キネティック・アート

動く要素を用いた芸術作品を表す総称。古くは,ロシア構成主義のナウム・ガボによる彫刻からキネティック・アート作品と見なすことのできる作品が制作されはじめた。シュルレアリストたちも,見出されたオブジェを組み合わせたり,映像を利用したりして動的表現を行った。さらに戦前から戦後にかけて,マックス・ビルやモホイ=ナジ・ラースローやアレクサンダー・カルダー,ジャン・ティンゲリーらが自然の偶然性や機械部品を組み込んだ動的彫刻を意識的に制作していく。

デュッセルドルフでは1957年に,オット・ピーネとハインツ・マックによって「グループ・ゼロ」が結成され,純粋な視覚的経験の探求がなされた。パリではヴィクトル・ヴァザーリやフランシス・モルレらが,視覚的錯覚を応用した動的な絵画や彫刻,蛍光灯を用いた空間インスタレーションを発展させた。彼らは1961年から1968年まで「GRAV(視覚芸術研究グループ)」を結成した。1960年代半ばにはニューヨークでロバート・ラウシェンバーグら美術家,ダンサー,音楽家らと技術者たちが集まり共同の芸術制作が行われ,「E.A.T(芸術と技術の実験)」が1967年に結成され,テクノロジーを応用した美術の実践が一般的に認知されるようになった。それ以外にも南米や北欧など,キネティック・アートは世界中で探求されてきた。ブラジル出身のリジア・クラークは鑑賞者が自由に動かすことのできる彫刻《獣》(1960)を発表しており,彫刻のキネティックな要素は,インタラクティヴ・アートに通じる面もある。サンパウロで行われたクラークの回顧展ではヴァーチャル・ミュージアム(要Unity Playerプラグイン)も作成された。

ページトップへ戻る