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アートの「媒介者」になるために-SHAKE ART!での実践を通して-

―(論文要旨)―

 

​ 私は、2009年5月から関西の美大生による『SHAKEART!』という団体をつくり、フリーマガジンの創刊や、イベントの運営などを通して、情報と人を、場所と作品を、企業と学生を媒介出来るような「媒介者」になろうと行動してきた。

 

 序章では、経営学部から芸術大学に進路を変更した自分自身の経緯を含め、芸術大学の現状、その状況から反するようにして生まれた『SHAKEART!』について記述している。「芸大」という環境の中で、ベンチャービジネスを手本にしたSHAKEART!はとても浮いた存在であり、だからこそ様々な企業や学生に関心を持ってもらえた。


 第一章では、フリーマガジンSHAKE ART!の創刊理由、初期コンセプトなどを中心に、フリーマガジンの創り方や、その存在意義を述べている。  初めてフリーマガジンを発行するにあたって、最初に重要となるのはビジュアルデザインのクオリティであり、そこが一定ラインに達していないと壇上に上がれない。  そしてSHAKEART!のコンセプトは、「同世代の活躍を等身大で伝えること」となった。著名な美術作家のインタビューではなく、周囲の美大生を取り上げることで、我々や読者にとって最も身近で刺激になるコンテンツを思案し、既存媒体との差別化を図った。  またSHAKE ART!の財源のほとんどを媒体内の広告、とりわけ記事広告で賄っている。しかしネットメディアが勢いを持つ現在、印刷費用、配布費用のかかるフリーマガジンは黒字にすることが非常に難しく、学生だからこそ取り組める特殊なフィールドであると考えられる。


 それでも紙媒体というプロダクトが完成することの達成感は何物にも変えられず、紙媒体だからこそ生まれた繋がりも数えきれない。インターネットと紙媒体のどちらが優れている…という比較は重要ではなく、これからは多様化したアウトプットのツールを、いかに必要に応じてに使い分けられるかが鍵になってくるだろう。


 第二章では、可能性の広がるソーシャルメディアの利用法などを中心に記述している。 TVや新聞などのマスメディアー極集中の時代から、SNSを使用した個人の発信力が生まれ、情報の流れに変化があった。TWitterで影響力を持つのはマスメディアよりも個人アカウントである。しかしそんな中でも誰しもが情報発信者になれるわけではない。それぞれの分野に精通した「媒介者」の存在が浮かび上がり、情報をとりまとめていく時代になるだろう。


 しかし、現在の日本企業の多くは社員がインターネット上で企業名を出す事すら禁じており、発信力を持った媒介者を生み出す土壌は整ってはいない。ただインターネット上での世代の変化は急速であり、その常識も10年後には変化していくことだろう。  また、美術作家のTWitter活用についても可能性を感じている。TWitterを通して作家の日常が伝えられることで、アート作品に対して音楽ライブのような臨場感を感じることが出来るようになった。  そのようにソーシャルメディアは大きな可能性を秘めているが、そのソーシャルグラフが個人の主観によって作成されたものであることを忘れてはいけない。視野を狭くしてしまうのも、ソーシャルメディアの特徴である。


 私はアートという軸を持ちながら、ソーシャルメディア等を上手に使用することで「媒介者」としてアートの魅力をより広く伝えるような役割を果たしたい。そのためにまずはインターネットビジネスについての経験を深め、新しい切り口でアートの発信を塞ぎ止めている壁を開いていきたいと思っている。

2011年度 奨励賞 総合芸術学科 総合芸術学専攻 塩谷 舞 SHIOTANI Mai

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