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和菓子における意匠表現の特徴とその独自性 ~和菓子の最大の魅力とは何か~

―(論文要旨)―

 この論文のテーマは「和菓子の意匠」であるが、私がこの テーマを選んだ理由は、その見た目の美しさに魅せられたこ とにある。和菓子とは西洋菓子と区別するために生まれた言 葉であるが、和菓子にはあって西洋菓子にはない、和菓子だ けに見られる特徴とは、季節の風物を主なモチーフとして扱 うことによって、日本の四季を視覚化している点にある。日 本の料理はよく「目で食べる料理」「五感で味わうもの」とい われるが、私が和菓子に魅かれる理由もそこにあるのだろう。

 そこで本論では、見た目に美しい和菓子の、その美しさの 源とは何であるのか、その美を決定づけるものとは何である のかという問いかけから始まり、他の日本文化にはない和菓 子特有の意匠表現の魅力について論じることを目的としてい る。

 また、本論では、和菓子の中でも主に上生菓子に限定して 論じている。なぜならば、上生菓子は季節ごとにそのモチー フが変化し、その意匠表現は実に多彩で面白いものばかりだ からである。

 序盤では和菓子の歴史を概観し、その後、現代の和菓子を その意匠表現の特徴に基づいて比較・分類している。そして、 そこから見えてきた表現の特徴として「表現の簡略化」と「色 による変化」の 2 つに大きく分け、その2つを切り口として その後の展開を二部に構成した。「表現の簡略化」の問題につ いては、和菓子特有といえる表現を明らかにするために、日 本の伝統工芸品の意匠表現との比較を行った。これは、草花 を主なモチーフとしているという点で和菓子と共通してお り、同じモチーフで比較することで両者の違いを明らかにし 易いという考えからである。さらに、その中でもモチーフの 簡略化という視点から「琳派」のデザインを主な比較対象として取り上げて論を進めている。なぜならば、現代の和菓子 の意匠には、江戸時代に大流行した光琳模様から着想を得て 作られたものがしばしば見受けられ、和菓子の意匠が発達し た時期と光琳模様が流行した時期がほとんど変わらないこと からも、両者の間に何らかの関係性が見出せるのではないか と考えたからである。そしてその比較は江戸時代の光琳模様 に始まり、近代の琳派と呼ばれる図案家たちの図案集にまで 及んでいる。

 そして、最終章では「色による変化」の問題を取り上げいる。 ここでは平安時代の装束の構成法である「かさねの色」に着 目し、和菓子の色の組み合わせとの関連性を論じている。 この2つを切り口として、和菓子の見た目の美しさを決定 づけるものは何なのかを追求し、本論にまとめた。

2010年度 同窓会賞 総合芸術学科 総合芸術学専攻 4回生 朴 美華 PAKU Mifa

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