建畠晢学長をはじめ京都芸大美術学部の教授陣,堀口豊太教授,小山格平教授,塚田章教授,山中晴夫教授が,洛西で代々続く竹材店を営む竹芸家の大塚祐司氏とともに「竹の茶室」を制作し,「REVALUE NIPPON PROJECT CHARITY GALA 2013 with GUCCI」(2月9日(土曜日)開催)に出品しました。
(C)TAKE ACTION FOUNDATION
「REVALUE NIPPON PROJECT」とは,中田英寿氏が代表を努める一般財団法人TAKE ACTION FOUNDATIONが,日本の伝統・文化をより多くの人に知ってもらう「きっかけ」を作り,新たな価値を見出すことにより伝統文化の継承・発展を促すことを目的としたプロジェクトです。その趣旨に賛同した製作者等が,工芸ジャンルから毎年選ばれたテーマをもとに作品を制作されています。(TAKE ACTION FOUNDATIONのホームページhttp://www.takeactionfoundation.net/rn/2012.html)
「洛竹庵」と名付けられた竹の茶室は,2012年のプロジェクトテーマである「竹」を使用して,京都の銘竹と職人の力を結集して制作された,究極の“モバイル”茶室です。2畳という極めて小さい空間の茶室を組み立てて設置できるのが最大の特徴で,茶室を設けることが容易ではない現代においては,画期的なアイデアです。さらに,組立式でありながら,門柱の役割を果たす竹柱に京銘竹のごま竹を使用したり,花籠が設けられるなど本格的に設計されています。
制作にあたっては,職人集団を悉皆屋(しっかいや)が束ねる,京都のモノづくりならではのスタイルが採用されました。竹芸家の大塚氏をはじめ,京指物師の中野智夫氏(中野製作所),木材加工の公庄直樹(本学美術学部非常勤講師),京経師の大入達男氏(株式会社大入), 畳制作の武内秀介氏(西畳工業株式会社)等がそれぞれの工程を担当し,「洛竹庵」は京都の一流の技術を集結して制作されました。
◆製作者のコメント◆
<建畠学長>
茶室の原型は、京都妙喜庵の国宝「待庵」と言われています。唯一現存する千利休作のこの茶室は、広さ2畳。今回、私達が作ったのも同じ2畳の“究極の茶室”です。ミニマルでシンプルな空間ですが、茶道の精神に繋がる空間に仕上がったと思っています。この茶室は、現代的な都市生活にマッチするように可動・組立式にしました。究極の茶室を作り上げるために、竹を提供していただいた大塚竹材店をはじめ、建具師、指物師など多くの京都のプロフェッショナルの力が結集しています。それを束ねたのが京都芸大の4人の教授たち。デザインや建築、工芸など、それぞれの専門分野から竹を見つめ、素晴らしい茶室を作り上げてくれました。伝統的に京都の工芸は分業制で、多くの職人が力をあわせてひとつのものを作り上げます。そういう意味でもとても京都らしい作品になっています。
<塚田教授>
一見シンプルなこの茶室には、基礎から仕上げまで京都の最高の職人技が詰まっています。スペシャリストが集まり、作品の完成度を高める。大塚竹材店の見事な竹も含め、京都だからこそ作ることができた茶室だと思います。
<小山教授>
竹という自然の素材でひとつの作品を作り上げていくのは、計算のできない作業です。京都の竹と職人技が「一期一会」で作り上げた世界にひとつしかない茶室。そこに入った者しか感じることのできない特別な空気があるはずです。
<山中教授>
竹が最も美しいのは、自然の中にあるとき。そこでこの茶室では、なるべく加工せず、竹の素材感を活かすようにしています。華美ではありませんが、竹の本来の野趣を感じられる、京都らしい“粋”な茶室に仕上がりました。
<堀口教授>
茶室における主役は、そこに入る人間であり、そこで交わされる会話です。この茶室のデザインを考える際、いつもそのことを念頭に置いていました。繰り返し使い、たくさんの人と語りあう。素敵な時間を重ねてほしいと思います。
<大塚氏>
京都の竹の特長は、「火晒し」という加工法にあります。表面を火で炙って油抜きをするのですが、これをやることで色艶が安定し、長持ちするようになります。手間暇はかかりますが、この火晒しによって、竹の美しさが決まる大切な作業です。今回の茶室用には、材料の時点で選別し、さらに晒してから、もう一度状態のいいものをよりすぐって提供しました。竹で茶室を作るという話を聞いて、最初はとても驚きました。柱、簾などの用途にあわせて、いろいろな竹のオーダーに応じて、最高の竹を用意したつもりです。なかには、「ごま竹」という特殊な菌を繁殖させることによって、表面が斑模様になった珍しい竹もあります。一口に竹といっても、ひとつずつ色も形も違い、それぞれに表情があります。この茶室でたくさんの竹に囲まれて、そんな竹の美しさ、魅力を感じてもらえればと思います。
当日,会場の横浜ロイヤルパークホテルには,5つのチームが「竹」の作品が展示され,ガラ・パーティーに参加された方々は,現代に生きる工芸の技と斬新なアイデアにあふれる作品を,じっくりと眺めておられました。
「洛竹庵」を含む5つの作品は,ガラ・パーティーのオークションで落札された参加者の手元へと届けられます。
今後とも,学外の様々な機関との連携を進め,本学がこれまで培った教育研究資源を社会や市民の皆様に還元してまいります。
(C)Junichi Takahashi/ TAKE ACTION FOUNDATION