティク」(担当教員:井上明彦)を拡張し,美術・音楽両方の学生に参加可能として,音楽学部では柿沼敏江教授に呼びかけを行っていただいた。大学会館でのパフォーマンスによる美術・音楽合同の特別授業としては,2015年6月の「FLUXUSパフォーマンス・ワークショップ」に次ぐものとなる。授業2コマ目(10:40~12:10)という時間帯は,造形計画2Bの授業テーマとの関連性による。というのも,4月に塩見氏の『パフォーマンス作品集 フルクサスをめぐる50余年』のデザインのためにご自宅で相談していた際,今年度の授業は水とそれに関わる芸術表現をテーマにすることをふとお話したところ,強い関心を示され,水をテーマにしたパフォーマンス演奏会を授業として行うアイデアが生まれたのである。 (さらに…)

第18回アーカイブ研究会「5叉路」の報告

第18回アーカイブ研究会は,ベルリン在住のアーティスト,前田岳究氏を招いて行った。前田氏は2001年以後,アーティストデュオ”Jay Chung and Q Takeki Maeda”として,「美術のなかにある物語」についての作品を制作している。本研究会では,彼らが作成した,あるスクラップブックに関わる作品の制作プロセスについてお話しいただいた。  (さらに…)

京焼海外文献アーカイブ活動報告

2017年6月16日(金)

米国を代表する陶芸コースをお持ちのアルフレッド大学陶磁器美術館館長のウェイン・ヒグビー先生と, 同大准教授のメガン・ジョーンズ先生が京都市立芸術大学と芸術資料館を見学に来られました。
美術学部工芸科陶磁器専攻3回生の芸術資料館所蔵の歴史的な京焼に触れる授業にも参加。アメリカの陶芸家という我々とは異なる視線から,学生に対して京焼の名品の見方の指導など,貴重な体験を提供いただきました。

(芸術資源研究センター研究員 前﨑 信也)

京焼海外文献アーカイブ

第17回アーカイブ研究会「エイズ・ポスター・プロジェクトを振り返る」

「エイズ・ポスター・プロジェクト[APP]」は,京都市立芸術大学の卒業生や在学生,京都市内の大学生や有志が集まって,1993年春に京都で開始された。日本では1990年代になってもHIV陽性者やエイズ患者,また様々なマイノリティを排除しようとする状況があり,APPはそうした状況に対してポスター,フライヤー,スライドショーなどのビジュアル表現やクラブイベントなどによって,自分達の無知・偏見・無関心を見直し,メッセージを発信する活動を行った。APPの活動には世界各地のNGOなどによって制作されたHIV/エイズに関するポスターの収集もあり,今回は1980年代から2000年代にかけて世界で制作されたポスターの一部(佐藤知久所蔵)をカフェスペースに展示した。研究会では,かつてエイズ・ポスター・プロジェクトの活動に関わったブブ・ド・ラ・マドレーヌ氏,小山田徹氏,佐藤知久氏,伊藤存氏らが,それぞれ異なる立場からの関わり方や印象深いエピソードについて語った。 (さらに…)

第16回アーカイブ研究会「IT IS DIFFICULT」の報告

チリ出身でニューヨーク在住のアーティスト,建築家,映像作家であるアルフレッド・ジャー氏の講演を芸術資源研究センターで行った。本レクチャーは,東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻における講演を皮切りに,森美術館,京都精華大学,金沢21世紀美術館など,いくつかの場所を巡回したものであり,「IT IS DIFFICULT」と題された。 (さらに…)

レクチャーコンサート「五線譜に書けない音の世界〜声明からケージ,フルクサスまで〜」の報告

芸術資源研究センターの重点研究の一つである記譜プロジェクトは,「五線譜に書けない音の世界」と題したレクチャーコンサートを2月26日に開催した。このプロジェクトでは,昨年度に「バロック時代の音楽と舞踏~記譜を通して見る華麗なる時空間~」と題した第1回のレクチャーコンサートを行ない,一定の成果を得た。第2回にあたる今年度は,とくに実験的な作曲家による不確定性の音楽における「記譜とは何か」を考察することをテーマとする企画となった。 (さらに…)

京都市立芸術大学芸術資源研究センター企画展 「Sujin Memory Bank Project #01 デラシネ —— 根無しの記憶たち」の報告

撮影:髙橋 耕平

芸術資源研究センターは,京都市立芸術大学移転プレ事業として,京都市下京区の柳原銀行記念資料館を会場にして,2016年11月12日から2017年2月19日にかけて,展覧会「デラシネ――根無しの記憶たち」を開催した。当初,会期は1月22日までを予定していたが,最終的に資料館の好意により会期を延長することになった。 (さらに…)

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