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交換留学に関する講演会(講師:RCA交換留学1期生 ヤノベケンジさん)

京都市立芸術大学卒業生で,ロイヤル・カレッジ・オブ・アートとの交換留学1期生である,現代美術作家のヤノベケンジさんを講師にお迎えして講演会を開催しました。

講演会では,ヤノベさんが学生時代に感じていた葛藤や交換留学をきっかけにご自身のオリジナリティを発見されたこと,その後,それを作品化できたことによりアーティストとして生きていく自信をもらったことなどについてお話いただきました。

1 京都芸大入学前からRCA留学まで

こんばんわ。ものすごく久しぶりに京都芸大に来ました。あんまり変わってないですね

僕は大学院までいったのですが,僕が学部を卒業したのは1989年で大学院を修了したのが1991年です。ロンドンにあるロイヤル・カレッジ・オブ・アート(以下「RCA」*)との交換留学が始まったのがちょうど僕が大学院に入学した直後でした。すごく幸運なことに,その第1回目の交換留学生として行くことができました。

実は,僕がアーティストになったのは,RCAへの留学が大きなきっかけになりました。僕が行ったのが1989年なので,かれこれ22年前で,情報としては古いと思います。だから,当時どういう状況であったかを詳しくお話するよりも、僕が留学によってどのように変わったかという経験を話したいと思います。

僕は,京都芸大では,彫刻科を専攻していました。大学院も彫刻科でした。大学に入る前は,アーティストになるなんてこれっぽっちも思っていなくて,もともとは,告白しますけど,ただのコスプレ少年だったんですね。子供の頃は手作り感満載で,仮面ライダーやバルタン星人のコスプレを作っていました。当時,高校生でここまで精巧に作る人は少なかったんですけど,最近はコスプレブームで簡単に作ってしまう人もいると思います。

では,大学に入って何をしていたかと言うと,まだコスプレをやってました。SF漫画,アニメマニアで,映画のセットや小道具などを作る仕事につければいいなという思いで,作ることを学ぶために京都芸大に入りました。彫刻専攻を選択したのも,そういう技術を学ぶことができて,クオリティが上がるんじゃないか,というぐらいの気持ちでした。

学生当時の作品の写真をお見せします。この写真は、三回生ぐらいかな。鉄とかキネティックな動くパーツを使った、映画の1シーンに出てきそうな作品なんですけど、映画の世界をそのままコピーして作るのではなく、自分のオリジナリティを求めたいと思い作り始めていた時期でした。在学中に、「オリジナリティとは何か」とか「美的感覚や美意識はどこから来るものか」とかを考え始めだした頃があったんですよね。その頃、美術の歴史や文脈を教わっていたんですけど、周りはどういった作品を作られていたかと言うとモノ派の影響が色濃い素材を組み合わせながら彫刻的な発想で作品を作っていくような先生や先輩方が多かったです。でもやっぱり僕は違うんだなぁ。昔見た、アニメや漫画や怪獣映画を見たときのドキドキ感が忘れられないと、ものすごく葛藤していたんですね。そういう形で学生時代を過ごしながらも、作品はたくさん作っていました。

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート〔Royal College of Art〕(英国王立芸術大学院大学 RCA)・・・RCAは,1837年に設立された,芸術・デザイン及びコミュニケーション研究専門の,世界で最も権威のある大学院大学です。

京都市立芸術大学との交換留学・・・1989年にスタートし,毎年2名の留学生を交換してきましたが,1996年から3名に増員しました。2002年度からは,博士(後期)課程在学生も対象となりました。