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第28回アーカイブ研究会「ロマの進行形アーカイブとしてのちぐはぐな住居」

 京都市立芸術大学芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。

 シリーズ第4回は,文化人類学者の岩谷彩子氏をお招きします。

概要

 ポスト共産主義期のルーマニアに林立し始めた奇妙な御殿。いつしか人々はそれを「ロマ御殿」と呼ぶようになった。アジア建築にも似た豪奢なその建物に住まうのは,ルーマニアで長らく差別と迫害を受けてきた少数民族ロマであり,その中でも最も移動性が高く,戦前から金属加工にたずさわってきたカルダラリ・ロマである。第二次世界大戦時,彼らの多くはトランスニストリアへの強制連行と強制労働で命を失った。戦後,トランスニストリアから引き揚げマイナスから出発した彼らだったが,金属市場の高騰を受け急速に蓄財をなしとげた。彼らの御殿には異なる建築様式が折衷され富を誇るが,建築途中で放置され剥き出しになった階段やベランダも存在し,敷地の一角にはスクラップが散乱する。家族の遺品が普段使われない部屋にひっそりと納められる一方で,未来の客人や子どもたちのために未使用の部屋もある。本報告では,語られない過去と饒舌なまでの未来の期待を含み,異なる空間的要素が組み合わさる一見ちぐはぐなロマの住居を,彼らの現在進行形のアーカイブとしてとらえてみたい。(岩谷彩子)

〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉について

 芸術資源研究センターが行う研究会「アーカイブ研究会」では,今年度〈シリーズ:トラウマとアーカイブ〉と題して,連続的な講演と議論の場をもちます。
 公的な歴史や大きな物語からこぼれおち,それゆえ忘れ去られていく出来事とその記憶については,その記憶を聞きとり,引きうけ,わがこととして受けつぐ試みが,近年多くの場面で行われ,論じられています。
 今回考えてみたいのは,忘れ去られつつあり,かつ忘れてはならないと思われるにも関わらず,差別や暴力の経験,負の記憶に結びついているために,あるいは今それについて語ることが新たな暴力や差別を引き起こしかねないために,思い出すことや語ること自体が現在でも困難であるような出来事とその記憶―トラウマ的な記憶―についてです。
 たとえば,差別の経験や,国と国のあいまにある中間的な場所の記憶などについては,それについて語る・想起する・言及するこ と自体が,当事者にとってはもちろん,アーティストや研究者にとってもむずかしいという現状があります。しかしながらだからこそ,そうしたことがらについて語り,聞き,話すための場所が必要だとも言えます。
 では実際に,こうした経験と記憶については,どのような試みやアプローチが可能でしょうか。本シリーズでは,記憶をアーカイ ブする装置としての芸術やフィクションの可能性に注目してみます。集団的というよりも個的な記憶,言語的・歴史的史料というよりも,フィクションや視覚的資料,そしてさまざまな「モノ」などに焦点をあてるこうした実践が,いまどのように可能なのか。異なるフィールドを対象に,忘れられるべきではない経験と記憶についての研究や表現活動を実践してこられた方たちをお迎えし,語ること,想起すること,聞きとり・引きうけ・受けつぐことの可能性とその具体案について,考えてみたいと思います。

フライヤー

  第28回アーカイブ研究会チラシ(PDF)

 

講師プロフィール

岩谷 彩子

 文化人類学。京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。インドの商業移動民および世界でロマ,「ジプシー」と呼ばれてきた人々の文化人類学的研究にたずさわる。夢や建築物,音楽や踊りなど,彼らのコミュニティの境界を形成するさまざまな装置を「記憶の媒体」としてとらえ,その特徴について考察している。著書に『夢とミメーシスの人類学―インドを生きぬく商業移動民ヴァギリ』(明石書店),『映像にやどる宗教、宗教をうつす映像』(せりか書房),分担執筆に「『移動民族』としてのロマと新人種主義―ヨーロッパ域内の人の移動をめぐるポリティクス」(斉藤綾子・竹沢泰子編『人種神話を解体する 第1巻Invisibility―「見えない人種」の表象』,東京大学出版会)など。

 

タイトル 第28回アーカイブ研究会「ロマの進行形アーカイブとしてのちぐはぐな住居」
日時 2020年2月18日(火曜日)14時30分から16時30分まで
会場 京都市立芸術大学 芸術資源研究センター
事前申込 不要
参加料 なし
問い合わせ先 芸術資源研究センター
  • TEL:075-334-2217
  • FAX:075-334-2217

 

参照ページ

芸術資源研究センター

 

イベント会場

日本、京都府京都市西京区大枝沓掛町13−6 京都市立芸術大学