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【特別研究】「手遊びカフェは深化する」~人は継続的に手を動かさずにはいられない~ 被災地における京芸の取組

2012.11.12

 宮城県女川町において,京都市立芸術大学美術学部の日下部雅生准教授を代表として,長谷川直人教授,小山田徹准教授,安井友幸准教授及び学生25名が,お茶を飲みながら工芸的な手遊び(てすさび)をする場を提供する『手遊びカフェ』を開催しました。手遊びはあくまでもその場に参加し,悩みを相談しあったり,情報を交換し合ったり,教えたり教えられたりしてストレスを発散してもらう材料です。

 これは,昨年度から開始した被災地支援の取組であり,また,教員と学生がこの取組を通じて,新たな工芸の在り様を模索し,芸術が支える人間の本質を確認することを目指した研究(※)でもあります。

(「手遊びカフェ」の昨年度の様子は,「2011/07/25付けお知らせ」「2012/03/16付けお知らせ」をご覧ください。)

 今年度は,昨年度の経験を踏まえて,「手遊びカフェ」の企画・運営を学生とともに考え,「木包み(こづつみ【お守り】)づくり」,「紙紐で遊ぼう」「風鈴づくり」「紙遊び」の4つのメニューを行いました。

木包み(こづつみ【お守り】)づくり

 このコーナーは染織専攻の学生が発案し,布やリボンを使って,木片をデコレーションし,マスコット的なお守りを作成します。参加者は,大切な人への思いを込めて動物の形やオリジナルの飾りを縫ったり留めたりして,好きな形のお守りを作っておられました。

紙紐で遊ぼう

 漆工専攻の学生が主導して,参加者には紙の紐を木工ボンドで固めて,小物入れやブローチなどを作っていただきました。

風鈴づくり

 陶磁器専攻の学生が事前に素焼きで風鈴の材料を準備し,参加者には,持参してもらった陶器の破片や貝殻などとこの素焼きの材料を組み合わせて風鈴を作っていただきました。このメニューは手遊びカフェのメニューの中でも特に人気があり,多くの方にご参加いただきました。

紙遊び

 今回の取組で一番ユニークなメニューで,「色紙や新聞紙を使った遊びを教えてください」という看板を掲げて,「紙遊び」を募集しました。始まる前は,うまくいくか心配でしたが,始まってみるといろんな遊びを参加者からご提案いただき,学生や教員も楽しませていただきました。年配の方が新聞紙で作った兜は,子供たちには珍しいようで,喜んでかぶっている姿が見られました。一番,世代を超えた交流が見られたメニューでした。

 今回,宮城県女川町では,手遊びカフェの取組と合わせて、地域の取組である「迎え火プロジェクト」をお手伝いさせていただきました。

迎え火プロジェクト

 宮城県女川町の人々でつくる「復興連絡協議会」と,一般社団法人「対話工房」(小山田准教授が理事として参画)が共同で,それぞれの家があった場所で火を焚いて,震災で亡くなられた方をお迎えする『迎え火プロジェクト』を実施されました。

安全に迎え火を実施していただくために,京芸の教員や学生が,現場に落ちているガラス片などの撤去や材木を細かくする作業などをお手伝いさせていただきました。

 当日の夜,かつて町があった場所で,学生や教員も地域の方々と一緒に火起こしの缶に揺らめく炎を眺めていました。

 たき火を囲むと,落ち着いた雰囲気の中で,自然といろんな話が口をついて出てきます。学生と教員は,地域の方々から東日本大震災後の様々なお話を聞かせていただきました。

 東日本大震災から1年半が経過し,ハード面での復興はなされてきました。しかし,ご参加いただいた方の中には,「震災で家族を失い,これから何を糧に生きれば良いかわからない。」といったお話をされる方もおられ,教員も学生も心の復興にはまだまだ時間がかかるということを痛感しました。

 今回でこの取組は2年目となりますが,学生も教員も本当に良い勉強をさせて頂きました。この取組を通じてできた女川町の方々とのご縁を大切にして地道に末永く取組を続けていきたいと考えています。

※本研究は,本学独自の「特別研究助成」制度で採択された研究です。

「特別研究助成」制度とは,教員の自発的な特別研究を積極的に推進し,研究教育水準の向上を図るため,京都市立芸術大学学長の定めるテーマに基づく研究内容を教員から募集し,学長を委員長とする委員会において提出された研究内容を審査し,採択された研究に対して,研究費を助成する制度です。